五十七話
休息を十分取って魔力を回復した二人は目的地を目指し進んでいた。
人が足を踏み入れていないこともあって大量のワーカーアントがひしめき合っており進むのも一苦労だ。
「予想以上に数が多いですね。ネツァルさんに来てもらってよかったですよ」
「そんなこと言ってこれぐらいの相手なら一人で何とかなったじゃろ」
「何とかなっても楽をできるならしたいじゃないですか」
「ほっほっ。正直じゃの。まぁ最近部屋にこもってばかりじゃったからいい運動にはなるがの」
お互いに軽口を叩きながらも手は止めない。
あまりの多さに途中で魔力がつきネツァルさんは回復薬を飲んでいたが無事に次の安全地帯にたどり着くことができた。
「ネツァルさんは休憩しててください。僕は戻ってワーカーアントを殲滅してきますので」
「元気じゃの。儂はお言葉に甘えて休ませてもらうぞ」
せっかく来たので回収できるものは全て回収するつもりのクロードである。
ゲーム時代では金策として有名であったがそれはこの世界でも変わらない。
幸いネツァルさんのおかげで魔力は余裕があるため部屋に入って集まってきたところを氷と風系の複合上級魔法のブリザードストームでまとめて片付けていく。
インフェルノを使わないのは落ちたドロップ品が融解してダメになるのを防ぐためである。
魔力が尽きるまで部屋をまわり乱獲を続けて安全地帯まで戻ってきた。
ネツァルさんは眠っていたので起こさないように食事の準備をして食べ終わったらクロードも眠りについた。
クロードが起きるとネツァルさんはすでに起きており食事の準備をしているところだった。
「おお。起きたかクロードも食べるじゃろ」
ネツァルさんの用意していたのは野菜と肉をじっくり煮込んだスープだった。
「お任せしてしまってすみません」
「ここからが本番じゃからの。しっかり栄養をとらんとの」
食事を終えた後は軽く体をほぐして十分体を温めてから目的の階層に足を踏み入れる。
予想はしていたが前の階層以上にひしめき合うワーカーアントの群れに出迎えられる。
「早速のお出ましだの。恨みはないが儂の研究のために倒させてもらう」
ネツァルさんの魔法が炸裂して陣形が崩れたところに突っ込み剣で次々と斬り倒していく。
ネツァルさんはいつもよりテンションが高いがこれはいつものことで貴重な素材の採取となると張りきるのである。
クロードにもワーカーアントの群れが宝の山に見えているので人のことを言えないのだが。
二人は部屋にも躊躇なく足を踏み入れ蹂躙を続けるのだった。




