三十四話
馬車は何事もなく王都に到着した。
兄様と姉様は学園の寮に戻りクロードは両親と共に宿に入り護衛の騎士を使節として王宮に向かわせ呼び出しを待つことになる。
クロードは姉様達が作ってくれた教材をアイテムボックスに入れており勉強をしていた。
取り組んでいるのは魔法陣についてである。
ゲーム時代には存在していなかったため特に力を入れている科目の一つだ。
魔法陣は魔法が扱えない人でも魔力を流すことで魔法の効果を発揮する魔道具などに刻まれており広く生活の役にたっているものや本来使えない魔法をあらかじめ刻んでおき触媒を用意して大規模魔法の発動を助けるものなど多岐にわたる。
今やっているのは姉様が書いた複雑な魔法陣を分解して一つ一つの効果を分析することだ。
「ここの魔法陣がここに作用して出力のブーストと補助をしていてここが・・・」
分解して終わりではなく意味を理解したことで自分でも描いてみる。
「ここをこうして。でもここはこれを使った方が簡単になるよな。で余裕のできたこの部分にはこれを追加して」
さりげなく魔法陣の改良をしているがこれは高等部で扱う内容である。
「出来たけどさすがに宿屋の部屋で効果を確認するわけにはいかないよな」
窓を見れば夕日が差し込んできていた。
部屋を出て父様と母様が泊っている部屋に向かう。
部屋の前には護衛の騎士が立っておりいるのを確認して中に入ると父様と母様は紅茶を飲んでくつろいでいた。
「クロードよく来たね。部屋にこもって何をしていたんだい」
「魔法陣について勉強してました」
母様が無言で紅茶をいれて席を勧めてくれたので座る。
「勉強熱心なことはいいことだな。謁見の件だが明日の朝王宮から迎えの馬車がくるからそれで王宮に向かうことになる」
「わかっていると思うけど夕食を食べたら早く寝るのよ。貴方が粗相をすれば父様の体面を傷つけることになるわ」
「はい。母様」
夕食の準備ができたとのことで護衛の騎士の人が呼びにきてネツァルさんと合流して食堂に向かう。
メニューは香辛料をこれでもかと使った濃い味付けの物が多く口には合わなかった。
「あまり食がすすんでいなかったようだけど口に合わなかったかしら」
「はい。こういう食事はあまり経験がなかったもので」
「こういう食事を取る機会もこれから増えると思うから慣れていくしかないね」
「体調不良でないならいいわ。宿の人に頼んで朝御飯は変えてもらいましょう」
明日はいよいよ謁見ということですぐにベッドに横になり眠りについたのだった。




