二百五十一話
「貴族の取引に横槍を入れてくるとは躾のなっていない餓鬼だな。学園にクレームを入れろ」
「わかりました」
実は品質に問題などなかったのである。
冒険者達の足元を見て不当な言いがかりをつけ困っているところを相場より安く買いたたく予定だったのだ。
その計画に横槍を入れてきたクロードとかいう餓鬼には思い知らせてやる必要があると考えていた。
クロードは教室にて授業を受けていたのだがお客様が見えているとのことで学園の来客室へとやってきていた。
「僕に何か御用でしょうか」
「うちのご主人様が取引の邪魔をされたと大層ご立腹です」
「何のことかわからないのですが」
「先日冒険者の男達から鉄と銅のインゴットを買い取られたでしょう」
「確かに買い取りましたがそれが何か」
クロードからすれば取引を拒否されて困っていた冒険者の男達から適正な価格で買い取ったのでどこに問題があるのかがわからない。
「それは私の主が買い取る予定だったものです。すぐに引き渡してもらいたい」
「品質が悪いと断ったのでしょう。それを僕が引き取ったことに何の問題があるのかわからないのですが」
「悪いことはいいませんから子爵様のご機嫌を損なわないうちに引き渡しなさい」
「正当な取引で手に入れた物なのでお断りします」
「どこの貴族の子供かは知りませんが貴族の当主と仲違いをしてもいいことはありませんよ」
「僕の返答は何を言われても変わりません。お引き取りください」
使用人の男性は足音荒く出ていくがクロードの知ったことではない。
「クロード君。相手の方はずいぶん怒っていたようだけど何かあったのですか」
「何でもありませんよ」
間違っていることを間違っていると言って何が悪いのかクロードには理解できなかった。
仮に子爵本人が相手でもクロードの返答は変わらなかっただろう。
本日の授業も終わりどうしようかと考えていると来客がきていると再び来客室へと足を運んでいた。
「お前が私の取引の邪魔をしたクロードとか言う餓鬼か」
「クロードは僕ですが貴方は」
「儂はソンネル子爵だ。どこの貴族の子供か知らんが使用人の要請に応えておけばいい物を儂が直接出向くことになったではないか」
「使用人ということは貴方がインゴットの買い取りを拒否したという貴族ですか」
「口のきき方がなっていないな。貴族の当主に対して失礼ではないか」
「それは失礼しました。それにしては貴方も失礼な話し方だと思いますけどね」
「対等に扱えだと。笑わせるなよ小僧」
クロードは内心この国の貴族は大丈夫だろうかと溜息をついていた。




