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龍の子   作者: 選択肢が多すぎて辛い
序章 
2/17

Begin

大陸の西にあるアーリア王国。その国境に位置する交易都市フリードベルは大量に流れてくる移民達に手を焼いていた。

 彼らは帝国との戦争に敗れたイーリス王国から国境を越え、職を求めて続々とフリードベルにやってくるのだ。

 領主のフリードベルク伯爵はとてもお人好しで職を失い国を追われてきた彼らを追い返す事など思いつかなかった。その為、領内は既に人で溢れかえり仕事は不足していた。

 勿論、交易都市なので他国や他都市との繋がりは豊富にある。商人と交渉し難民達に他国や他都市の職を斡旋させたり、自領の商人達に徒弟を取るよう説得したが、それでもスラムには人が増えどうにも立ち行かない状況に追い込まれていた。

 そんなフリードベルに、また新たな難民がやってきた。衛兵達は前からやってくる影を見て思わずため息をつく。


「こっちに来られても正直困るんだよな……」

「仕事も無いし、職もない。スラムに人が増えて治安は悪くなる一方だ……正直、俺たちの使命は此処で彼らを追い払う事じゃないかと最近思うんだよ」


同僚の言葉に辺りの衛兵達はウンウンと大きく頷きく。彼らも街の中に守るべき家族がいて、そう思うのも仕方のない事だった。


「じゃあ、追い払うか?」


衛兵の一人が悪戯っぽく笑い、他の衛兵達に尋ねると、全員が声を揃えて否定した。


「冗談に決まってるだろう、伯爵様からの命令だぞ?そんな事したら伯爵家の方々に顔向けできなくなる」


そう言ってお互いの認識を確認すると、彼らは新たな町民を迎える準備を始めた。

 5分程たって、衛兵達は先程からこちらに向かってくる影に違和感を感じる。というのも、いつまで経っても小さな人影が一つあるだけで、馬車が現れないのだ。影は荷物を背負っている様子もなく、そしてとても小さく思えた。おそらく子供だと考えていたし、だからこそ親が後ろからついてきていると考えていたのだ。しかし、一向に親は現れない。

 嫌な予感を覚えて衛兵の一人が慌てて馬に乗って迎えにいく。


 小人族とかなら良いんだが……


そんな期待と共に馬を駆けさせたが、どうやら人間の少女である事がわかった。


「君、どこから来たんだい?」


近づいて声をかけると少女は山の方を指差し


「向こうの山だよ」


 と答える。あの山の先には何もない。しかし山の近くにはイーリス王国の都市がある。

衛兵は、この子は捨てられたのだと考えた。うなじまである髪は帝国人に多い黒髪であるが、衛兵をジッと見つめる目は青く、それはイーリス王国の人間に良く見られる特徴である事を衛兵は知っていた。

 服はボロボロで山越えがどれほど大変だったかを物語っており、笑みは少しぎこちなく思えた。

 せめてもの救いは今が夏前であった事だと思う、

果実は豊富に実り川には魚がいる。おかげで、彼は飢える事なく此処にたどり着いたようだった。

 衛兵は子供を安心させる為に笑顔をつくった。


「そうか、よく来たな。町までは、あと少しだ馬に乗るか?」


 と尋ねた。、子供はそれを聞いて嬉しそうに頷き衛兵の手をとって馬に跨った。

 

「それで、お嬢ちゃん名前はなんて言うんだ?」


  何も話しかけなければ子供が不安になるだろうと思い衛兵は今後の事を頭から振り払い、努めて明るい口調で子供に問いかける。気の利く男だ。

 子供は衛兵の質問に少し首を傾げて、自身の性別をハッキリと言い直す


「僕は男なんだけど……お嬢ちゃんじゃい。名前はアレンだよ」


と、彼女でなく彼は笑顔で答えた。


###

 

 ところで、察しの良い皆様は、もう気づかれているかも知れませんがアレンと名乗る少年はかつて龍と共に消えた少年と同じ人物であります。

 彼は龍に食べられたわけでなく、龍に育てられていました。全ての人が別々の動機を持って行動するように、龍にも事情がありました。しかし、その話はまた後の機会に

 そして、この時衛兵とアレンの間には幾つもの勘違いがあります。皆様に間違った情報をお伝えする訳には行かないので、少し時計の針を戻させて頂きましょう。


###


 アレンは彼が指差した方向にある山を越え、更に奥にある山脈からきた。

 彼はそこで龍にとって大人になるまでの期間を過ごしていたのだ。龍にとって大人になるとは、子を為せる身体になる事を示す。

 それまで人と関わる事なく生活していた彼は人としての常識など殆ど知らない。

 自分が大人であり、同時に一人で旅立つ事が普通の事である。

 そう認識した上でアレンは目標を持ち、山を降りて人の住む街を目指した。

 彼の住んでいた場所からフリードベルは非常に遠く、服がボロボロなのは野宿などをする間に少しずつ痛んでいった為だ。

 また、山で生きていたアレンが食事に困ることなどなかった。何より生まれつき、王族の中でも魔力量の多い少年が世界最強の種族である龍の元で育てられたのだ。彼は世界屈指の強さを持っていた。


