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龍の子   作者: 選択肢が多すぎて辛い
序章 
3/17

meet!!

「おお!凄い!」


 初めて見る街の中は凄い!声が自然に溢れ出す。沢山の人と物、何もかもが初めての物だ。キョロキョロと辺りを見渡しながら街を歩く。気付いたら太陽はかなり落ちていた。

 そういえば、何度も同じような会話が聞こえる気がする。


「兄さん!コレはいくらだい?」

「ソレかい?銅貨1枚だよ!!」


 話してる人たちは何か薄いものを渡して物をもらってる。其処でようやく、思い出した。

"そうだった!お金を稼がないとダメなんだ!!"

 通貨という概念自体は知っていた。ソレがどの様な物かは初めて見たが。父さんに聞いたから。 

 父さんは遠い昔に人間の友人がいたらしい。彼女から聞いた話を思い出せるだけ思い出して、何度も聞かせてくれた。

 いざ、お金が必要だと分かれば行動を起こす。お金を得るために仕事を紹介してくれる人を探さねばならない。

 人に話しかけた経験は殆どないから少し不安だ。愛想よく見えるように笑顔を作る。辺りを見渡して、優しそうな人を探して声をかけた。


「すいません!!」


 しかし、その人は一切反応せず去っていく。

 なんだか、凄く冷たい気持ちになる。今の人が変なのか僕が間違えたのか……不安になりながら遠慮がちに側を歩く他の人へと声をかけ続ける。


「あのう……あの!…………」

 

 だが、結局全ての人がに無視された。耳や目は時折反応していたから意図的に無視したんだと思う。

"なんで?町では人に話しかけるのはダメなのかな"

凄く落ち込んだ。全然楽しくない。

 とはいえ、いつまでも俯いている訳にもいかない、今度は店にいる男に向かって声をかける。


「あの……」


 声をかけると男はすぐに僕の方を向く。彼は僕のボロボロの服装を見てすぐに険しい顔になる。


「物乞いか?悪いが俺も生活がギリギリなんだ、他に行ってくれ!!」


 そういって再び仕事を再開した。

 物乞い?それは何か分からない。けれど大体の予想はつく。きっと男の人は何か勘違いしている。

 だから、しっかりと説明すれば何かを教えてもらえるかもしれない。もう一度声をかける。

 

「いや、そうじゃなくて……」


 しかし、彼は厳しい顔で僕を睨み


「何度も言わせるな!どっか行け!!」


そう怒鳴りつけた。

 なんで?別に怖いわけじゃない。だけど相手を怒らせてしまった意味が分からなくて凄く不安だ。

 此処で僕はやっていけるのかな?人に話しかける事もできないのに?

 どうすれば良いのか分からなくなり途方にくれる。何が悪かったのか?人の世界に行けば仲間が沢山いるはずだったのに。町と全然違う。周りの人の真似をしても全然うまくいかない。

「山に戻りたいな……」


 気付いた時には、漏れ出ていた。

 此処なら周りに群れでいる生き物を見るたびに感じていた孤立感は感じないで済む。そう思っていた。周りの生き物と何かが違う。自分の居場所が分からない。そんな悩みは解決すると思っていた。

 育て親以外の話し相手がいない森より楽しい生活が出来る、そう思っていた。

 しかし、そんな事は無かった。別に同じ種族だから仲良くなれる訳では無かったのだ。むしろ、山で過ごしていた自分は町でも異物のままだ。そう感じた。

 今まで、彼に優しくしてくれた人間は、この街の衛兵だけである。他の町では門の前で衛兵達に冷たくあしらわれた。

 だから、この街の衛兵が自分を歓迎して馬で近くまで迎えに来てくれた時とても驚いた。同時にすごく幸せだった。思い出すと口角が少し上がる。

 今行けば、またあえるかな。

 そう思ったけれど、何だかそんな気分になれなかった。

 結局、その後、誰にも声をかける事が出来ず近くの椅子に座り込んでいた。

"そろそろ夜だ。何処で寝ようか"

ノソノソと動き出し人目につかない路地裏で、壁にもたれかかる様に座り込み膝を抱えて俯いた。


「おい、ネェチャンそこで何やってんだ?」


近くから男の声が聞こえる。


「暇なら俺達と楽しい事をしようや」


 顔を上げるとゴツゴツした二人の中年男が僕をみてニヤニヤしていた。

 ネェチャンとは僕の事らしい。何にしても声をかけられた事で少し嬉しくなる。

 だから笑顔で男達に問いかける。


「楽しい事って?」


 聞くと男達はニヤニヤと笑い、僕に向けて手を伸ばした。どこかに連れていってくれるのかな?


「なぁに、お前はそこでジッとしてれば良いさ!!俺達が勝手に楽しむからよ!!」


 そう言って男達は僕ににのしかかろうと手に力を込める。この人たち、敵かな?

 のしかかるのは十分な攻撃だ。思わず山暮らしの習性が出かけていた。つまり"ヤられる前に殺す(ヤル)"である。

 右手に魔力を集める。殺そう。そう思ったけれど、手を振り抜く事は無かった。


「衛兵さん!こっちです!!」


 突然、そんな声が響いた為だ。


「なっ!?マズい!!」


 ソレを聞いた二人の男達は慌てて僕の手を放し路地の奥へと消え去った。


"えっ?"


 何が起きたのか分からず呆然となる。そこに、一人の人が駆け寄ってきた。

 顔は影になっていて、よく見えないけれど身長は自分と同じくらいだ。肩甲骨の下あたりまで伸びた秋の野原みたいな髪に夕陽が反射して、とても綺麗に見えた。

 少女は僕の前にしゃがみ込むと顔を覗き込む様にしてくる。よく見ると僕と顔の形が違うのがわかる。少し丸くて優しい感じだ。


「大丈夫?何もされてない?」


 手を握られたぐらいだが、正直、痛くもなんとも無かったので頷いておく。


「良かった!安心してね。もう大丈夫だから」


 僕が頷いたのを確認すると、その人はホッと息を吐いて体を近づけて、グッ僕を引き寄せた。意味がわからずに呆然となる。何かされるのかと思ったけれど、そんな事は無くギュッと体をくっつけるだけ。


「ふぇっ!?」


 訳がわからず混乱する。

 どんな風に対応すれば良いのかわからない。

 でも凄く心地いい感じがする。少女の手が僕の背中を優しく撫でる。

「大丈夫、大丈夫」


  耳元で可愛らしい声が聞こえる。凄く暖かくて嬉しい気持ち。それに凄く安心する。はじめての感覚だけど失いたく無くて僕も手を背中に回してギュッとする。はじめて触る人の体は少し骨張っていて硬い部分があるけれど温みがあり柔らかかった。

 気付いたら目頭が熱くなっていて涙が落ちた。それでも、僕の背中の手は外れる事なく優しいままトントンとリズム良く僕の背中を叩いてくれた。



 





 


 

 

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