百六十八話
「姫様。演習は途中で終わってしまいましたが何かよいことでもありましたか」
「うむ。強大な魔物に立ち向かっていく格好良いクロードの姿を見れたのじゃ」
「それはようございましたね」
「少ししか戦う姿を見れなかったのは残念だったのじゃ」
「演習中はどうだったのです」
「クロードが魔物を見つけて妾に場所を教えてくれたのじゃ」
「クロード卿は姫様に経験を積ませるのを優先したのですね」
「クロードのおかげでステータスが随分と伸びたのじゃ」
「姫様。おめでとうございます」
「ありがとうなのじゃ」
姫様が上機嫌なのは私も嬉しいです。
姫様の喜びは私の喜びなのです。
クロード卿は人を育てる才能も併せ持っているようです。
姫様はクロード卿と過ごすことでぐんぐんと成長しています。
「今日はクロードに中級魔法を教えて貰ったのじゃ」
「中級魔法をですか。クロード卿は教えるのが上手いんですね」
「そうなのじゃ。手本を見せてくれたから分かり易かったのじゃ」
「ふふふ。姫様が毎日楽しそうで私も嬉しいです」
「まだまだ無詠唱では無理だけど習得してクロードを驚かすのじゃ」
今日も姫様はご機嫌です。
クロード卿には感謝をいくらしてもし足りないくらいです。
「姫様。どうかされたのですか。沈んでいるように見えますが」
「しばらくクロードが上級生の演習の安全確保のためにいなくなるのじゃ」
「姫様達が遭遇した転移門事件の対策のためですね」
「クロードがいなくなるのは寂しいのじゃ」
「姫様。クロード卿に何かプレゼントをあげてはどうでしょうか」
「プレゼントって何を渡せばいいのじゃ」
「そうですね。手作りのクッキーとかはいかがでしょうか」
「作ったことがないのじゃ」
「大丈夫です。私も手伝いますから」
「やってみるのじゃ」
姫様はおっかなびっくり指示した通りに材料を混ぜていきます。
「よく材料が混ざったら生地に粘りけが出るまでこねてください」
「わかったのじゃ」
「それが終わったら少し生地を寝かすので休憩しましょう」
「そろそろ大丈夫ですね。それでは生地を棒で伸ばして後は型を使って成型しましょう」
「わかったのじゃ」
姫様は一生懸命に作業を続けています。
愛する殿方のために頑張っている姿はとても愛らしいです。
「型を取り終わったらオーブンでじっくり焼くだけです」
「これでいいのじゃな」
「はい」
「そろそろ焼けたのじゃな」
「ええ。もう大丈夫ですよ」
「最後に可愛い袋に入れて完成です」
「出来たのじゃ。これでクロードも喜んでくれると嬉しいのじゃ」
「絶対喜んで貰えますよ」
こうして姫様の初めてのクッキー作りは無事終了しました。




