六百十三話
「勝負か。いいね。素振りばかりでは飽きていたところだったんだ」
クロードは快く勝負を受け入れた。
春樹は不思議な歩法で距離感覚を狂わそうとしかけてくる。
しかし、まだまだ未完成のその歩法ではクロードは誤魔化されない。
クロードは歩法の癖を見抜き剣を一閃する。
春樹はなんとかそれを回避して距離をとる。
だが、クロードは舜雷を駆使してその距離を一瞬で詰め首筋に剣をぴたりとあてた。
「な、なっ・・・」
「これで終わりかい」
「そんなわけないだろう」
春樹は強がり何度となくクロードに挑んだがいいところなしで終わってしまった。
「くっそ。あんた化け物かよ。指導役の人達より強いじゃないか」
「色々な技術が見れてよかったよ。そうだな。アドバイスするならとりあえず1つを極めてみたらいいんじゃないかな」
クロードとしても遠巻きに見ていた技術を実際に相手したことで得るものが大きかった。
指導役の人に頼んで本格的に習ってみれば戦術の幅が大きく広がるだろう。
「絶対にリベンジしてやるからな」
それだけ言って春樹はどこかに行ってしまった。
クロードは早速、指導役の人の元に行き教えを乞うことにした。
指導役の人も快く引き受けてくれた。
コツを掴むまでは苦労したがコツを掴んでからは徹底的に反復練習を繰り返しあっという間に技術を吸収していく。
クロードは武術だけでなく術式も学び始めた。
前回は魔法が通用したが妖怪は基本的に神力を用いなければ討伐できない。
いつ、魔法が通用しない妖怪に出くわすとも限らない。
そういうわけで札作りを学び実際に使用して問題点を洗い出す。
札の保管自体はアイテムボックスがあるので問題ない。
問題点をあげるとしたら自分の血を用いるので大量生産することができないことだろうか。
ここぞという場面を見極めて使う必要がありそうだ。
地球では魔石は貴重な存在らしくアイテムボックスに大量にある魔石を提供したら喜ばれた。
共に技術を学んでいた見習いの子達ともよく話をするようになった。
躓いている部分を共有しクロードなりの解釈で説明する。
本来であれば指導役の人の役目であるが見習いの子達の急成長を感じ取り口を出すようなことはなかった。
実力が低ければ妖怪との戦闘で死ぬかもしれない。
クロードと共に学び強くなってくれることを願わない指導役はいないのだ。




