三百八十八話
シンラ帝国の各部隊は部隊長の指揮のもと動いていたがそこに司令部から緊急の連絡が入る。
突破してくる敵部隊を阻止しろというものだ。
近くの部隊が対応するがまるで紙屑を破るように敵部隊が突進してくる。
シンラ帝国の部隊は完全に混乱状態だった。
速度こそ重要と心得たクロード率いる竜騎士団は障害を排除して敵司令部を包囲していた。
クロードは投降を呼びかける。
「貴殿達は完全に包囲されている。無駄な抵抗はせず投降せよ」
「我が軍を突破してきたのがこんな子供だとはな。お前達こそ投降せよ。すぐに周辺の部隊が集まってくる。孤立したのはお前達の方だ」
敵の指揮官が言っていることは間違っていない。
いくら精強な竜騎士団と言えど全ての敵部隊を相手にするのは不可能だ。
敵司令部をいかに早く攻略できるかが鍵だったのである。
「あまり時間がないのは事実です。ですので手荒い手で行かせてもらいます」
クロードの指示に従い竜騎士団が敵司令部を守っている敵戦力を排除していく。
「くそ。どいつもこいつも役に立たん。時間稼ぎもできないのか」
「これで後は貴方方だけです。拘束せよ」
無事に敵司令部要員を捕縛したクロード達であるが抵抗を示す敵部隊がいないとは限らない。
王宮騎士団も追ってきているはずだがかなり距離が離れているはずなので敵中に孤立していると言っても過言ではなかった。
「全集警戒せよ。敵に投降を呼びかけつつ警戒せよ。ワイバーン部隊も上空で待機。敵に不審な動きがあればただちに知らせよ」
ここは敵が司令部を構えただけあって守るだけなら強固な陣地足り得た。
突撃をしかけてくる敵部隊もあったが司令部機能を刈り取られたことでほとんどの敵は混乱状態だった。
クロード達が元敵司令部で籠城をはじめた翌日、話がしたいと申し出があり話し合いの席につくこととなった。
「話し合いを受けてくれて感謝する。まずは確認したい。こちらの司令部要員はどうなった」
「捕虜として拘束させていただいています」
「亡くなっていないのなら結構。我々はこのまま撤退する用意がある」
「わかりました。撤退するというのなら我々は何もしません」
被害にあった国の中には納得できない国もあるだろう。
しかし、クロード達に課せられた命令はこの事態の解決である。
援軍として出兵している部隊を引き揚げさせることが出来ればそれでいいのだ。
賠償問題などの問題を解決するのは専門家に全て投げてしまえばいい。
クロードはワイバーン部隊に全軍停止命令を伝えさせ捕虜を引き連れ堂々と引き揚げていった。




