三百五話
親孝行をしようと決めたクロードは授業が終わってからプロミネンス侯爵領の屋敷に飛んでいた。
「ただいま」
使用人が出迎えてくれる。
「クロード様。お帰りなさいませ」
「母様は今どこにいるかな」
「奥様なら部屋にいるかと思います」
「ありがとう」
クロードは母様の部屋にいきノックしてから入室する。
「母様。お久しぶりです」
「あらあら。クロード。お帰りなさい」
「ただいまです」
「それで今日はどうしたのかしら」
「何か困っているようなことはないですか」
「そうね~。特に困っていることはないかしら。たまにこうして顔を見せてくれるだけで充分よ」
「そうですか。なるべく顔を出せるようにしますね」
「今日はゆっくりできるのでしょう。色々お話を聞かせてほしいわ」
「わかりました」
クロードは学園での日々や魔道具の生産をしていた話に軍務大臣の依頼で各地をまわっていた時の話
などをしていく。
「色々忙しく動き回っていたのね。でも元気ならそれでいいわ」
母様に一通り話をしたところ父様がドアをノックしてから入ってくる。
「クロード。元気だったか」
「はい」
「ずいぶんと暴れまわってるようだな」
「頼まれたので仕方なくですよ」
「それはそうと金融機関の口座は確認しているか」
「いえ。現金は持ち合わせがありますから全然してないです」
「実は金融機関の職員から泣きつかれた。クロードへの利子だけで利益が吹き飛ぶとな」
「そんな状況になっているとは思っていませんでした」
「色々手柄を立てているし事業も順調。金も貸し出しているからその返済分とその利子。どれだけ自分が稼いでいるのか考えていなかったのか」
「ちなみにどれぐらいの金額になっているんですか」
「これがその詳細だ」
父様は懐から一枚の紙を取り出して渡してくれる。
そこに記載されていた額は確かに世間一般的に考えればすごいのかもしれないがクロードの所持金からしたら微々たるものだった。
「このままにしたらまずいんですよね」
「流石に潰れるとは思わんが引き出してやったほうがいいだろうな」
「どれぐらい引き出せばいいんでしょうか」
「儂もついていってやるから金融機関に相談してみよう」
「母様。それではまた後程」
「いってらっしゃい」
クロードとファイネルは馬車に乗って金融機関を訪れた。
「これはファイネル様。本日はどのようなご用件でしょうか」
「今日はクロードを連れてきた。支店長を呼び出してくれ」
「かしこまりました」
こうして金融機関を救うための話し合いが行われることとなった。




