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龍の子   作者: 選択肢が多すぎて辛い
1章 少女の目標
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Dialy

 私の人生は喜劇だ。

 これまでの不幸は本当の幸せをより深く味わう為のスパイスにすぎなかった。

 1時間ほど考えたけれど、この書き出しが一番ふさわしい気がする。日記帳を持つのは初めてで何を書けば良いのか分からないけれど、取り敢えず今日迄と今日の事を書こう。さっきも書いたけれど私の幸福は過去に引き立てられているから。

 私はジメジメした夏の1日に街のスラムに捨てられていた。

 詳しい事は教えてもらってないから知らないけれど、路地の入り口に布で包まれていたらしい。

 私を拾ってくれたのはリーナだった。私はリーナと一緒にスラムで生活した。リーナがどうしてスラムにいたのか、彼女の家族はどうしているのか、わたしは彼女の過去について殆ど知らない。

 私は小さな小屋で生活していた。其処が私の世界だった。薄い板で囲まれた優しい世界。ずっと彼処にいられたら、きっと凄く幸せだっただろう。

 リーナは週に2回くらい綺麗な服を着て外へ出かけていた。私は後で知ったのだけどリーナは昼に私はの面倒を見つつ2人の生活に必要なお金を稼ぐために体を売る仕事をしてたらしい。そんな生活、長く続く筈無かった。リーナは私が6歳になった時に病に伏せて死んでしまった。

 リーナは死ぬ寸前、私に手紙を渡した。

 私はリーナに託された手紙を持って冒険者ギルドに向かい、其処でソーニャと出会った。

 因みに、その時初めて私は拾われた子だと知った。ソーニャに渡した手紙に書いていたらしい。

 その時は感情の整理がつかず家に逃げ帰った。其処でリーナの死体を見つけて、その場で気を失った。


 今は違うけれど出会ったばかりのソーニャはとても、素っ気なくて怖い人だった。リーナが死んだのは私のせいだから複雑な気持ちになったんだと思う。

 それでも、私の冒険者登録を手伝ってくれた。

 仕事は酷く苦しかった。

 私に出来る事は少なくて、雇い主を怒らせてしまう事が何度もあった。動きが遅いと打たれたり蹴られたりした事も何度もある。給料も少なくて、ゴミを漁ったりして生活した。

 スラムに親がいない子は沢山いるけれど、基本的には孤児院に拾われる。拾われなかった子は死んでしまう。だから、私くらいの年齢で1人で働く子は周りにいなかった。殆どの子供たちは家族や友達と生活していた、周りの子供たちが羨ましくて、憎らしくて、話しかけられても強く当たってしまい、私は一層孤立した。

 この時の私はリーナすら憎らしくて仕方なかった。なぜ私を1人にしたのか、なぜ私を拾ったのか。そんな風に思っていた。

 毎日毎日、灰色の街を決まった通りに歩いて同じ道を通って帰る。汗水垂らして働いて、泣きながら家に帰りベッドに倒れ込む。

 お風呂に入るお金も、水を汲む体力も無くて体もどんどん汚れていった。泣いてばかりで顔も体もボロボロだった。

 10歳はスラムの女にとって選択の時だ。

 身体を売るか売らないか。世界には特殊な趣味の人が沢山いる。何をしても良い女と言うのは扱う店としても客としても便利な存在らしい。それでも、今の生活で少しずつ壊れていくぐらいなら、このまま灰色の世界で生きていくくらいなら、一度くらい綺麗な服を着てみたい。一度くらい美味しいものを食べてみたい。そう思った。

 だけれど、ソーニャに怒られて私は体を売る事をしなかった。


「どれだけ今が辛くても、前を見ていたら幸せになれる。私が支えるから」


強く頬を打たれた後に、そう言われた。

 頬がジンとなって凄く痛かった。

 叩かれて嬉しかったのはこの時くらいだ。その時からソーニャが私に向き合ってくれる様になった。今では凄く感謝している。

 勿論、後悔することは多かった。同い年の女の子がお化粧して可愛らしい服を着て遊んでいたり、美味しいものを食べていたり。そんなのを見てると心の底からドロドロとしたものが湧き、(おり)の様に心の中に溜まっていった。

 そうして12歳になって、私の人生にもう一つの転機が訪れた。私の大切なアレンとの出会いだ。

 

 今でもしっかりと覚えている。その日は事故でお仕事が長引き帰りが遅くなった。残り物のサンドイッチを食べてお家へ向かっていると、女の子が男2人に絡まれているのが見えた、

 女の子の服は私と同じくらいボロボロだっけれど髪の毛や顔立ち、身ギレイさでは女の子の方が優っていた。

 これは秘密だけれど、本当は女の子の事を見捨てようと思った。だって、助けて私が絡まれたら逃げられないし綺麗な顔立ちや見た目が羨ましかったから。でも、結局はそんなこと出来なかった。2.3歩いたところで胸が痛くなって結局、進めなくなった。

 でも、助けに出るのも怖くて少し立ち往生した。

 ただし、それは一瞬だった。

 気付いたら叫んでいた。真っ赤な嘘で役に立つかわからなかったけれど何もしないより幾分かマシだった。私はそうしてアレンに出会った。

 彼に出会ってからの1週間は凄く特別だった。

 出会って、喧嘩して、仲直りして、目標ができて、寂しくなって、無事を祈って、お出かけして、私の世界は今、とても綺麗だ。

 明日は今日読んだ本を返しにいって、明後日は狩りをする。リーナとの世界は私の力がなくて失った。今度こそ、失わないように頑張らなくちゃ!


 

 一通り描き終えた日記を閉じると、パタンと音がした。革表紙の綺麗な日記帳。真ん中の絵は互いの日記と合わせると東方の怪物、龍の絵になる。

 アレンが買ってくれた私の宝物。私は部屋の机を開き中に日記をしまう。明日は早くに起きて準備しなきゃいけない。綺麗な世界の未来はとても楽しみだ。


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