二百三話
エリーゼは本戦を危なげなく勝ち進みいよいよ決勝戦へと挑んでいた。
相手は大剣を持った初等部の生徒としては大柄な男子生徒だ。
エリーゼは細剣を抜いて構える。
「それではこれより決勝戦を行います」
エリーゼは審判の開始の合図と同時に動きだし先手を取ろうとするが相手の男子生徒は巨体に似合わない機敏な動きを見せエリーゼの突進に合わせて大剣で進行ルートを塞いでくる。
エリーゼはステップを踏み大剣を躱してそのまま刺突を放ちにいくが危機感を覚えて離脱する。
避けた場所に大剣が音をたてて通過する。
男子生徒は大きく硬直するがエリーゼも無理な避け方をしたのでその隙をつきにいくことができないでいた。
エリーゼは大きく距離をあけて体勢を整える。
相手の男子生徒は攻めてこず守りの構えをみせている。
どうにか守りを崩して一撃を入れなければならないが細剣で攻撃を受ければ細剣に致命的なダメージを貰うことになるだろう。
エリーゼは強弱をつけたステップで相手の攻撃を誘うが乗ってこない。
エリーゼは意を決して踏み込み男子生徒は再び避けた先に大剣を振るってくるがそれを予測していたエリーゼは避け連撃を男子生徒に見舞う。
硬直していた男子生徒はそれを避けることができずに敗北した。
「それまで」
「徹底して対策したつもりだったが甘かったか」
「先輩も強かったですよ。ヒヤヒヤさせられました」
「また一から鍛えなおしだ」
エリーゼと男子生徒は握手して別れる。
エリーゼはクロードの元へ戻ろうとして騒いでいる男性に気づく。
エリーゼはその男性のことをよく知っており近づいていく。
「お父様。来てくれて嬉しいです」
「娘の晴れ舞台だからな。優勝おめでとう」
「ありがとうございます」
「身内だけで細やかなパーティーを開こうと思うが城に戻ってこんか」
「それでしたら明日まで待ってもらえますか」
「それはいいがなんでまた」
「きっとクロードも優勝しますから一緒に祝いたいのです」
「ふむ。わかった。手配しておこう」
「それでは私は戻りますね」
「娘の成長は嬉しくもあるがやはり複雑な気持ちがあるな」
「クロード卿とくっつけようと画策してる人のセリフとは思えませんね」
「政治的な思惑もあるが娘の幸せを願っている一人の父親にしかすぎんさ」
「エリーゼ様が男子であればまた違った選択肢もあったのでしょうけどね」
「才能があるのは認めるが余は娘でよかったと思っておるぞ」
「これは失礼しました」
「男子であれば継承権に関わってくる。身内での争いなど望んでいないからな」
国王陛下であるポセイドスと宰相のリッチマンはその後も会話を続けていた。




