表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の子   作者: 選択肢が多すぎて辛い
1章 少女の目標
14/17

3匹のコカトリス

 翌日、目を覚ますと辺りは真っ暗だった。

 ロック達を踏まないようにテントを出ると、日が昇る少し前だったらしく、藍色の空が広がっている。

 特にやる事も無い。辺りを見渡す。働いている人たちはいない。いや、見張りの人達が門の所に立って眠そうに欠伸をしている。

 何も言わずに村を離れるわけにもいかず、村をぶらぶらと歩く。

 暫くして、森の方角に向けて歩く村長を発見する。そのまま消えていってしまいそうで、少し後ろを追いかけてみる。彼は警備の人が寝ているのに気付いて村の外に出る。

 そして、森に沿って歩いて沢山の石やら槍やらが並んでいる場所にひざまづいた。自分の手を握りしめて頭を垂れ涙を流す。

 かなり距離が離れているが彼の声を拾う事はできる。


「エリス、アロン、カムレ、ラオ、ライカ、セナ、ウルカ、マース……」


  多分、人の名前だ石に名前でも付けているのだろうか。変な趣味の持ち主だ。


「すまない、すまなかった。皆、そのうちに、私も行くから待っていてくれ……」


 漸く分かった、コレはお墓だ。父がよく言っていた。人は死んだものに拘ると。それが何故かはわからない。僕の父は、もうすぐ死ぬだろう。だから、僕を求めた。自分の意思を残す手段として。

 村長が顔をあげたタイミングを見計らって僕は村長に近づく。僕が横に行くと、村長は少し驚いたように僕をみた。けれど、すぐに前を向き直した。


「本当は、村に立ててやりたかった。遺体もほとんど見つかっていない。此処にあるのはコカトリスに挑んだ冒険者達が森で見つけてくれたものだ……ワシはそんな事すら自分で出来んのだ」

「もう直ぐできるようになるよ」

「此処にくる者達は、よくそう言う。だが、出来た者はおらん」

「僕は特別なんだ、父さんがよく言ってた」


 村長さんは寂しそうな顔をする。


「私の息子も孫も特別だったよ」

「どんな人だったの?」

「そうだねぇ、勇敢だったよ。2人とも村を愛していてね。コカトリスが来た時も一番に武器を取った。私が呼ぶと、いつも笑顔で来てくれてね。村長の証である剣を渡した時はとても喜んでくれた。

 孫には耳飾りをやったよ。私の妻のものだ。それを首飾りにして嬉しそうに持ち歩いていた。

 夏になると、よく釣りに出かけたよ。大きな魚が沢山釣れる。家族で集まって何かが釣れるたびに大はしゃぎした。

 孫は最近美人な妻を貰ってね、彼女には悪い事をした。もう直ぐ出産なんだ。なのに息子が死んじまって、ずっと家で泣いているよ。あれじゃあ体に悪い、心も不安定で吹いたら消えてしまいそうなくらいに儚いんだ」


 "なんだ、あるじゃんか"

 少し安心した。

 村長さんは未だ辛い顔で墓を眺めている。苦しいのかも知れない。だけど、そこには何ない。


「僕の話も聞いてもらって良い?」


声をかけると村長さんは頷いた。


「僕はね、家族がいないんだ。昔、父さんに拾われたんだよ。父さんはね、とっても強いんだよ。僕は結局一度も勝てなかった。

 でもそろそろ死んじゃうから自分の技を継ぐ存在が欲しかったんだって、それで川に流される僕を見つけて拾ったって言ってたよ。

 父さんは子供を育てた事がなくて、とても苦労したって言ってた。

 顔を合わせたら、いつも修行修行って煩くて仕方なかったけれど、僕が寝る時はいつも側で守ってくれてたんだ。

 それで、少し前にね。父さんは死ぬ前に知り合いに会ってくるって言って僕と別れたんだけど、その時に2つ僕に贈り物をしてくれたんだよ。そのうちの一つは言葉だった。コレがあるから僕は寂しく無いんだ。村長さんにも教えてあげるよ。

