五十六話
宰相であるリッチマンは一枚の報告書に目を通していた。
筆不精なヒューズが報告書を寄こしたのも珍しいことだが内容にも驚かされる。
搬入にはもっと時間がかかると思っていたがこれは嬉しい誤算である。
リッチマンは軍事大臣とどの部隊から配備すべきか相談するために秘書官を呼び出すべくベルを鳴らすのだった。
クロードは武器の品質をあげられないか考えミスリルやオリハルコンを入手できないかと考えていた。
「う~ん。鉱石の入手といったらやっぱりあのダンジョンだよな」
ゲーム時代の知識で最適解を導き出す。
一人でも入手できるが相手にする数を考えネツァルさんに相談すると錬金術の素材として確保しておきたいとのことで今二人は鉱山都市グローリアにやってきていた。
「鉱物と言えば確かにここだが産出するのは鉄や銅といったありきたりな物ばかりじゃが本当にミスリルやオリハルコンなんて手に入るのかの」
「低層なら確かにそうなんですが深く潜れば貴重な鉱石が手に入るんですよ」
「どこからその情報を手に入れたか気になるところではあるが行くかの」
前回の反省をいかしダンジョンの管理部隊の所に顔を出し何日ぐらい潜るのかを事前に報告しておく。
二人で潜ると聞いて担当してくれた兵士が心配してくれたが問題ないと言って足早にダンジョンに足を踏み入れる。
ここに出てくる魔物はワーカーアントという名の蟻である。
鉱物を主食として体内で鉱石を生成しており倒すと食べた鉱物を落とすのだ。
低層では大軍のワーカーアントを相手にする大人数の冒険者パーティーを見かけたが邪魔にならないように抜けていく。
「ここまでは他の冒険者がいて楽でしたけど本番はここからですね」
低層でも十分な稼ぎを出せることがあってここから先は潜る冒険者がぐっと減るのだ。
クロードが前衛を務め後衛がネツァルさんである。
二人は息のあった連携で進路の邪魔をするワーカーアントを次々狩っていく。
「わらわらと湧いてくるのう。爺には中々ハードじゃが素材のためじゃ」
軽口を叩きながらもネツァルさんは容赦なく魔法を叩きこんでいく。
クロードとネツァルさんは安全地帯にたどり着き休憩をしていた。
「ここまで確保したのは鉄と銅とかありきたりな鉱物ばかりじゃの」
「ここから先は金と銀を落とすワーカーアントが出てきてもう1層先に行ったところに目的のワーカーアントがいるはずです」
「金と銀とな。お金には困っておらんし面倒じゃのう」
「あはは。ネツァルさんらしいですね」




