前日
「あぁ、つかれたぁ」
アレンは思いっきり、ため息を吐く。
アレックスとの模擬戦が終わり、馬車に戻ったアレンは質問ぜめになった。何処で修行したのかとか
どんな攻撃が出来るのかとか。
でも、お陰でロック達とはそれなりに仲良くなれたと思う。
馬車から出ると視界いっぱいにテントと人だがいた。大人達は木で防壁を作ろうと忙しなく動いており、アレンぐらいの子供達は家事を、より小さい子達は遊んでいた。子供達は馬車を見つけると楽しそうに駆け寄ってくる。
「馬車だぁ!」
「ねぇ、何しに来たの?」
「ご飯持ってきてくれたの?」
「えっ、えぇっと」
突然、子供に囲まれた。どうすれば良いのか分からない。自分より子供の相手は初めてだ。どう対応すれば良いのか分からない。
「俺たちは悪い敵を倒しにきたんだ。だから、村長さんを呼んでくれないか?」
「わかったー!!」
アレックスが横に来て子供達にそう言うと、子供達はすぐに一番大きなテントに向けて走っていく。ロック達はその後を追う様に歩き出した。
「さっ、行こうか」
僕もそれに倣う。
○○○
「ようこそ、来てくださいました。私が村長のボーンです」
そう名乗ったのは、かなり歳をとった皺皺の男だった。すごく、哀愁が漂っており情けなく思える。
「我々はコカトリス討伐の依頼を受けてきた冒険者です。少しでも情報があればと思い尋ねさせていただきました」
「そうですか、情報はご自由に集めて頂いて構いません」
「助かります。ところで、貴方はコカトリスを目撃されましたか?」
ロックが代表として村長に尋ねると、村長は顔を悍しく歪めた後にすぐ無気力なものへと戻る。
「申し訳ありません。私は見ていないのです。息子と孫が命をかけて戦う中、私は武器を取ることもできず、村の者達とここまで逃げました」
村長は情けなく微笑む。
とても辛い話だ。多分、村長は戦うことも出来なかっただろう。守りたい人に守られて、犠牲にして生き延びるなんて、村長にとっては最悪だろう。
「生き残った数少ない男達は今、村の警備をしています。どうぞ、彼らに尋ねてください」
なんて声をかけたら良いのか分からずに、僕はテントを出る。ロックさん達は『絶対コカトリスを倒してきます』とか言っているけれど、何となくソレは違う気がした。ずっと此処を守れる方法があるなら良いけれど、そんな物は無い。
辺りを見ていると皆、少し悲しそうな顔をしていた。ガンさんとか服屋の親子はもっと楽しそうに働いていた。きっと皆大切な人を亡くしたのだと思う。
「待たせたな。取り敢えず情報を集めるか」
ロック達が村長さんの家から出てきた。
そして、村の周りにいる男の人たちに話しかける。
でも、村の人達はあまり乗り気じゃ無い。何というか言っていることも皆バラバラだ。
その事を伝えても、そうかも知れない。とか、あぁそうだったな。とか適当な相槌を打つだけだった。
「村の人達はコカトリスを倒したく無いのかな?」
「いや、そうじゃない。協力的じゃない理由は多分2つあるが分かるか?」
分からない。から首を横に振る。
「多分だけど思い出したくないんだ。コカトリスの事を思い出すと、失った大切な人やコカトリスの怖さを思い出すから」
アレックスが答えるとロックが頷く。
「もう一つは?」
「分かりません」
即答だった。代わりにアレスが答えてくれる。
「俺たちに期待していないんだ。この依頼は2月ほど前からギルドにあった。そして4つのパーティーが依頼を受け全員が失敗している。しかも2パーティーは全滅。期待して失望するくらいなら初めから期待したく無いんだろうな」
「じゃあ、皆が僕たちに期待してくれれば良いの?」
「そういう事だ。小さな村は村民同士の結びつきが強いから1人でも俺たちを信じてくれる人がいれば話しはグッと進むだろう」
