二百八十八話
クロードのもとに馬車がやってきていた。
コーヒー豆を求め南に出発した商隊の一部である。
プロミネンス侯爵領で焙煎され出来上がったコーヒー豆を運んできたのである。
クロードは出来栄えを確認して受け取ったコーヒー豆をアイテムボックスにしまっていく。
「ご苦労様でした。今後も南の国々との貿易を続けてください」
「わかりました。そのように伝えます」
クロードは馬車を見送りメニューに追加すべく経営している喫茶兼バーに向かった。
店内に入ると賑わっており嬉しい限りだ。
「クロード様。いらっしゃいませ」
ウェイトレスの娘に軽くてをあげてマスターのもとへと向かう。
「今日は以前にいっていたコーヒーが手に入ったのでメニューに追加してもらおうと思ってきました」
「どういった飲み物なんですか」
「まずは僕が淹れるので見ていてください」
アイテムボックスからコーヒー豆を取り出し適量をコーヒーミルに入れ挽いていく。
粉末になったものをドリップにフィルターをセットして載せ生活魔法で沸かしたお湯を注いでいく。
ゆっくりと抽出すれば店内にはコーヒーのいい匂いが充満する。
「この匂いはいいですね」
「香りを楽しむのも一興ですね」
クロードは出来上がったコーヒーをカップに注ぎマスターの前に出す。
「いただきます」
口に含んだマスターの反応をうかがう。
「苦味の中に甘みやコクがあって不思議な味わいですね」
「今度は牛乳と砂糖を入れて飲んでみてください」
「わかりました」
砂糖と牛乳を入れてマスターが再びコーヒーに口をつける。
「これは全くの別物ですな。口に合わないお客様にはこうやって提供すればいいのですね」
「それでは早速作ってみてください」
「わかりました」
マスターは丁寧に手順をふみ一杯のコーヒーを完成させる。
コーヒーをカップに注ぎクロードの前に差し出してくる。
クロードは無言でコーヒーを飲み評価する。
「これならお客さんに出せそうですね」
「簡単そうに見えてこれは奥が深いですね」
「数をこなせば色々見えてくるのではないでしょうか」
「精進いたします」
こうして無事にコーヒーをメニューに追加することができた。
ゲルマン王国では珍しい飲み物であるコーヒーは話題となり話題が人を呼び喫茶店兼バーには大勢の人が押し寄せることとなる。
噂を聞きつけた国王陛下であるポセイドスと宰相のリッチマンは視察という名目でこっそり来店しては長時間居座ったりするのだがそれはまた別の話である。
コーヒーは確実にゲルマン王国に広まりクロードの目論見は達成されるのだった。