 『死んだら二度と会えなくなるのは間違えだ。私はお前の中にいるから、いつだって会える。お前の技の中にも、お前の考え方の中にも沢山私はいる。確かに私とお前は顔を合わせる事が無くなる。しかし精神的な繋がりは今まで以上に感じられる。それを忘れないで欲しい』」


そういうと、村長さんは顔を突然あげた。何かに気づいたみたいだ。


「最初は意味がわからなかったよ。でも、最近魔力を使ったり、人と話す度に父さんが僕の中にいることを実感するんだ。村長さんもそういう事があるでしょう?きっと村長さんの子供は、お墓にはいないよ。色んなところで、村長さんに話しかけてると思うよ。それに気づかないと勿体ないよ」


 村長さんは、俯いていた。少しだけ地面を濡らす。でも、さっき見たいな悲しさに溢れた背中はしていなかった。そして、すぐに顔を上げる。


「君は、確かに特別な子だな。そして素晴らしい言葉をありがとう。確かに、私の中に息子や孫はおる。あいつらに恥ずかしい姿を見せ続けるわけにはいかんな。私があいつらのいる村を妻を守らねばならん。

 だからコカトリスは頼むぞ」

「任せてよ!僕は父さんに勝てなくても、他の何にだって勝ってきたんだ!」


 僕が湿っぽい空気を払おうと大きな声で言うと、村長さんは僕の頭の上に手を置いて、撫でてくれた。とても嬉しい感覚だった。

 僕と村長は一緒に村に戻った。村長さんは村に戻ると、すぐに村の人達を集めて皆んなにコカトリスについて話すように言った。多くの情報が得られた。

 おかげで、すぐに動ける事になった。ロック達はすぐに武器を用意して森に入る準備を整えた。

 僕は宝物を取り出して、それに街の安全を願い元の場所にしまった。コレがあれば僕は絶対に負けない。


「アレン!気をつけてね!」


 シーナが後ろから手を振っている。だから僕も手を振り返した。シーナの横に村長さんが現れて、シーナの頭を撫でていた。そして、僕に頭を下げる。本当の意味はわからないけど、僕は絶対に大丈夫と親指を立ててニッコリ笑って森に入った。

 作戦は決まってる。コカトリスがいそうな場所を昼の間に虱潰しに回る。1匹でいれば、その場で奇襲をかけて複数いれば夜に襲う。

 

「こっちだよー」


 ロック達は森を歩くのには慣れてなかったみたいだ。あまり早いとは言えない。

 コレなら一人で偵察を終わらせたほうが良かったかも知れない。


「ちょっと待て、休憩しよう」

「賛成だ」

「そう、だな。アレックスも 遅れ始めている」


 ロック達がそんな事言って木の株や石に腰を下ろす。全く、もう。って感じだ。


「アレン、この先にコカトリスがある確率はどれくらいなんだ?」

「うーん30%?その奥にあるのが本命だよ。間違いなく1匹はいる」

「そうか」


ロックはそう言って汗を拭う。


「なら、行くか」

「「「おう!」」」


ロックの合図で全員立ち上がった。

 風下からゆっくりと近づいていく。そこには2体のコカトリスがいた。大きさは3m程度の成体だ。2体ともオスのようで睨み合っている。


「これは、どうする?」

「コカトリスは同種を殺さないからヒートアップしたタイミングで不意打ちするよ。元々、僕が2体倒す予定だったし丁度いいでしょう?」


 こんな機会滅多に無い。是非とも狩るべきだ。

僕の主張は受け入れられたので、取り敢えずは近くにある太めの枝を拾う。魔力を纏わせて相棒の作成完了だ。

 その間に、コカトリス達は胸を張って威嚇し合っている。泣き声はコケコッコーではなくギュエーーー!!!だ。2匹の大きさは殆ど変わらないので結局喧嘩になった。2匹はクチバシで何度も相手の頭を叩きにいく。クチバシには毒があるが、お互いに同じ毒を持つせいで効果は無い。

 凄いつつき合いだ。


ギギッギッギッギュエーー!!ギュエー!ギッギッギエー!!と騒音が鳴り響く。

ロック達は呆れた顔でコカトリスの喧嘩を見学していた。そして、1匹のコカトリスが、違う方の胸に力強い一撃を入れた。もう1匹は軽く吹き飛び威嚇するが、吹き飛ばした方は隙を逃さず追い討ちを仕掛ける。そして、ギュエーーー!!!と雄叫びを上げ首を振り下ろそうとした瞬間にゴーーン!!と木の棒で頭を叩きつけた。

