二百九十話
クロードをはじめとする初等部の生徒達は引率役の高等部の生徒達と共に馬車に乗り込み学園を出発した。
馬車は予定通り転移門を抜けプロミネンス侯爵領へとたどり着きゴブリンの出るダンジョンを目指して進んでいく。
「先輩方。今回はよろしくお願いします」
「こっちこそ。よろしく頼む」
「クロード君は基本的に見ているだけね。参加されたらこの子達の経験にならないから」
「ハバロフ君だっけ。はじめてのダンジョンで緊張しているみたいだけど出てくるのはゴブリンだけだから安心しなさい」
「緊張などしていません。ただコイツと組むのが気に入らないだけです」
「それは仕方ないんじゃないかしら。成績表を参考資料として受け取っているけれどバランスを考えたら自然とこうなるわよ」
成績トップのクロードと下位のハバロフ達の間には雲泥の差がある。
「クロード君は今回行くダンジョンには入ったことがあるのかしら」
「何度か立ち入っているので道案内なら任せてください」
「地図は受け取っているけれど実際に入ったことがあるなら安心ね」
「方針としてはどうするのですか。入り口付近で安全に狩るのか２層に繋がる安全地帯を目指すのか」
「実際に戦ってみて判断する予定だけどできれば２層の安全地帯を目指したいわね」
「それでしたら最短距離で安全地帯を目指しましょう」
方針を話し合っている先輩方とクロードをわきにどんどん不機嫌になっていくハバロフだった。
馬車は予定通りゴブリンの出るダンジョンに到着した。
点呼をとった後続々とダンジョンに入っていく。
クロード達の班は予定通り最短ルートで２層に繋がる安全地帯を目指していた。
他の班の多くは入り口付近で狩ることに決めたのか散発的にゴブリンと遭遇する。
「ハバロフ君。貴方は突っ込みすぎよ。周りの仲間を意識して戦いなさい」
集団で戦っているというのに個々で戦おうとするハバロフに槍で味方の動きを妨げてしまう槍使いなど連携して動くことに慣れていないこの状況に引率役の先輩達は頭を抱えていた。
クロードはあまりの惨状に指揮をとりはじめる。
「一度基礎に立ち返りましょう。槍はついて引くこの動作だけで十分です。剣を使ってる人は槍使いのフォローを心掛けてください。攻撃にでるのは確実に仕留められる時だけです」
クロードの指揮のもと何とか集団戦の形をとりはじめ何故クロードを他のクラスメイト達が頼りにするのか実感する取り巻き達だった。
クロードの指揮は的確でありわかりやすい。
その一方でどんどん劣等感を感じ一人で意固地になるハバロフだったのである。
