四百十五話
クロードはエリーゼに定期試験の範囲を教えてもらいながら復習に励んでいた。
過去に学んだことなので記憶の引き出しから引っ張り出してくるのに少々苦労したが復習は順調に進んでいる。
エリーゼはクロードの試験範囲を教えながらも時折り鼻歌が混じりご機嫌なのがうかがい知れた。
「エリーゼ。何かいいことでもありましたか」
「しばらく、離れ離れだったからね。クロードと一緒に居れるのが嬉しいのよ」
「確かにここのところ立て込んでいて一緒にいることが出来ませんでしたからね」
エリーゼは率直に自分の気持ちを伝えたつもりだったがどこか頓珍漢な答えが返ってきて落ち込むがそれを顔に出すことなく自分の勉強に取り組んでいく。
そんなエリーゼの様子を盗み見ていたアイナは心の中でエリーゼを応援していた。
父親である国王ポセイドスはエリーゼの恋を応援しているし過去にエリーゼから聞き出したお宅訪問でもクロードの両親は攻略済みである。
後、残すは肝心のクロードの心をエリーゼに向かせるだけである。
しかし、肝心のクロードは朴念仁であり一向にエリーゼの気持ちに気づく気配はない。
一緒に過ごすことも多くそのうち気付くだろうと思っていたがこれは何か手を打つ必要があるかもしれないと思い始めていた。
アイナはタイミングを見計らってミーシェに飲み物を届けさせる。
その際、わざと転びエリーゼに飲み物をかけるように指示してある。
主であるエリーゼに狼藉を働くのは気が引けるが恋のためには致し方なしと自分自身に言い聞かせる。
ミーシェは演技とは思えないほど見事に転びトレーに乗せられた紅茶はエリーゼの全身にかかってしまう。
エリーゼは咄嗟にミーシェを庇い受け止めていた。
「エリーゼ様。申し訳ございません」
「私は大丈夫。怪我はなかったかしら」
「エリーゼ様が受け止めてくれたので大丈夫です」
自分がやらせたこととは言え二人に怪我がなくてアイナはほっとした。
肝心なのはここからである。
肉体的な成長はまだであるが美少女が濡れている状態。
健全な男の子なら喜ぶ展開である。
「二人とも濡れてしまったね。今乾かすね」
クロードが生活魔法を発動して二人の服についたシミを分離する。
そして温かい風を発生させて服は新品同様の状態を取り戻していた。
アイナは作戦の失敗を痛感していた。
結果としてミーシェと主に嫌な思いをさせただけで終わったこの状態に悶絶する。
何としてもクロードの気持ちをエリーゼに向かせてみせると誓いつつも次の作戦を考えはじめたのである。