 コカトリスの骨がバキバキに折れる感覚が手に伝わってくる。確実に殺した。

 結果を確認する事なく次に向かう、もう1匹はスグに魔法を発動しようとするが、それは僕相手に悪手だ。先に僕が魔法を使って対策していたのでコカトリスの魔法は発動が遅れ、その間に僕は一度地面に足をつけて飛び上がりコカトリスの首をへし折った。


 やはり不意打ちは大正義だ。いつもなら2匹もいると、クチバシやら鉤爪やら尻尾やらを避けて頭をどつく必要があるのに、今日は簡単に打ち込めた。持っていた棒を離すと魔法で無理やり形を留めていたので、バキバキに砕けちる。

 また愛棒を失ってしまった。


「いや、マジで?」

「つえぇ」


 ロックとアレスが驚いている。だから、コカトリスくらい勝てると言ったのに。そもそも、勝てないと思えば依頼を受けない。


「フッフッフ、だから言ったでしょ!アレンなら勝てるって。賭けは俺の勝ちですね!」


 アレックスが自慢気に笑う。


「アレンにも町で何か奢ってやるよ」

「ホント!」

「おう!欲しいもの決めときな!」

「うん、勿論だよ。期待してるね!」


 何を買ってもらおうか。やっぱり武器が欲しい。山には無かったから使わなかったが、あった方が便利だと思う。


「それより アレン どの部分を持って 帰るんだ? 討伐貢献度の 高い者から 欲しい物を 持っていくのが 冒険者の ルールだ。 俺達は お前が 残した物を 少し貰えたら 助かる」


 そんな事を言われても、何処を持って帰るのが良いのか分からない。

 アレックスが近寄ってきて色々教えてくれる。


「次に討伐に行くときは自分で情報を集めろよ。まず、コカトリスで値段がつくのは眼球だ。保存容器を貸してやるよ」


そう言って20cmくらいの液体が入った入れ物を2つくれる。


「此処に、目を入れるの?」

「そうだ。この2匹くらいのサイズなら魔法が使えるからな、コカトリスの魔眼というと好事家達にとって垂涎の品だ」

「魔眼って何?」


 アレックスは呆れたような顔をしたものの、しっかりと説明してくれる。

 コカトリスの眼は魔法を使えるようになると変質して宝石みたいになる。ソレを魔眼と呼ぶらしい。勿論眼球なので保存液に入れないとカピカピになって腐っていく。基本的にはインテリアとして使われるらしい。

 僕はポケットから出したナップサックに眼球を入れる。もう結構一杯になってしまった。

 次に小さな容器を2本渡される。


「これは俺も使うから半分しか貸してやらないが此処に毒を入れておけ。コカトリスの毒は薬にも使えるからな。爪に容器を押し当てればいい」


 言われた通りにすると透明な液体が容器に溜まっていった。この毒は強力だ。体に入ったら少しずつ動けなくなり、最後は内臓が麻痺して死んでしまう。時々、先っぽを尖らした木の棒になって投げつけていたので知っている。これが薬になるとはとても思えないが……


「ありがとう、アレックス」

「気にすんな」


ナップサックは殆ど一杯になってしまったが、少し余った空間があるので心臓2個と腿の肉を切り出して鞄に詰め込む。魔法を使ってゆっくりと凍らせる。こまめに凍らせれば暫くは持つ。 


「アレン、心臓なんてどうするんだ?」

「食べるんだよ?心臓を食べたら相手を取り込めるんだ。父さんが言ってた、強くなりたいなら倒した相手の心臓を食べなさいって」


 ロック達は不思議な顔で僕を見ていた。


「まぁ、良いか。次に行こう、次は俺たちが戦うから近くで見といてくれ」

「うん、頑張ってね」


 背中に眼球を背負ってると思うと、少しずつ嫌な感じがする、とは言え案内しないといけないので森を歩く。目的地は直ぐ近くにある2kmほど歩けば見えてくる。少し広がった場所だ。差があったので確実にいるだろう。もし居なかったら罠仕掛け放題だ。

