六百三十六話
異世界はクロードがいなくなった時期から不穏な空気が流れていた。
ハイエルフ達も精霊達を通して異変を感じ取っており人間達に幾度となく警告を発していた。
大国であるゲルマン王国でも対応に追われている。
どれだけ駆除をしても魔物の数が減らないのだ。
魔物の発生は日が経つにつれ増えていく。
王都にあるダンジョンは牛機が制御している。
それでも神力が流れ込み魔物の数が増加している。
対策をしていてこれなのだ。
野良のダンジョンはもっと酷いことになっていた。
冒険者達は最初は稼ぎ時だと騒いでいたがそれが日常になると状況が変わってくる。
必需品であるポーションなどは高騰していき数を確保することが難しい。
そうなってくれば危険な行動はとりにくくなっていく。
冒険者組合も手を打ち支援をしているがダンジョンに挑む冒険者が減ってしまった地域もある。
討伐される魔物の数が減れば氾濫を起こすわけで・・・。
ポセイドスは魔物の氾濫を抑える為に各地に兵を配備した。
それに伴い王都や各街では治安が悪化することとなるが魔物の氾濫を放置するよりはマシだった。
領主不在のニーパス領ではファールハイトとミッシェルが奮闘して被害を最小限に抑え込んでいた。
クロードが無理してまで創設した各騎士団とワイバーン部隊は連日大活躍をしており他領を支援する余裕もあった。
錬金術工房もフル稼働しており不足しているポーションなども各地へと運ばれている。
その一方で各地へ荷を運ぶ馬車が襲われる事態が度々起きておりその対処に頭を悩まされることとなる。
国力のない国では滅亡の危機に瀕しているような国もあった。
同盟国に助けを求めるが各国とも余力がなく滅びを待つしかないように思われた。
しかし、どこからともなく凄腕の冒険者が現れた。
滅亡の危機から脱したものの王族は報酬で頭を悩ませることとなる。
救った対価に酒や女を要求してきたのだ。
国を救ってくれた英雄に応えるべく最初は喜んで提供した。
しかし、彼等は魔物を打ち払い続ける対価としてそれを望み続けた。
その結果、小国の国庫は空となってしまう。
そのことを素直に打ち明けたら国を去って行ってしまった。
こうして彼等は各国を渡り歩く。
彼等の正体はオーディンが飼っていた英雄の成れの果てエインヘリャル達であった。




