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二百三十一話

屋敷に戻ったエリーゼはクロードのために教えられた手順でコーヒーを淹れていた。

豆を挽いて濾過用のフィルターにお湯を注ぎ時間をかけて抽出する。

抽出したコーヒーをカップに注ぎ角砂糖の準備もしてトレイに乗せてクロードの部屋へと向かう。

両手が塞がっているので声をかける。

「クロード。今いいかしら」

「エリーゼ。どうしたの」

「珍しい飲み物が手に入ったからどうかと思って」

「ありがとう。頂くよ」

クロードの部屋に入ったエリーゼはコーヒーをクロードの前に差し出す。

クロードは何の警戒もなくそれに口をつける。

味を確認したクロードは角砂糖を投入して再び口をつける。

「どうかしら」

「うん。とても美味しいよ」

「コーヒーって言うらしいの。露店でたまたま見かけたのよ」

「よかったらその露店を教えてくれないかな」

「いいわよ」

エリーゼが持ってきた珍しい飲み物はコーヒーだった。

前世では慣れ親しんだものだがこの世界にも存在していたとは驚きだ。

露店で見つけたということでこれは商売のチャンスだと思いエリーゼに露店の場所を案内してもらうことにした。

「クロード。ここよ」

「おや。さっきのお嬢さんじゃないか。何かわからないことでもあったのかな」

「コーヒーを飲んだ彼が露店の場所を知りたいって」

「何かな」

「僕と契約して大大的に売りだしませんか」

「君と契約。どういうことかな」

「僕はクロード・フォン・プロミネンスっていいます」

プロミネンス領で商売している者にとってプロミネンスという名は特別だ。

プロミネンスと名乗る以上領主の一族ということになる。

露天商は緊張しつつも質問する。

「侯爵家の方が興味を持ってくれたのは嬉しいですが具体的にはどうしようと言うのです」

「新たにコーヒー専門の事業を立ち上げます。貴方を責任者として採用して事業はお任せしようと思うのですが」

「私を責任者としてですか」

露天商としては青天の霹靂だろう。

「こうして仕入れられているということは何らかのコネクションを持っているということです。現物を仕入れられる貴方に任せるのが良いと判断しました」

「具体的にはどう展開するのですか」

「仕入れた豆を焙煎する工場と淹れたコーヒーを手軽に楽しめるカフェの展開を考えています」

「コーヒーは淹れるまでが手間ですがそれなら気軽に楽しんでもらえるということですね」

「少しずつ広めれば必ず売れるようになります。引き受けてもらえませんか」

「コーヒーを広めるのが私の夢でした。喜んで引き受けさせていただきます」

露天商と細かい箇所を詰めて契約書をかわす。

クロードは屋敷に戻ると父様に報告して許可を取り精力的に事業展開に向けて動き出すのだった。