六百九話
まずは落ちている体力を取り戻すこと。
そういわけで特製の薬膳粥を食べている。
漬物やら梅干しやら味変も楽しめてとても美味しい。
食事を終えたら運動の時間だ。
立つのも難しく支えてもらいながらフラフラしながら立ち上がる。
これだけでも体が悲鳴をあげている。
少し訓練すれば戦えるようになると言われたがこれは先が思いやられる。
少し体を動かしては休むそれだけを繰り返す。
まるで自分の体であるのに自分の体ではないようだ。
そんな違和感を抱えつつも出来ることを精一杯こなすしかない。
ぁ。
ちなみにであるが転生前３０歳。
体が回収されて１０年以上眠っていたことを考えると４０歳を超えた肉体で体を鍛えても効率が悪い。
天照大神に許可を取り、アイテムボックスからハイエルフの涙で肉体を若返らせている。
肉体年齢は魂に合わせて１３歳だ。
適度に体を動かした後は座学だ。
自分でページをめくることも難しいため補助の人に手伝ってもらって神道の基礎を教えてもらう。
この世界では魔力を循環させていない為、それをどうにかして補ってやる必要がある。
では、どのような方法で補っているのか。
特別に作られた墨に魔石を粉々にしたものを加え、さらに自分の血を加えるそうだ。
魔石が魔力を。
加えられた血は魔に関わる者の嫌がる神力を含んでいる。
そうして作られた札は妖怪や悪魔と戦う上で必要不可欠な物なんだとか。
多くの者達が札に頼る中、ごく一部の人達が刀や弓で戦うそうだ。
そういった人々は神の血を引き継ぐエリートなんだとか。
ちなみに地球上でのクロードの両親についてだが元々は退魔の一族であるが力が衰え続け戦うことが出来なくなった傍流だ。
転生させる際に傍流の家系を選び先祖返りの形で誕生した。
しかし、穏やかな生活をさせたいと神としての両親が願ったことで秘匿された。
そんなわけで今まで退魔の一族はクロードの存在を全く知らなかった。
クロードは寝て、食べて、体を動かしこの世界の知識を吸収していく。
その姿を見て天照大神は感心するとともに恐怖を感じていた。
力を取り戻し、知識を吸収するペースがあまりにも早いからだ。
他の神々から今のうちに消すべきだとの意見もある。
だが、必要なことだからと意見を受け入れず、クロードが力を取り戻すのを見守っていた。
クロードのいるこの病院は一種の聖域だ。
情報は秘匿されているが人の口に戸は立てられぬ。
魔に属する者達に気取られる前に戦えるようにしなければならなかった。
