三十九話
3年の年月が経ちクロードは8歳になっていた。
ネツァルからはもう教えられることはないと言われ今では共に錬金術の研究をする仲になっていた。
ファールハイト兄様は父様の仕事を手伝いながらも時間を見つけては勉強を見てくれている。
アリシア姉様は学園を卒業すると同時にミッシア辺境伯家に嫁いでいった。
結婚式は王都の教会で盛大に執り行われ家族全員で祝福した。
クロードは現在生活魔道具をもっと効率よく使えないかと魔法陣の改良に取り組んでいた。
長年使われてきた魔法陣だけあって洗練されているが効力をあげたり燃費の改善をする余地がまだあるはずだと試行錯誤している。
扉がノックされてファールハイト兄様がやってくる。
「取り込んでいるところ悪いね。父様が呼んでいるから一緒に来てくれないか」
「わかりました」
改良中の魔道具をアイテムボックスにしまいファールハイト兄様と書斎に向かう。
ファールハイト兄様が書斎の扉をノックして入室するのに続いて部屋に入る。
「失礼します。お呼びとのことですが何かありましたか」
「二人ともよく来てくれたね。隣接するリムテック伯爵家にあるダンジョンがスタンピードを起こし援軍を要請する早馬がきた」
「王国が管理しているダンジョンですね。確かオークが生息していたはず」
「このまま放置すれば我が領にも被害が及ぶ可能性がある。ファールハイトには騎士団を引き連れて向かってもらいたいと思っている」
「クロードを呼んだ理由は」
「単体戦力として有力なのは間違いない。クロード次第ではあるがどうする」
「今は緊急事態です。僕にできることがあるなら行きます」
「行くのはわかった。だけど単独行動は許可しない。騎士を一隊つけるから無理はしないんだよ」
「兄様。ありがとうございます」
「二人とも無事に帰ってくるんだよ」
「それでは準備があるので失礼します」
父様の書斎を後にして自室に戻り装備を身につけていく。
完全武装で屋敷の外に出ると厩番が馬を二頭出して待っていた。
それぞれ騎乗し騎士団の駐屯地を目指す。
駐屯地内に入ると出撃準備を終えて整列していた。
バンネル団長がこちらに気が付き声をかけてくる。
「ファールハイト様。出陣の準備はできております」
「ご苦労。申し訳ないがカリオンの一隊をクロードに貸し出し別働部隊としてほしい」
「クロード様の武力は把握してますが指揮の腕は」
「暇を見つけては僕が教え込んでいるから問題ない」
「了解しました」
プロミネンス騎士団はリムテック領を救うべく出撃した。