 (魔力とは世界に存在する不思議物質で物の性質を強化する。と言う不思議な力がある。

 ありとあらゆる生き物は大なり小なり魔力を持ち、生きている。魔力量とは、そのまま魔力の量という意味で、魔力は多ければ多いほど性質つまり、物体の性質を強化すると言う性質を増す傾向にある。

 そして、魔力量が多いと人に何が起きるかというと、当人の性質がより強化されるのだ。つまり、筋力や動体視力、脳の回転速度や反射速度が上がり人間をやめたような能力を持つことになる。

 また、魔力量が一定を超えると魔法という技を使えるようになるが、それも後ほど。因みにアレンは魔法が使えるので。そのうちお見せできるだろう)


 つまり、彼は此処に辿り着くにあたり、殆ど困る事など起きなかったのだ。魔物に怯える事もなく、食事にありつけない事もなく。生活的な面では一切の苦労を感じていなかった。

 しかし、彼を悩ませてた問題は別にあった。如何にして街に入るかという事である。此処に至るまで4つほど街を見つけたのだが、様々な理由ですべての街の立ち入りを拒否されていた。

 彼は自らの親代わりである龍に


「我々が生きる世界と人の世界では理が違う。もし人の世界で生きるのであれば、人としての理に従い生きなさい」


と言われていた。

 その為、生真面目なアレンは人から駄目と言われると親の教えを守る為、街に入る事を諦めた。

 ひとっ飛びで街の防壁を飛び越える事が出来たとしても、衛兵達を瞬殺してこっそり侵入する事が出来たとしても、アレンは街の中に入る訳にはいかなかった。

 そうして侵入を拒まれ続けた彼は山を越え平野を歩き回りフリードベルへと辿り着いた。先程の場面に至ったのだった。


「えっ、君は男なのか?」


衛兵が驚いた顔で尋ねるとアレンは頷く


「驚いた。まぁ良い、それで君はどうしてここに来たんだい?」

「僕はね、人の世界で生きたいと思って。僕は人間でしょう?だから何時までも山にいるより、人の世界で生きるべきかなって考えたんだ」


 独特の言い回しだが、ようは山にいるより町が良い。という意味だ。そこは正しく伝わり衛兵も納得した。


「それで、色んな街に行ったんだけど、皆街に入ったらダメだっていうんだよ。それでここに着いたんだ」

「なるほどな、それには事情があるんだ、前にお前が通った場所は、この前戦争で負けたんだ。だから人を受け入れる余裕が無かったんだ。でも、安心しろ!此処はお前も受け入れられるから。初めはとても苦労するだろうが、上手くやれば生きていけるから頑張るんだぞ」


衛兵に激励されてアレンは嬉しくなって頷く。


「うん、頑張るよ。ありがとうね」

「気にするな」

「ところで、お前は身分証を持ってるか?」

「無いけど、無いとまずいの?」


アレンは暗い声を出す。もし、突然やっぱ街に入ったらダメとか言われたらどうしよう。そんな不安がよぎる。しかし、衛兵はニッと笑う。


「いや、大丈夫さ。でも、他の街に行くなら絶対に必要になるから手に入れないとダメだ。仕事を始めたら貰えるから安心して良い」


それから暫く、衛兵と話している間に2人は門にたどり着いた。

 アレンは門で待っていた衛兵達に迎えられた。男達は笑顔でアレンが門の中に入るのを待っている。アレンは漸く入れた町に期待しながら大きく一歩を踏み出した。


「ようこそフリードベルへ!!」


 アレンの一歩を確認して衛兵達が歓迎の声を上げる。アレンは嬉しそうに笑い此処まで送ってくれた衛兵に礼を言う。


「ありがとう」

「いや、気にするな。苦労すると思うが頑張れよ」


 衛兵達はそう言って新たな難民を受け入れたのだった。そして、これから待つだろう厳しい難民生活に対して激励を送った。彼らは知らなかった。アレンが馬鹿みたいな力を持つ事を……この場所から始まる彼の英雄譚を。

 

 

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