六十一話
十分な睡眠をとったクロードは朝食をすませたあとさっそく鍛冶屋に向かっていた。
鍛冶屋のある建物はモクモクと煙をたてている。
扉をくぐると店番をしていた店員が声をかけてくる。
「これはクロード様。本日はどのようなご用件でしょうか」
「発注したい物がありまして親方はいますか」
「すぐに呼んでまいります」
店員は鍛冶場のある方へすっ飛んでいく。
しばらく待っていると汗を拭きながら親方がやってくる。
「やぁ。親方忙しいようだね」
「おかげ様でフル稼働ですぜ。頼まれている品も急いで作らせていますがもうしばらくお時間をください」
「うん。親方達の仕事には感謝しているよ。今日は鉱物を大量に仕入れたから依頼の追加なんだけど大丈夫かな」
「品を見せていただけますか」
「これなんだけど」
アイテムボックスからミスリルとオリハルコンのインゴットを一つずつ取り出す。
「これはミスリルとオリハルコンじゃないですか」
「加工を頼めるかな」
「扱いは難しいですがやってみます。いや。やらせてください」
「親方ならそう言ってくれると思ったよ。素材はいつものところでいいかな」
「はい。それで構いません」
クロードは倉庫にいくと大量のミスリルとオリハルコン。鉄と銅を取り出す。
「こんなに大量に。クロード様は相変わらずの規格外ですな。作るのはいつも通り剣と槍でよろしいのですか」
「うん。それで頼むよ。銅については武器に向かないし親方の好きに使ってくれていいから」
「ご配慮に感謝します」
「それじゃぁ。任せたよ。僕はもういくね」
「またのお越しをお待ちしております」
クロードの去った鍛冶屋では親方が職人と従業員を集めていた。
「見ての通り貴重な素材が大量に入った。わかっていると思うが警備に万全を期して取り組んで欲しい。お前は念のために冒険者組合にいって護衛の冒険者を雇ってきてくれ」
プロミネンス領は治安はいいがこれだけの品があればどうなるかわからない。
指示された店員は急いで冒険者組合に向かう。
「それでは各自自分の作業に入ってくれ」
職人達は自分の持ち場に戻っていく。
親方もミスリルのインゴットを抱えて自分専用の窯と向かい合う。
ミスリルは過去にも扱ったことがあるから大丈夫だがオリハルコンは経験がない。
不安もあるが任された以上は最善を尽くす所存である。
クロードの持ち込む素材の処理に追われて気が付いていないが国内でも有数の鍛冶屋として成長していくこととなる。