 まぁ、居たわけだが……巣の近くで周りを警戒しながら卵を守っている。

 これは困った。子供を守っている生き物を殺すのは好きじゃない。子供が一人ぼっちになってしまうから。だからと言って卵を壊すのもダメだ。父さんに積極的に襲うなと止められている。

 まぁ、ロック達が勝てば問題はない。是非買って欲しいと思う。ロック達はゆっくりとコカトリスの後ろに回りこんだ。


○○○


 アレンの戦いは凄かった。確実にコカトリスの不意を突く技術、綺麗に魔力をコントロールして一撃で相手を仕留める技術。一度見たからと言って真似できるものではない。

 だが、俺達には俺達の作戦がある。それを見せてやろうと思う。何度か手伝いを提案されたが全て断った。あまり心配されないように戦わないといけない。俺は腰に下げた剣を握る。

 

「作戦はいつも通りのやつだ。さぁ、いくぞ!」


 小声で伝えると、アレス、カイル、アレックスが肯く。まずアレックスとカイルがコカトリスに突っ込む。アレンのようにギリギリまで気付かれない技術は俺達には無い。

 だから、大きな声を上げて少しでも相手を驚かせる。


「うおぉぉ!!!!」

「ギッ!?ギェーーーー!!!!」


 後ろに現れたアレスにコカトリスは驚いたものの直ぐに持ち直して威嚇を返してくる。距離があるのでコカトリスは尻尾をムチのようにしならせる。


「ムゥゥン!!」


 それをカイルがしっかりと受け止める。


「ギッ!?」

「オラァ!!」


アレスの槍がコカトリスの嘴とぶつかる。

ガァーン!と凄い音がした。アレスとコカトリスがお互いにのけぞる。


「此処だぁーー!!」


狙っていたタイミングだ。アレスの槍を防ぐ為にコカトリスの魔力は嘴に集中している。

 カイルが盾で尻尾を押さえて俺がそれを両断する。これで遠隔攻撃は魔法だけだ。


「ギュエエエエエ!!!」


コカトリスは尻尾を失い怒声をあげる。冷静さを失い、怒りに任せて魔法を使おうと、コカトリスの魔力は目に集中していく。そして視線の先の物が次々に浮き上がり俺達を襲う。


「念動力系だ。気を付けろ!!」


 大楯を持つカイルと槍を持つアレスは小回りが効かない。飛んでくる石を躱しきるのは不可能だ。

 しかし、俺達にはもう一人味方がいる。


ヒュッ!


 と俺の横を矢が抜けていきコカトリスの眼に突き刺さる。アレックスの現在位置はコカトリスから50m弓と矢の両方に魔力を込めた一撃だ。視界を軸にするコカトリスの魔法は失われる。


「ギュア!?」


 突然暗闇と痛みに襲われコカトリスは完全に混乱したようだ。


「いまだ!!畳みかけろ!」


 アレスと俺が連続でコカトリスを攻撃し、暴れるかカトリスが放つ攻撃を確実にカイルが受け止める。アレックスの矢も次々にコカトリスを穿つ、そして、コカトリスは羽がある事を思い出したのか空に飛び立とうとする。普通、鶏は空を飛ばないが魔力を持つコカトリスは違う。

 

「リーダー!!」


 アレスの声に頷いて俺は魔法を使う。俺の魔法は"接着"物や生物をくっ付ける事ができる。接着強度は使う魔力量によって異なる。今回、俺はコカトリスと地面をくっつけた。

 コカトリスは飛び立つ事が出来ずに羽をその場でパタパタさせるに伴う。勿論、その隙は見逃さない。俺は片方の翼を両断した。そもそも、俺の魔力ではコカトリスを長時間繋ぎ止めておくのは出来ないのだ。もし、コカトリスの頭が良く暫く地面で粘られていたら逃走を許したかもしれない。

