六百三十三話
休暇1日目。
詩織と翠に誘われてクロードは街に繰り出していた。
助けてくれたお礼をしたいとのことでお洒落な喫茶店に入る。
思ってみればこうやって休日らしいことをするのは随分久しぶりな気がする。
エリーゼは元気にやっているだろうか。
クロードは無難にコーヒーを頼み詩織と翠はパンケーキと紅茶を頼んでいた。
詩織と翠は普段の巫女服姿も似合っているが普通の服を着ていても美人だ。
あちらこちらから視線を集めている。
2人は幸せそうな顔でパンケーキを食べている。
それを眺めながらもクロードは危険を感じ取っていた。
チャラチャラした格好の若者がこちらに近づいてくる。
クロードは溜息をつきコーヒーを置いた。
「何か御用ですか」
「餓鬼にはようはねぇよ」
「お姉さんたち、僕らと遊ばない」
先ほどまでの幸せそうな顔から一転、怜悧な顔になる2人。
「結構です」
「そんなこと言わずにさぁ」
断ってもチャラついた男達は引き下がらず強引に迫ってくる。
クロードは水の入ったコップを男達にぶっかけた。
「ごめんごめん。手が滑った」
男はプルプルと震えている。
「この餓鬼ぃぃ」
ここで暴れては店に迷惑がかかるのでクロードは外へ飛び出す。
その後を男達が追ってくる。
クロードは男達がしっかりついてくるのを確認して身をひるがえした。
「さてと・・・。どうするかな」
喧嘩慣れはしてそうだが素人相手に本気を出すわけにもいかない。
そんなことを考えてぼんやりしていると男の1人が殴りかかってくる。
それを最低限の動きで躱し頭にデコピンを1発。
男はそれだけではるか遠くまで吹き飛んでいく。
「やりやがったなぁ」
次の男も殴りかかってくるが遅すぎて欠伸が出る。
またしても頭にデコピンを当てそれだけで男が吹き飛ぶ。
「なんなんだこの餓鬼・・・」
「もう終わりですか」
そこに詩織と翠が顔を出す。
「心配はしてなかったけどこれは酷いわね」
「そうね」
男達は脳震盪を起こしているのか起き上がってくる様子はない。
2人からしてみればクロードがこのような相手に遅れをとることはないのはわかりきっていた。
「まぁ、怪我もなさそうだし戻りましょうか」
クロード達は男達をそのままに店へと戻った。
すっかりぬるくなってしまったコーヒーを口にしつつのんびりと過ごす。
誰かが通報したのか警察官がやってきたが組織の名を出すとお咎めなしとなるのであった。




