二十三話
クロード達はフォーメンションを組んでダンジョンの中を進んでいた。
前衛をクラウス中衛にアリシアとアイリス後衛にファールハイトとクロード。
「クロードはまずダンジョンの雰囲気をつかんでくれ。慣れてきたらクラウスと前衛を務めてもらう予定だよ」
ダンジョンの奥から早速蝙蝠型の魔物ショートバットが襲いかかってくる。
クラウスが近づいてこれないように牽制してアリシアとアイリスが魔法で攻撃する。
吸い込まれるように魔法が当りショートバットは魔石とドロップ品の羽を残して消えていく。
クラウスが素早く魔石とドロップ品を回収して周辺を警戒する。
クロードが割って入れないほど熟達した連携の動きを見せる兄と姉達に衝撃を受ける。
「これって僕必要なのかな」
「今は低級な魔物が相手だから余裕があるけどすぐにクロードにも働いてもらうことになると思うよ」
その後もショートバットやゴブリンを相手に危なげなく進んでいく。
しばらく進むと開けた場所にたどり着いた。
「ここはダンジョン内に設けられた安全地帯だよ」
ゲーム時代にも安全地帯は存在していた。
回復したり露店から消耗品を購入したりしたものだった。
今も部屋を見渡すと数は少ないが休んでいる人達がいる。
「クロードが疲れているようだったらここで休憩を取ろうと思ったけど問題ないみたいだね。ここからはクロードにも前衛に出てもらおうかな」
「はい。兄様」
記憶が正しければここからは武装したゴブリンが現れて難易度が少しあがるはずだ。
安全エリアを抜けると早速剣と槍を装備したゴブリンに遭遇する。
単独で斬り捨てるのは簡単だが連携を意識して姉様達が魔法で狙いやすいようにゴブリンを誘導する。
考えた通りに魔法が飛んできてゴブリンが怯んだところを剣で斬りつける。
「クロードその調子よ。魔法を当てやすかったわ」
アリシア姉様が褒めてくれる。
ファールハイトは全体を眺めながら冷静にクロードの実力を測っていた。
個人としての能力は十分。
完璧とは言えないが連携を意識した動きもできている。
ファールハイトは今年で20歳になる。
今の成績なら問題なく学園を卒業して領地に戻り父の元で領主としての経験を積むことになる。
兄としては自由な道を進んで欲しいと思っているが領主としては手元に置いておきたくなる存在だ。
妹達は婚約が決まっており将来出ていくのが決まっている。
クラウスは騎士になると言っており王都の騎士団から声がかかっているのを知っている。
将来のことをつい考えてしまったが今は探索に集中するべきだと雑念を払うのだった。




