三十三話
クロード達は馬車に乗り込み王都を目指していた。
今回は人数が多いため馬車二台に分乗したのだが姉様達がクロードを可愛がりたいとの理由で姉様と母様と同じ馬車に乗っていた。
ネツァルは謁見に際して何か役に立てるかもしれないとのことで同行してくれている。
プロミネンス領から王都へは馬車で10日程の距離である。
護衛として騎士団から選抜された騎士も同行しているため大所帯での移動だ。
王都行きの際にはその地を収める領主にお世話になることもあるが今回は急遽決まったことであるので相手の負担を考えて高級宿に泊まることが決まっておりそれなりの出費になる。
貴族が移動すれば負担する者が変わるだけで必ずお金を街に落とすことになり経済が回るため推奨されている。
クロードは夕食が終わり部屋に戻ると紅茶を飲みながらファールハイト兄様がくれた戦術と戦略集を読み込んでいた。
「普通にやったら絶対ファールハイト兄様には勝てないよな。基本は大事だけどそれに囚われたらダメだ。戦術には対応策がある。対応されてもそれを食い破る為の策が必要だ」
思いついた手を紙に書いてまとめていく。
こうして独自の戦術を磨き戦略を磨いていくこととなる。
翌日再び馬車に乗り込み姉様達の間に収まりながら船を漕いでいた。
「あらあら。クロードってば眠そうね。また夜更かししたわね」
「お姉ちゃんが抱えているから眠っていてもいいわよ」
アリシア姉様がぎゅっと抱きかかえてくれその温もりが心地よくて眠ってしまう。
「寝ているクロードも可愛いわね」
「ふふ。寝ていると年相応に見えるわね」
「勉強もできて強いから将来はきっと女の子にモテるわね」
「お母様。当然クロードも学園に入学させるのよね」
「10歳になったらそうする予定だけど何かしら」
「今の段階で中等部や高等部でも通用すると思うのよ。優秀すぎて周囲から浮いてしまわないかしら」
「その可能性はあるけれど本人が頑張っているのに止めるわけにはいかないし何とかなるのじゃないかしら」
「確か学園には飛び級制度があったわね」
「お姉様。都市伝説だと思っていたけど実在するの」
「確か生徒手帳に書かれているはずよ。アイリス確認してみて」
言われてアイリスは生徒手帳を開き確認する。
「あったわ。優秀すぎて今の学部では不適当だと学園が判断した場合は試験を設け飛び級させることができるものとする」
「もしかしたらアイリスと同じ教室で授業を受けているかもしれないわね」
「そうなったら嬉しいけれど将来が心配になるわ」
学園に入って友達を作り人脈を築くのも貴族としては大事なのだ。
クロードにはそれができない可能性がありそれを心配する母と姉達だった。




