四百八十一話
クロードは気配を感じてゆっくりと目覚めていく。
周囲を見まわせば武装した集団に取り囲まれていた。
いくら疲れていたとはいえ囲まれるまで気付かないとは痛恨の極みである。
相手を刺激しないようにゆっくりと体を起こす。
囲んでいる相手を確認すると耳が尖っている。
どうやらエルフの一団に囲まれているようだ。
どうしたものかと考えていると相手から呼びかけられる。
「ゆっくり木から降りてこい」
囲いを突破しようと思えば可能だろう。
だが、今現在は彼等の領域に踏み込んでいる状態だ。
今後のことを考えれば相手に従うしかないだろう。
クロードは毛布をアイテムボックスにしまいゆっくりと木の枝から降りてゆく。
「人族の子供か。どうやってこの場所までやってきた」
「迷いの森を抜けてですけど」
「嘘を言うな。迷いの森はお前のような子供が抜けられるような場所じゃないんだぞ」
「そう言われましても・・・」
「とにかく。お前のことは拘束させてもらうぞ」
エルフの一人がそう言うと周囲のエルフ達が近づいてきて腕を縛られる。
「暴れたりするなよ。こっちだ。ついてこい」
エルフ達に促されエルフの里の中に入っていく。
エルフの里は木の上に木材を組み合わせて作られており幻想的だ。
クロードが連れていかれたのはエルフの里の端のほうにある木で作られた籠だった。
クロードが籠の中に入ると籠の上に取り付けられた蔓が引き上げられ宙吊りにされる。
人間で言うところの牢屋なのだろう。
エルフの里は幸い穏やかな気候であり病気になることはないだろう。
メイアンさんからエルフ達は過去のことで引き籠り気質であり外界の人種を嫌悪しているとは聞いていたのでこの対応も頷けるところだ。
最悪の場合は脱獄しなければいけないが今はまだその段階ではないだろう。
まだ寝たりないクロードは相手の出方を待ちつつ惰眠を貪ることにした。
籠が上下する振動で目が覚める。
籠が地面に到達すると待っていたエルフはあきれ顔だ。
「食事だ。この状況で寝れるとは大物なのか愚かものなのか・・・」
食事と言って渡されたのは果物だった。
クロードが受け取ったのを確認して籠は再び上がっていく。
受け取った果物を食べながら思い出す。
世界樹の１層から１０層までは別名食糧庫と言われ食材の宝庫だったなと。
エルフ達はどうやら世界樹から食料を確保しているらしい。
これからどうなるかはエルフ達次第。
穏便に解決できるといいなと思いながら再び横になるのだった。
