百八十九話
クロードとエリーゼは王宮で開かれるパーティーに参加するため馬車に揺られていた。
「パーティーは面倒なのよね」
「立場を考えればしかたないですよ」
馬車は問題なく王宮につき準備があるとのことでエリーゼと別れてクロードは応接室に通されていた。
紅茶を飲みながら待っていると国王陛下のポセイドスと宰相のリッチマンがやってきた。
「先日。王宮の管理するダンジョンの一つで氾濫の兆しがあってな。竜騎士団が出動して被害が出る前に排除することができた」
「陛下からいただいた竜の文字に恥じぬ働きを示せたことを嬉しく思います」
「話は変わるが娘のエリーゼとは仲良くやっているようだね」
「エリーゼ様は呑み込みが早く勉学を頑張っていらっしゃいます」
「休日に二人で出かけていたと聞いておるのだが」
「武闘祭に向けてダンジョンで修業をしていたんですよ」
「そういうことか」
「陛下。１０歳の子供に何を期待しているのですか」
「そうだな。まだ１０歳の子供であったな」
「あの。お話が見えないんですが」
「親の私から言うことではないな。クロードよ。忘れてくれ」
「わかりました」
「それでは堅苦しい場ではあるがパーティーを楽しんでいってくれ」
国王陛下のポセイドスと宰相のリッチマンと別れてパーティーの会場へと向かう。
パーティー会場は立食式でそこかしこで招待客が話し込んでいた。
クロードを見つけた目聡い貴族が早速挨拶にやってくる。
次々とやってくる貴族達の対応で料理を楽しむ暇もなく無難な会話を続ける。
国王陛下であるポセイドスが堅苦しい場と言っていた意味を今頃になって理解する。
これは政争である。
皆有力な貴族とつながりを持とうと必死なのだ。
有意義な会話が出来ればいいのだがほとんどは意味のない会話であり娘と婚約して欲しいなどという者までいる。
クロードが疲れ始めたころ王族の入場を知らせるファンファーレがなりようやっと一息つけた。
「皆。今宵は楽しんでくれているだろうか。楽しい一時を過ごしてくれると余も嬉しい。それでは王国の繁栄を願って乾杯」
クロードも国王陛下であるポセイドスの音頭に合わせてグラスを奉げる。
国王陛下であるポセイドスの元には挨拶をしようと多くの貴族が並んでいる。
クロードも挨拶するために列に並ぶ。
クロードの番となり改めて国王陛下であるポセイドスと会話する。
「陛下も大変ですね」
「これが役目だからな。クロードも苦労していたようではないか」
「見ていたのですか」
「この後はエリーゼのそばにいるといいぞ。よい人除けになる」
「ご心配いただきありがとうございます」
「ではまたな」
国王陛下であるポセイドスのもとを辞してエリーゼを探すクロードであった。