 羽と尻尾を失ったコカトリスはバランスを失い、地面に倒れ伏せた。


「悪いな……」


 俺はコカトリスの首を跳ねる。討伐終了だ。そして、巣の上にあるコカトリスの卵を叩き割った。一件落着だ。


「おめでとー!」


  アレンが木の上からスタンと降りて、こっちにかけて来る。こっちは疲労困憊していると言うのに元気な奴だ。とは言え、彼の言葉で勝ったと言う実感が湧いて来る。

 コカトリスは強敵だ。本来ならもっと苦労する筈だった。そもそも、コカトリスの居場所を予想して不意を打つなんて普通は出来ないし考えない。森を歩いて偶然遭遇し、そのまま戦闘が普通だ。

 人によってはハンデ戦みたいな物で実力じゃないと言われるかも知れないが、それでも勝てたのは嬉しかった。心がすごく高揚する。

 

「ロックさん!俺たちも遂にドラゴンスレイヤーですよ!!」


アレックスが嬉しそうに笑う。ドラゴンというには鳥に近いが確かにコカトリスは亜竜種だ。アレスとカイルもドラゴンスレイヤーと満ち足りた顔で小さく呟いた。


「さっ、素材の回収だ」


オレ達は今回目を潰してしまったので眼球はとれない。その代わり少し残っていたガラス容器に全員が爪の毒を採取した。アレンが倒した個体からも毒を取らせて貰ったのでコレで容器は一杯だ。肉は持って帰れないので代わりにコカトリスの尾羽を一人一本ずつ引き抜いた。


「コレは記念にしてみんなで持っていよう」


全員が頷く。きっと今日の事は最高の思い出になる。そんな予感がした。


「じゃっ、戻るか!」


こうして、オレ達は村に凱旋した。


○○○


 僕達が村に帰ると、一番に気付いた子供達がはしゃいで村長達に知らせに行く。

 

「にいちゃん達が帰ってきたよ!!」


それを聞いて村の人達が集まってくる。皆が、驚いた顔で少し面白い。アレックスは嬉しそうに手を振っている。僕も真似して大きく手を振ると歓声がなった。ロックやアレス、カイルもやれやれと言った感じで手を振っていた。

 少し気恥ずかしいけど悪い気はしない。

 村に入ると村長が嬉しそうに向かってきた。その横をシーナが走り抜けて凄い勢いで抱きついてきた。ぺたぺたと僕の顔を触る。


「僕、血がついてるから汚いよ?」


そういうと、シーナは可笑しそうに笑う。


「そんな事、気にしなくていいのに。怪我してないの?」

「勿論してないよ」


 シーナが心配そうに僕を見る。その間に村長さんが僕達のところに来た。


「ねっ、すぐに戻れるって言ったでしょう?」

「そうだね、君は本当に特別だよ。改めて、皆さんこの村を救ってくれてありがとう」

「いえ、皆さんのお陰で随分と楽になりました」

「それでは、我々は街に戻ります」


 村長さんは肯く。冒険者は依頼が終わればすぐに帰るのが規則らしい。理由は色々あるそうだ。

 シーナが驚いたように僕を見る。


「もう帰っちゃうの?」

「うん、此処にいたのは、少ない間だったけれど僕は此処に来れて良かったよ。また、いつか会おうね」


 シーナが泣きそうな顔になる。そんなシーナの頭を村長が撫でた。


「私たちの村は今日まで、ずっと過去にとらわれてきました。ですが、コレからは少しずつ前を見て生きられるでしょう。シーナ達のような両親を亡くした子達は我々、村民が全員で面倒を見ていこうと思います。次に貴方達が近くを通った時には、是非顔を出してください。素晴らしい村になっています」

「うん、きっと来るね」


 僕たちの所に、村で待っていた馬車がやってきた。僕たちはすぐに乗り込む。

 長くいると、村長やシーナと別れるのが今よりも悲しい物になる気がしたから。

 僕がタラップに足をかけるとシーナが駆け寄ってきて、僕にキスしてくれる。とても嬉しいけれど、みんなが見ていてすごく恥ずかしい。


「アレン、またね。貴方のことが大好きよ」


シーナはそう言って僕を馬車に押し込んだ。

思わず呆然としてしまう。僕が乗り込んだのを確認して馬車が動き出した。

 ガタガタと、音を立てて馬車が揺れ始める。ロック達がニヤニヤと僕を見ている。


「「「ありがとうございましたーー!!」」」


村から大きな声が聞こえた。

 僕たちは窓から大きく手を振った。








 











 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