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龍の子   作者: 選択肢が多すぎて辛い
序章 
4/17

Nola

「落ち着いた?」 

「うん。ありがとう」

 

 優しい感触が離れていく。名残惜しく感じるが、このままじゃ、話もできないし追いかける事はしない。助けてくれた人は笑顔で笑いかけてくれる。何となく輪郭と茶色い目の色だけが見える。かなり痩せていて骨も簡単に折れてしまいそうだ。


「男の子なんだから、人前であまり泣いたらダメだよ?」


そう言われて、少し恥ずかしくなるけれど素直に返事をする。


「うん、気をつけるよ」


 ゆっくり深呼吸してじっくり観察する。

 先ほど見えなかった人は全体的に痩せて汚れているそれで、クリッとした綺麗な茶色い目がオロオロとしている。それでも凄く暖かい感じで大好きになった。

ジッと少女を見つめていると、少女は少し恥ずかしそうにして、何とか居住まいを正そうとする。


「私はノーラ。貴方この街は初めて?この辺り少し危ないのよ。もし良かったから街を案内するけど?」


 どうする?と首を傾げてくるノーラに僕はは一も二もなく頷いた。


「僕はアレンだよ。街には今日来たばかり、だから案内して欲しいな」


そう言ったら、ノーラは笑顔で頷いてくれた。


「アレンね!了解よ。なら、行きましょ!」


 ノーラは立ち上がると、街の大通りに向けて歩き出す。遅れないように立ち上がりすぐに追いかける。


「ねぇアレン、貴方ご飯は食べた?」

「うん、食べたよ」


 今日は近くで狩った蛇を食べた。ちょっと生臭かった。

 

「そう、なら食事の話は後でいいわね。歩きながら簡単な街の説明だけして、今日は寝てしまいましょう。疲れたでしょ?」


ノーラはそう言って街の簡単な説明をしてくれる。


「貴方が今いたのは、貧民層が住む街よ。家や仕事はあるけれど、貧しい人たちが住む場所。一番、危ない場所だから、基本的に昼以外は通っちゃ駄目。で、今から私達が行くのがスラムね。

 私も住んでるし、あなたも住む事になるわ。私達みたいに、家が無い人達が住む場所よ。他の場所とはルールがちがうから気をつけなきゃダメ。貴方が前に住んでた場所とも違うと思うから、細かなルールは教えてあげる。でも、その前に街のことからね。さっきの場所から更に逆の奥に進むと中流層、ずっとこの町にいる商人さんみたいな、しっかりした人が多いわ。そこから先は基本的に行く事がないから覚えなくていいかな?それで、この街は一番大きな、あの建物を中心に円形だから向こう側もこっちと同じようになってるわ」


 ようは中心に向かうほど金持ちが増えるという事だ。しっかり理解して頷き一つ、気になったことを確認する。


「ノーラはどうして危ないところにいたの?」

「仕事のためよ。もう少し早く帰る予定だったけど、今日は遅くなってしまったの。でも、お陰で貴方と会えたし、ちょうど良かったわ」

「僕もノーラと会えてうれしいよ。それで、ぼくも働けるところあるかな?」


 ダメ元で尋ねるとノーラは大丈夫よ、と前置きして自分の仕事について教えてくれる。


「私、冒険者ギルドで働いてるの。他の町ではどうか分からないけど、この町では領主様が私達のために簡単な依頼を沢山してくれるのよ。だから、私たちはソレを受けてお金を稼いでるの。ギルドにも明日連れてってあげるわね。登録すれば直ぐに働けるから」

「ほんとに!?ありがとう」


 仕事がもらえると聞いて思わず大きな声で喜んでしまう。すると、ノーラはクスクスと笑い出した。

 笑った顔が本当に魅力的だ。


「何ていうか、アレンって私と同い年くらいに見えるのに小さな子供みたいね」

「そうかな?」

「そうよ、なんだかほっとけない感じだし。さっきから反応が子供みたいだもの」


 そう言われて、恥ずかしくなり少し大人っぽく振る舞おうと、街を歩く他の大人の真似をするが、それを見たノーラの笑い声はさらに大きくなった。

 その後もノーラは歩きながら、いろいろな事を教えてくれた。主にスラム街のルールだ。自然ではルールを知らない者が一番に死ぬ、

だからルールを知ることはとても大事なことだ。

 暫く歩くと、崩れた家の中や屋根の下に陣取り睡眠を取る子供達の数が増え始めた。ノーラはそこから少し歩いた場所の建物まで行くと、とうの昔に鍵の壊れたであろう扉を開けて中に腰を下ろす。

 建物は小さく、部屋をしきる壁もない物置のような場所だった。


「此処が私のお家よ。アレンも此処に住むといいわ」


そう言って、ノーラは自分の隣を指差す。

「良いの?」


 驚いてノーラに尋ねる。

 先ほど彼女からスラム街では全員に縄張りがあり、みんな自分の場所を大切にしてるから、寝る場所などは気を付けないといけない、と言っていた。

山で生きていた時も似た様なルールがあったので、このルールをよく覚えていた。


「勿論よ。いまから、新しいお家を探すのには時間がかかるでしょう?此処は私が一人で住むには広すぎるからね」


 そう言いながら、ノーラは自分が使ってない布を何枚か取り出すと、


「これを使って」


と言ってくれる。


「なんで、僕に優しくしてくれるの?」


気付いたら思わず聞いていた。だって、さっきまでの人はとても冷たい人ばっかりだったから。ノーラは少し考えた後、口を開く。


「分からないわ。そうした方が良いことがあるって昔、教えてくれた人がいたの。ずっと忘れていたけれど、だからかも知れないわ。それとも何かを変えたかったのかも知れない分からないわ」


凄く嬉しくなった。何も知らない僕をたすけてくれて世話を焼いてくれる。優しくしてくれる。

 そんなノーラがぼくは凄く好きになった。

 だから、何があってもノーラには恩を返そうと心に誓う。

 

「少し、恥ずかしい事言っちゃった。その布団、今は夏だから要らないかも知れないけど寒い時は使ってね。明日は貴方の登録もあるし、早くギルドに行かなきゃ行けないから、もう寝ましょう」


 ノーラはそう言って布を床に敷いてその上で丸くなる。僕もノーラと同じようにする。

 

「おやすみ、アレン」


ノーラの優しい声を聞いて、なんだかポワポワした気持ちになりながら、


「おやすみなさい」


と返して眠りについた。





 



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