なるほど、と思うけれど人に信用してもらうって凄く難しい。
「信用を得るのに最もいい手段はコカトリスを一体でも討伐する事だ。一体でもたおせば、彼らは俺達に期待するだろう。もしくは村の手伝いをして地道に信頼を得るか、だ」
「どっちにしても、森の形は把握しておくべきだよね。作戦が立てやすくなるし、もし都合の良い場所にいたら殺して来るよ」
僕の提案にアレックスが頷いてくれる。
「大丈夫なのか?」
ロックさんとアレス、カイルは心配そうだ。
コカトリスと遭遇しても1人で行けば確実に無傷で戻ってこれる自信がある。
方針が決まればすぐに行動する。森の中は凄く落ち着く。とりあえず森全体を見渡せる場所を目指す。取り敢えず、地形を把握するためだ。
森を歩けば色々な事がわかる。何処がどんな動物の
縄張りが。何を食べているか。どうでも良い様に思えるけれど大切な情報だ、
"となると1番良い所だね、コカトリスがいるのは。目的は産卵かな……すぐに動かなきゃ"
適切な知識と合わせれば、こういう事が分かるから。
"あと、後ろも早く何とかしないと"
さっきから、厳密には森に入った頃からだ。誰かが後ろをついて来ている。感覚的には強いと思えない。魔力の量はノーラやニコと同じで殆ど無いと考えて間違い無いだろう。
ほっといたら消えると思ったのだが、全然村に帰る様子もなく森のそれなりに深い所まで連れてきてしまった。今、森はコカトリスが侵入して事で荒れている。それに産卵期に備えてかなりの獲物を狩っただろうから本来、そこまで凶暴でない生き物も人を襲いかねない。
「はぁ、めんどくさい」
暫く進んで、突然振り向き追跡者の方に向けて歩く。誰かさんが隠れている木はあまり太いものでなく、近くには他の物も無いので、近づいてくるアレンから逃げるために移動しようにも動けず息を殺している。
○○○
村娘のシーナは先程まで自分に迫っていた少女の気配が突然消えた事に気付く。恐る恐る木の横から顔を覗かせると少女の姿は本当に消えていた。
「あれ?……」
辺りは高い木に囲まれている。見渡すと誰の影もない。追いかけるのに夢中で森のかなり深くまで来ていたらしい。突然、不安に襲われる。
ザワザワと木が擦れる音や風が吹く音が酷く大きく聞こえて不安を煽る。パキッ!と木が折れる音がする。思わずビクッとする。どうやら、木の枝を踏みつけただけだった。
ガサガサと再び葉が擦れる音がする。
"風の音だよね。どうしよう、帰り道が分からない"
一人で歩く森は慣れていない人にとって酷く不安を煽る。
ザワザワ、ゴウゴウ、ガサガサと自然が立てる音は泣き声のように大きく響く。まるで魔物に囲まれているようだ。
"どうしよう、パパ、ママ"
大切だった二人が頭をよぎる。
だが。誰も助けてはくれない、そもそも二人は……
"ダメだシャンとしないと"
「林檎と梨が咲き誇る
川面を霧が覆ってる
私は河岸に歩み出す
高く険しい河岸に……」
ガサっガサガサ……と一際大きな音がする。
思わず振り返ると6匹の狼がいた。
狼達はよだれを垂らしながら私を取り囲むように動き出す。
その飢えた目の一つ一つ、よだれの滴る牙の一つ一つが明確な死をイメージさせる。
「ヒィっ」
思わず腰を抜かしてしまう。辺りを弄り、手元にあった木の棒を拾い狼に向ける。
人を倒すのには充分だが、前にいる狼の牙と比べると、とても頼りなく思える。
狼がジリジリと距離を詰めて来る。必死で後ろに下がるがすぐに木にぶつかった。
"私はココで死ぬ訳にはいかない。いや、そうだろうか、死んでも良いかも知れない。もうパパもママもいない。死んだら会えるかも知れない"
そんな風に思うけれど私の手は木の棒を離さない。
狼達は私を嬲る様にジワジワと距離を詰める。
そしてカプッと木にかぶりついた。引っ張り合いになる。私は最後の武器に縋り付くが簡単に奪われてしまった。
「あっ!?」
酷く頼りない声、そして私。それを取り囲む野獣達
私は何をしてるのだろう。父さんと母さんの仇を取りたくて村に来た冒険者を追いかけた。結果見失って私が狼に殺されかけている。そして、自殺者紛いの事をして死にたくないと思っている。全くのクソだ。
情けない、情けない、情けない。
力がない事が、一人で何も出来ない事が、覚悟も持たない事が、情けなくて仕方がない。
狼の牙が迫る。怖くて目を閉じてしまう。歯を食いしばる。
「ギャン!?」
「バウバウ!!」
「グルルルル」
「ぎゃん!!」
「バウ!!」
「ギャンギャン!!!」
私が噛まれる事は無かった。音の嵐が襲ってきて、すぐに落ち着いた。目を開くと消えた筈の少女が現れて狼が3つの死体を残して消えていた。
「少しは懲りたかな?」
少し怒った顔の少女、相手は怒っていると言うのに、とても安心した。味方だと確信できたから。
緊張が解れて、遅れて涙が出て来る。
「あれ?やりすぎた?」
少女は恐る恐る近づいて来る。そして、私と目線を合わせる。
「あの、ごめんね?大丈夫だった?」
「怖かったよぉ〜、うぅっ」
私は、人から離れたくなくて少女に抱きついた。冒険者らしく芯がしっかりしていてブレる事なく私を受け止める。身体も鍛えられていて、ぶつかった私の方が痛い。
突然抱きつかれた少女は困惑した様子で少し考えたあと、手を私の背中に回して背中でトントンとリズムを取る。
「大丈夫、大丈夫」
凄く暖かい、冷え切った2ヶ月間。それより少し前は当たり前だった感覚。冷めた心まで、ゆっくりと溶け出して私は我慢できずに、森の真ん中だと言うことも忘れて、そのまま顔を埋めて大声で泣いた。長い間、泣き続けた。その間、少女は嫌な顔一つせず私を受け止めてくれていた。
「落ち着いた?ごめんね、森が危ない事を分かってもらおうと思って」
「うっ、うん」
顔を上げると少女は少し申し訳なさそうに謝ってくる。少し落ち着いたら気づいた事がある。私、メッチャ恥ずかしい。初対面の同い年ぐらいの子に抱きついて大泣きした上、慰められるなんて……何というか凄くいたたまれない。
「これからどうしよう?」
「此処から、一人で帰ってもらう訳にも行かないし。もう少しだけついて来て貰っても良いかな。疲れてるだろうし村まで送ろうか?」
「ううん、ママと一緒に行く」
つい、意味不明な事を言ってしまう。ずっと抱きついていたから、つい口が滑った。
「えっ、ママ?」
「違うのよ、つい口が滑って。貴方が老けてるとかじゃなくて、間違っただけだから、ごめんね」
大慌てでまくし立てる。
「いや、そうじゃなくて間違うにしてもパパじゃない?」
「ヘ?」
「ん?」
" まさか……まさか?確かに、言われてみれば分からないこともない。体が固かった理由も説明がつく。え、じゃあ私って男の子に抱きついたの?え?"
一つの仮説が私の頭を掻き回す。
「もしかして、貴方……」
「僕はアレン宜しくね」
ムスッとした顔でやたら僕はを強調して名乗ってくる。思わず叫びたくなる。恥ずかしさが2倍になった。近くに顔を突っ込めるサイズのウロでも無いだろうか。
「それで、君の名前は?」
「し、シーナ」
「宜しくシーナ。それで、本当に付き合ってくれるの?」
『付き合って』な部分がすごく特別な意味に感じる。もちろん、ソレが私だけっていう事が分かるから更に顔が熱くなる。
「う、うん。早く行きましょう」
顔を見られたくなくて、そそくさと歩き出す。
アレンも私を見ると歩き出した。彼は歩くのが早くてすぐに追い抜かれた。遅れたくなくて急ぎ足で追いつき横に並ぶ。
アレンはそれに気付いてペースを合わせて歩いてくれる。1分ほどで沈黙が苦しくなる。チラッとアレンの顔を伺うと平然と歩いている。
なんだか、私だけが緊張してるみたいで少し腹が立つ。やせ我慢して沈黙を保つ事にする。
「ねぇ、どこに向かうの?」
2分も持たなかった。黙ってたら変な考えばかり頭をよぎるから。騙されてイライラしてるだけに決まってる、特別な感情なんて有るはずがない。あったとしても吊り橋効果だ。その筈だ。いや、確かに近くにいると凄く安心するけど……それは離れるのが危ないだけで……
「もう少し歩いたところだよ。この森の一番高い木があるんだ」
「どうして、そんなところに行くの?」
「森の形を覚える為だよ」
「疲れたでしょ?少し休憩しよう」
アレンはそう言って動きを止める。
「そこに座って」
アレンが指さしたのは小さな石だ。
さっきから気を回してくれる、凄く優しくて良い人だ……じゃない!!これくらい当然!当然よ!!パパもいっつも気を回してくれたし。
「えっと、私は大丈夫よ」
「我慢しない方がいいよ。足が真っ赤になってる。木の靴は森に向いてないからね」
言われて自分の足を見ると、本当に自分の足は真っ赤になっていた。気付いたら痛くなってきた。
靴を脱ぐと足の皮がむけて血が出ていた。
近くの葉っぱを弄っているアレンの足を見れば裸足だった。そこら中に石とかトゲのある葉っぱが落ちているが傷一つついていない。
「あった!」
アレンはよく分からない葉っぱを何枚か手に持っていた。そして鞄から木製の水筒を取り出す。
「いいでしょう、コレはアレスさんがくれたんだぁ。水を貯めて置けるんだよ!」
どう見ても普通の水筒に見える。大体、アレスって誰だ?何か特別な物なのかと思いじっと見るが、どう見ても普通の水筒だった。
「いやぁ、スイトウって便利だよねぇ」
そんな事言いながらアレンはシーナの足を持ち上げる。
「ひゃっ!?」
「あいた!?」
驚いて足を伸ばしてしまい、アレンの顎を蹴り上げてしまった。
「あっ、ごめんなさい!!」
「うぅ、良いよ。次から声をかけるから」
そう言う涙目のアレンは手をピンと伸ばして
「足を触りまーす!!」
と、まだ無言の方がマシな宣言とともに足を持ち上げて血が滲む足に草を貼り付けた。
「コレはねぇ、つけると痛いのが無くなるんだよ。何度か叩いて水で濡らしたらフニャッてなるから貼り付けておくと良いよ」
そう言って長い葉っぱを私の足に巻き付けてくれる。汚いし、傷だらけだし、ずっと靴を履いてたから匂いも心配だし、出来れば触られたくないし、見られたくない。でも優しく傷の処置をしてもらえて何故か少し嬉しい私がいる。
頭が変になりそうだ。
相変わらずアレンは何も感じて無さそうだけど。
「私の足、どうかな?」
「うん、大丈夫。すぐに良くなるよ。昔、父さんに教えて貰っ時もすぐに良くなったからね」
そう言って私の足を離す。
はっきり言わなかった私が悪いけれど望んでいた答えでは無い。
「今日はあんまり歩かない方が良いね、背負うから捕まって」
そう言って、背中を向けられる。
「えっ、良いよ、歩ける!!」
反射的にそう答えて石から立ち上がると、足がズキッと痛んで立てなかった。そして倒れた先にはアレンの背中があった。
ドヤ顔で私を見てる。ね、言ったでしょ?と訴えかけてきていた。少し恥ずかしさが紛れた気がする。
「じゃあ、行こっか」
アレンの背中はすごく安心する。こうしてると、昔パパに背負ってもらった事を思い出す。もっと小さい時の事だ。凄くはしゃいでパパを困らせた。
「ねぇ、重くない?」
「うん?全然大丈夫だよ」
"大丈夫ってどっち?重いけど大丈夫なの?重くないの?"
凄く不安だ。重いとは思われたくない。
「着いたよ!しっかり捕まってね」
前には大きな木がある。幹が太くて神聖な感じがする。森にこんな場所があった事知らなかった。私が木を見上げていると、アレンは凄い勢いで上に飛んで枝の上に着地した。
「っっ」
思わず、息を飲む。枝の上に着いたアレンは猿みたいにスルスルと木を登って行く。サル見たいというか、完全に猿と同じ動きの気がする。尻尾があればどっちが猿かわからないかも知れない。
あっという間に頂上についた。私は枝の上に座らせられる。細い木なのに全く動かない。地面の上みたいな安定感だ。
「凄い」
木の上から見える景色は圧巻だ。
空はすごく広いところまで繋がっていて、緑一色だと思っていた樹はとてもカラフルで村も、それより遠くの街もその奥の海も見る事ができる。
よく、世界は広いって言うけれどソレを実感した。
ふとアレンをみると、真剣な顔で森を見ていた。
アレンの横顔と木の上の景色どっちも飽きる事なく見てられる気がする。
暫く経ってアレンは納得したのか、こっちを見た。タイミング悪くアレンを盗み見ていた私と目が合う。
「えっえっと違うの」
「何が?」
「えっいや。そのなんでも無いよ?」
焦りまくって声が高くなる。アレンは少し首を傾げていた。
「そろそろ降りよっか」
下を見るとすごく不安になった。とても高い。
「ごめんね」
アレンは私を抱き上げる。
昔、絵本で見た騎士がお姫様を抱っこする時と同じ格好だ。密かに憧れていた抱き方だ。こんな形で憧れが実現すると思わなかった。思っていたよりアレンの顔が近くにある。
「しっかり捕まっていてね」
「えっ?っっ!?」
アレンは木から飛び降りた。トントンっと枝から枝に渡り最後に凄い浮遊感に襲われて思わてギュッとアレンの首にしがみつく。
アレンはダンッと音を立てて地面に着地した。上を見上げると先程までいたところが、とても高くに見える。現実感がない。死後の世界にいるみたいにフワフワする。
アレンに地面へ下ろされると思わず大地にキスしたくなった。
「じゃあ戻ろうか」
「うん」
私はまたアレンの背中にしがみ付く。慣れとは恐ろしいもので殆ど抵抗なくアレンの背中にしがみついた事に、しがみついてから気付いた。
村の近くにたどり着くと、姿を消した私を探していた人達に出会った。みんなに悪い事をしてしまった。
とても申し訳ない気持ちになる。
村に入ると皆が私を見ている。
"どうしたんだろう"
「シーナちゃんにも春が来たんだねぇ」
村が健在だった時、横に住んでいたオバちゃんが、そんな風に言ってくる。そう言われて、私は男の子におんぶされて村を歩いている事に気付いた。
すぐに顔が熱くなる。顔を隠すこともできないので、取り敢えず顔をアレンに固定する。コレはコレで恥ずかしいけど皆に見られてるのを認識するよりマシだ。でも、やっぱり恥ずかしい。
「おろしてぇ」
殆ど声にならないような声で、お願いするがアレンは『足を怪我してるからだめだよ』
と言って、そのまま私のテントに向けて進んでいく。子供たちが、デートだー!シーナ姉ちゃんがデートしてるーとか、村の大人の人たちが、「あらまぁ」とか言ってるのが聞こえる。
"もぅ、恥ずかしくて死にそう"
私がまんざらでも無い事がわかっているのだろう。村の人は誰も私を引き取ってくれない。
心配してくれていた警備隊の隊長もアレンの背中に背負われた私には突っ込まず、そのまま説教をしてくる程だ。凄くシュールだと思う。
結局、私はテントの前までアレンに背負われたままだった。
「じゃあ、シーナ今日はしっかり休まないとダメだよ。薬草は寝る前に剥がしたら良いからね」
「う、うん。ありがと」
本当はもっと、しっかり御礼を言いたかったけど恥ずかしさのあまり、私はそのままテントに引っ込んでしまった。
○○○
既に夕方だった。今からコカトリスを見つけて狩をするのは無理だろうな。
シーナと別れてテントの前でそんな事を考えているとロック達がニヤニヤしながら近づいてきた。
「やるじゃねぇかアレン。あんなに可愛い女の子を落とすなんて」
アレスがそんな事を言ってくる。
とりあえず、アレスは放置してロックに謝罪する。
「ごめんなさい、遅くなりました。取り敢えず、森の形は覚えたよ。コカトリスが居そうな場所も見当がついたから、今日のうちに何箇所か見て回る?」
「いや、大丈夫だ。女の子を連れ帰ってきてくれただろう。充分村人の信頼は得ることが出来ると思う。今日は一旦休んで明日もう一回情報を集める。コカトリス討伐は明日でいいな」
「勿論」
ロックたちが前もってテントを一つ借りてくれていたようでアレン達は全員そこで眠りについた。




