二百三十四話
「設計図も書いたのですが見てもらえますか」
「拝見いたします」
魔道具ギルドの職員は真剣に設計図を読みこんでいく。
「どうでしょうか」
「これほどの精密な魔力回路を作れるものは魔道具ギルドでも少数です」
クロードとしてはそこまで難しい難易度ではないつもりであったが世間一般では難しい範疇にはいるようだ。
「それはダメということでしょうか」
「いえ。作れないというわけではないので大丈夫です。総ミスリル製でこれだけの難易度の物となると値段はこれぐらいになるでしょう。クロード様の取り分がこれぐらいでこちらが魔道具ギルドの取り分となりこれが制作者の取り分となります」
示された金額は思っていたより多くクロードに異論はない。
「それでお願いします」
「わかりました。それでは契約書を作成します」
クロードは書かれた契約書に問題ないことを確認して署名する。
「本日はありがとうございました」
「いえ。こちらこそ貴重な物をありがとうございました。またのご利用をお待ちしております」
クロードは魔道具ギルドを後にして屋敷へと戻った。
屋敷の庭では母様とエリーゼがお茶を楽しんでいた。
「クロード。おかえりなさい」
「ただいま」
「数日部屋に籠っていたと思ったら出かけて何をしてたのかしら」
「新しい魔道具を作ったので魔道具ギルドに登録にいってました」
「こないだ新しい事業を立ち上げたと思ったら今度は魔道具を作ってたのね」
「どんな魔道具なの」
「食材を冷却してくれる魔道具ですよ」
「生活魔法で氷を出すのではダメなのかしら」
「どうしても冷やしムラがでますし一定時間ごとに氷を作らなければいけませんでしたから料理人からすると夢のような商品みたいです。料理長が喜んでいましたよ」
「なるほどね。料理長が機嫌が良さそうだったのはそういうわけだったのね」
「それはそうとそろそろ長期休みも終わりでしょ。課題はちゃんとやっているのかしら」
「それなら大丈夫です。もう終わらせましたから」
「色々忙しそうに動いていたのにもう終わってるのね。私はあと少し残っているのよね」
「余裕をもって明日には帰ろうかと考えています」
「そう。それは寂しくなるわね」
「お母様。私も会えなくなって寂しいですわ」
母様とエリーゼはこの短期間でずいぶんと仲良くなったように見える。
その様は実の親子のようだ。
「転移魔法ですぐですから何かあったら帰ってきますよ」
「それは楽しみね。毎週のように帰ってきてもいいのよ」
「それはちょっと」
「冗談よ」
母様の冗談に笑いつつもゆったりとした時間を過ごしたのだった。




