三十八話
王都から屋敷に帰ってきたクロードはネツァルに師事して錬金術を本格的に学んでいた。
他の科目も隙間時間を見つけては取り組んでおり忙しい日々を送っていた。
今はネツァルさんと共に書斎で父様と話し合っていた。
「ファイネル殿が素材を集めてくれるので錬金術は順調に教えられております」
「完成品を売ることでこちらの懐も温まっているので気にしないでくれ」
「問題は流通に乗ってくる素材だけでは不十分な領域に足を踏み入れつつあるということです。クロード殿を連れてダンジョンや秘境に素材回収に向かいたいと考えております」
「クロードの戦闘能力を考えれば可能か。わかった。了承しよう」
「父様。ご許可いただきありがとうございます」
書斎を出た後クロードとネツァルは街に食料を買い求めてやってきていた。
二人ともアイテムボックスを所持しているので食べたい物を次々と購入していく。
買い物を終えて屋敷に帰宅した二人はネツァルの転移魔法でダンジョンに飛んだ。
子連れということでネツァルは目立っていたがそんなことは関係ないとダンジョンの中に足を踏み入れる。
出てきた魔物はフローズンフロッグという蛙の魔物だ。
水属性で火に強いということでエアカッターを放つ。
エアカッターは狙い通りに当たり魔石とドロップ品を残して消えていく。
「やはりこの程度の魔物では余裕だのう。錬金術の素材になるからどんどん行こう」
この日を境に子連れのダンジョン荒しがいると噂になるのだが効率を求めた二人が止まることはない。
自力で錬金術の素材を集めに各地をまわった結果クロードの錬金術の腕はメキメキと上がっていった。
錬金術では使わない素材や練習で作られたアイテムを売るためにファイネルが苦心することになるがそれはまた別の話である。
クロードは料理長に頼み込んで携行食の改良にも着手していた。
前世ではまともに料理を作ったことはなかったが錬金術で培ったノウハウで分量をしっかり量りうっすら残る前世の調味料を再現することに成功していた。
最初は販売する予定はなかったのだが調理長がこれは売れるとファイネルに相談して侯爵家の出資で大量生産の為の工房と商会を設立し多くの利益をあげることになる。
ファイネルはクロード絡みで儲けた利益を自領の開発に投資して発展させさらなる利益をあげていた。
評判を聞きつけ多くの民が移住を希望しそれを受け入れるために多くの開拓村が作られることになる。




