十六話
錬金術の素材が集まるまでは魔法を集中して練習するということで今クロードは広大な砂漠に立っていた。
ネツァルの転移魔法で移動してきたのだ。
「ここならどれだけ魔法を撃っても問題あるまいて」
とのことだ。
今は魔法の熟練度を確かめるとのことで言われた魔法を撃っている最中だ。
「ふむふむ。よく練習しておるな。中級までは合格点じゃ。それではいよいよ上級魔法いってみよう」
ネツァルさんの軽いノリに押されるように本で覚えた上級魔法を詠唱する。
「炎を集え。咲きほこれ火炎の業火よ。我は命じる。汝の敵を焼き尽くせ。インフェルノ」
凄まじい業火が目の前に顕現し全てを焼きつくさんと炎がゴウゴウと音をたて燃えている。
「うむうむ。発動はできたようじゃの。だが制御が甘い。要練習じゃの」
その後もネツァルさんの指導のもと上級魔法を何回も放つ。
さすがに魔力が尽きて休憩をしようと座りこむ。
「ほほ。これだけの回数を撃てる魔力量はすごいのぅ。わしが錬金術で作った回復薬じゃ。これを飲んでもっとチャレンジじゃ」
ネツァルさんは優しい顔をして大量の瓶を抱えている。
魔力が尽きるたびに回復薬を飲んでは魔法の練習を繰り返す。
さすがにお腹がタプタプしており休ませてもらおうとネツァルさんを見るのだが無言でニコニコしながら回復薬を差し出してくる。
クロードは覚悟を決めて回復薬を飲み干すと魔法の練習に戻るのだった。
夕方になりネツァルさんの転移魔法で屋敷に戻る。
クロードは薬でたぽたぽになったお腹を抱えて夕食はいらないと言って部屋に戻る。
これ以上胃に何かを入れたらリバースしてしまう。
恐ろしいほどのスパルタ教育ではあるがアドバイスを受けるたびに改善されるのがわかって教えるのがうまい人なのだと思った。
ネツァルは食堂でファイネルとリーシアと共に食事を取っていた。
「息子の様子はどうですかな」
「恐ろしいほどの才能を感じます。教えるのが楽しすぎてついつい無茶をさせてしまいました」
「ネツァル殿にそう言っていただけると誇らしいですな」
「私の持つ技術を全てお教えすることを約束しましょう」
「賢者様の技術を全て覚えるのは大変でしょうけどあの子ならきっと楽しんで覚えていくのでしょうね」
ネツァルは完全に浮かれていた。
他にも手ほどきをしたことはあるがここまで才能のあるものはいなかった。
明日からはどのように指導しようか。
食事と会話を楽しみながらネツァルはそのようなことを考えていた。




