二十二話
本日は近場のダンジョンにお兄様とお姉様達が潜るというので同行させてもらい馬車で移動していた。
「クロードはダンジョンに潜るのは初めてだよね」
「はい。ダンジョンにはまだ潜ったことはありません」
「今回僕らが挑むダンジョンは中級のダンジョンなんだけどクロードの実力なら問題ないと思うよ」
「油断は禁物とはいえクラウスに圧勝する剣の腕に魔法も使えるからね。期待しているよ」
馬車の中で軽い昼食を取り昼過ぎには問題なく目的のダンジョンに到着した。
馬車を降りると周囲に注目されていることに気がつく。
「なんだか注目されていますね」
「彼らは生活の為にダンジョンに挑んでいるけど僕らは金持ちの道楽で挑んでるように見えるのさ」
僕らを見ている人達の中から一人の男が歩みよってくる。
「おいおい。金持ちの道楽だけでなく餓鬼連れなんてダンジョンを舐めるのもいい加減にしろ」
「我々は王国からこのダンジョンの委託管理を任されているプロミネンス侯爵家の者だ。貴方の口を出すことではない」
「侯爵家だと。それが本当でもこんな子供を帯同させるなんて認められるか」
馬車にはプロミネンス家の家紋が入っているが一部の冒険者以外は家紋でどこの家の者か見分けるのは難しい。
騒ぎを聞きつけダンジョンの管理をしている兵士が慌ててやってくる。
彼らは主家の家紋を当然知っており非礼がないようにと丁寧な対応は心がける。
「何かございましたか」
「僕達としては問題ないんだけどね。クロードの同行に彼が文句を言ってきていてね」
「クロード様ってまだ本当に子供じゃないですか」
「こんなでも俺よりはるかに強いんだがなぁ」
「クラウス様より強いって本当ですか。私では判断出来かねますので上司に相談してもよろしいでしょうか」
「その必要はない」
いつの間にかまわりの兵士より立派な鎧を身に着けた男が近づいてきていた。
「アントス隊長か。久しいな」
「ご無沙汰しております。クロード様は騎士団との模擬戦で勝てるほど強いと聞いておりますので問題ありません。それにここにおられると言うことは侯爵様の許可も当然得ているのでしょう」
「当然、父の許可は得ている」
「それではどうぞお通りください」
「失礼するよ」
クロード達はクラウスを先頭にダンジョンに消えていった。
隊長のアントスは溜息をついていた。
「生真面目なのはわかるが喧嘩を売る相手は考えてくれ。冗談でなく不敬罪で首が飛んでいてもおかしくなかったぞ」
「すまなかった」
男はトボトボと仲間の元に戻り慰められるのだった。




