二十四話
クロード達は順調に足を進め二つ目の安全地帯にたどり着いていた。
「今日の探索はここまでにして休憩を取ろう」
安全地帯の角に陣取り姉様達が手早く夕食の準備をしてくれる。
鍋に魔法で水を出し生活魔法で湯を沸かし白い粉を入れる。
白い粉はみるみる水を吸い取り嵩が増える。
「アリシア姉様その粉はなんですか」
「クロードははじめて見るのね。小麦粉に色々な物を混ぜた冒険者御用達の保存食よ。味は今一だけど栄養価が高いの」
説明しながらも椀に手際よくよそって手渡してくれる。
スプーンですくい口に入れてみる。
お世辞にも美味しいとは言えないが食べられないほどではない。
「お味はどうかしら」
「何とも言えない味ですね」
「学園の実習なんかでもお世話になるから今のうちから慣れておいた方がいいわよ」
嵩張らないという利点はあるもののもうちょっと改善できないだろうかと携行食の改善を決意したクロードだった。
食事も終え後は寝るだけとなった。
「はじめてのダンジョンで疲れたろ。見張りはこっちでするからクロードはもう休むといい」
「お言葉に甘えて休ませていただきますね」
肉体的には余裕があるが常に気を張り精神的な疲れが溜まっていたクロードは毛布に包まるとすぐに寝息をたてはじめる。
四人はクロードが寝たのを確認して起こさないように小声で話しはじめる。
「ファールハイト兄さんはクロードのことをどう見たんだ。ずっと観察してたんだろ」
ファールハイトは全体のバランスを見ながら後方の警戒しつつクロードの評価をしていた。
「連携に関しては甘いところがあったが常に余力を残しているように見えた」
「危なげなかったものね。私も安心して魔法を撃てたわ」
「私はこのまま進んでいいと思うけどどうかしら」
「異論はない。ではこのまま奥に向かうということで決定するよ」
朝起きると兄達と姉達は既に起きていた。
「クロード。おはよう。よく眠れたみたいね」
「熟睡してしまったみたいで申し訳ないです」
「どこでも眠れるってのは実は重要なことだ。恥ずかしがる必要はないさ」
クラウス兄様が椀を差し出してくれる。
中身は夕食と同じ携行食だった。
「食べながら聞いてくれ。ここから先はゴブリンの上位種のホブゴブリンやメイジが混じってきて難易度が上がるのはもちろんだが何より数が多い」
「わかってると思うけど突出して孤立したりしないようにするのよ」
「わかりました」
「私としてはクロードよりクラウス兄様の方が心配だけどね」
「そりゃあどういう意味だよ」
「ふふ。それは過去に孤立した実績があるからだね」
「ファールハイト兄さん。それをここで言うか」
難易度が上がると聞いて緊張していたはずがいつの間にか兄様達につられて笑っていた。




