五十話
「確かに優秀な騎士団を率いていたのは事実ですが陛下の決定に異を唱えられるのですか」
「優秀な騎士団があれば私にも出来たと言っているのだ」
騒ぎを聞きつけた父様とファールハイト兄様がやってくる。
「ロッテム子爵。うちのクロードに何かごようでも」
父様は笑顔ではあるが目が全然笑っていなかった。
「優秀な騎士団を使って息子達を活躍させて王家の覚えをめでたくする。さすがは侯爵家余裕があるのですね」
「それは私に喧嘩を売っているのかな」
ロッテム子爵はしまったという顔をしているが発言は取り消せない。
「父様。ここは僕に任せてもらえませんか。ロッテム子爵。貴方に決闘を申し込みます」
「決闘の意味が分かっているのか。小僧と言えど手加減などせぬぞ」
周囲の貴族にどよめきが広がる。
他にも納得していなかった貴族はこれで留飲が下げられると喜ぶ。
冷静な貴族は陛下が無理してまで陞爵した理由の一端が見えそうだと考えていた。
この話はすぐに王宮中に広まることになる。
プロミネンス侯爵家にロッテム子爵が喧嘩を売り8歳であるクロード男爵がこれを買ったと。
王宮にある訓練場でロッテム子爵とクロードは木剣を持って向かい合っていた。
そこには多くの貴族が集まり国王であるポセイドスと宰相のリッチマンの姿もあった。
公平を期するため訓練場の管理官が審判を務めることとなった。
「それでは私が有効打と認めるか相手が降参を認めるまでとします。準備はよろしいか。はじめ」
クロードからは動かない。
ロッテム子爵は所詮子供だビビっているのだろうと上段から斬りかかる。
クロードは最低限の動きでそれを受け流す。
「大口を叩いた割にはその程度ですか」
挑発を受けロッテム子爵は連続で剣を振るうが全て避けられるか流される。
「なぜだ。なぜ当たらん」
ロッテム子爵は肩で息をしながらも攻撃を続ける。
「気は晴れましたかそろそろこちらからいきますよ」
余裕の崩れないクロードに苛立ち剣を大きく振りかぶる。
クロードは跳ね上がった剣に容赦なく自分の剣を当ててロッテム子爵の剣を弾き飛ばす。
クロードの使った技術は巻き上げである。
振りかぶった際に力が抜けた瞬間を見極めたのである。
クロードはそのままロッテム子爵の喉元に木剣をすっと当てる。
「そこまで。勝者はクロード男爵」
何が起こったのかわかっていない者が多くをしめたが武芸を修めている者はクロードの技術に舌を巻いた。
国王であるポセイドスと宰相のリッチマンはプロミネンス家の面々を応接室に呼ぶようにその場にいた使用人言いつけて一足先に戻っていった。




