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龍の子   作者: 選択肢が多すぎて辛い
1章 少女の目標
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アレンの新生活

 朝起きて、リビングにある備え付けのソファーに座っているとノーラが部屋から出てきた。

 手首まである長袖のシャツと踝まである長ズボン。まぁ普通の仕事着だ。

 "うん、何で?"

(アレンの行動原理は良くも悪くも野性的だ。ライオンとかを思い出して欲しい。肉食動物はお腹が減るから狩りをするのだ。普段は割とぐうたらしてる。いや、多分ぐうたらしていたい生き物なのだ。動物園のライオンとか殆ど置物になっている時点できっとそうなのだ)

 なので、アレンは分からなかった。なぜ、ノーラが仕事着なのかが。貨幣の機能には財を保存する。という機能がある。つまり貨幣社会では昨日とった肉は腐ってるから食べれませーん。が無いのだ。昨日とった肉は金に変えて明日使えるのだ。だからアレンはサボる。"だってまだ、金があるんだもん!!働かなくても食べれるもん!"という事だ。

 で、一方のノーラは違う。雀の涙ほどの収入を毎日切り詰めて年中無休で働いて生きてきた。結果、"働く=生きる"の公式が作成された。純正のワーカーホリックだ。彼女の思考回路は働く必要がある。では無い、働くしか無いに変化したのだ。しかも、昨日は服を買ったり家を借りたりしていた。働けと頭の中の神が彼女に訴えていた。完全に悪神ではあるが。


「えっと、ノーラもしかして働くの?」

「えぇ勿論よ……そして、私はじゃなくて私達は、だと思うわ」


 思わず"うわぁ"となる?心底理解不能な思考回路だ


「なんで?」

「なんでって、なにが?」

「なんで働くの?」

「働く事に理由があるの?」


 なぜ、息をするの?と聞かれたかの様に返してくるノーラを見ていると、凄く悲しいものを見た気がして泣きたくなった。 


「昨日、此処にきたばかりだし。お金に余裕があるから今日は少し周りを見て回らない?」

「ダメよ。だって昨日も働いてないわ。もう働くしか無いのよ!!」


 意味不明だ。なぜ働くしかないのか分からない。

もっと色々とある気がする。


「でも……」

「いい、アレンは人の社会について知りたいと言ってたよね」


ノーラが凄く真面目な顔で語りかける。


「うん」

「人はね働く為に生きてるのよ。だから社会とは働く事なのよ。生きる目的は働いてお金稼ぐ事なのよ。つまり社会を経験したいアレンは働くしか無いのよ

「そんな……馬鹿な…………」


 まるで、この世の心理を悟った様な顔で、言われても正直困る。


「でも、あれだよ?まだ、お金あるよ。だから働かなくても生きられるよ?お金があればご飯を何日も持っていられるよ?」


 アレンは自分なりの金の解釈を説こうとするが、残念な事に貨幣社会ではノーラに一日の長がある。


「そうね、でも考えて。お金は保存できるの。だから、沢山貯められるのよ?もし風邪をひいちゃったりしたら、お金が無いと大変でしょ?それに、アレンがお爺ちゃんなって働かなくなった時はどうするの?だから働かなくちゃダメよ」


 そうかも知れない。全く働きたくないけれど働かなければならないなら、働くしかない。


「分かった、僕も働くよ」

「良かった。私はアレンと同じ仕事が出来ないから先に行くね。お仕事頑張って!」


  ノーラはそう言ってギルドの方へ消えていった。


○○○

 

 結局、ギルドへ来た。一昨日と異なり大人の冒険者達が沢山いる。強そうな人はいない。かろうじで相手になりそうな人が数人いるくらいだ。今日は一応昨日買った服を着てきた。

"確かに、何もされないけれど少し目立ってる……"

 理由は分からないけど多くの視線を感じる。とにかく無視する事にして、依頼板を見ると色々な依頼がある。商人の護衛や魔物退治、探し物に危険地帯の調査、剣術、魔力コントロールの指南など、アレンが受けられるのはランク無制限と書かれた依頼のみだ。

 護衛と教師系以外の仕事は基本的に受ける事が出来そうだ。ただ、どの依頼も報酬の割に簡単過ぎる気がする。思わず首を傾げてしまう程に。


(一応言っておくが、報酬額は間違っていない。アレンが、ギルドが想定している以上の力を持っている事で違和感を勝手に感じているだけだ。

 1+1が出来たら10万円と書かれた看板があったとしよう。誰が信じるのだろうか。討伐依頼や探し物、危険地帯の調査はアレンにとって簡単すぎた。故にアレンはそれらを信用できなかったのだ)


 とりあえずは一番報酬が妥当な依頼を選ぶ。報酬と敵の強さを考えると、多少は納得のいく額だ。


「すいません、コレ受けたいです」

「ダメです」

「えっなんで?」


 速攻断られた。受付の人がアホな子を見る目で見てくる。


「あのねぇ、誰が子供にコカトリスを討伐させるんですか?自殺する人がいたら止めるでしょう?それが子供なら尚更です!」

「誰が自殺するの?」

「オメェだよ!」


 受付の女性が凄い勢いだツッコんでくる。コカトリスを一体何だと思っているのか。

 偶然、受付も同じ事を思っていた。意図は真逆であるが。


「なんで僕が自殺するの?」

「コカトリスよ?コカトリス。辺り一帯を毒の沼に変えて果てには魔法を使う事すらある魔物よ。視線一つで相手を石に変える魔法を使い、石の村を作り上げた伝説のコカトリスとかの話は聞いた事ないの?」


 うん、聞いたことない。でも見た物を石にするコカトリスなら殺したことはある。


「聞いた事ないけど、大丈夫!」

「じゃないから」


 後ろで会話を聞いていた冒険者の何人かが立ち上がる。半数は、ニヤニヤしながら、もう半数は真剣な顔で。そして、助け舟を出してくれた。


「良いじゃねぇか、受けさせてやれよ」

「良いんじゃないか受けさせてやれば」


 おお!味方が2人増えた。


「ロックさん貴方まで何を言ってるんですか?」


 受付嬢が強い方の冒険者を呼ぶ。ロックと言うらしい。


「この子、かなり強いよ」

「当たり前だぁ、コイツァ一昨日、魔力を扱える子供って話題になったガキだかんな」

「でも、この子武器も持ってないんですよ?」

「お前、なんの武器使うんだ」

「拳?」


使用頻度が一番多いのは間違いない。


「「「……………」」」

「やっぱり無理ですよ」

「なぜに!?」

暫くの沈黙の後、受付の女性が呟いた。

(魔力を武器に纏わせる。優秀な冒険者達はそうして戦う。人の体は魔獣の体より弱い。それが常識だからだ。この世界で自らの体を武器と化す格闘術は途絶えて久しいものとなっていた。拳を武器と認めるのは、子供の喧嘩ぐらいだ)


 何にしても拳で信用してもらえないなら他の武器を見せる必要がある。で、2番目に使用頻度が多いのは魔法か木の棒だ。木の棒は持ってないので魔法でいいと思う。


「じゃ、じゃあ魔法なら良いかな?」


 取り敢えず、受付の人が飲んでるジュースを少し凍らせる。一応、飲める様に配慮しておいた。


「おぉ!?」

「嘘でしょ?」


横の弱い人と受付の人が驚いている。ロックさんは

「 なっ、言っただろ?」と言いたげな顔をしてるので今回のアピールは成功したと思う。

 受付の女性は冷たいジュースを飲んで確かめ。

 野次馬の人達はビール飲む時に欲しい能力だとか言っている。ビールは凍らせると美味しいのかも知れない。それは、ともかく受付の人は依頼板を預かってくれた。つまり、受注成功だ。


「…………わかりました。依頼の受注を認めます。内容はアーロ村を荒らしたコカトリスの討伐となります。よろしくお願いしますね」

「はい!!」


 受ける依頼が決まったらすぐ行動するべきだ。そう思って門へと向かう。が、その前に

「アーロ村ってどこにありますか?」


よく考えると、場所がわからなかった。


○○○


 村を出る時、アレンはアレン一行となっていた。

 受付嬢は道が分からないなら『他の人と言ってください』と言い出して、ロックさんと行く事になった。

 ロック達のパーティーは4人組だった。

 リーダーのロック武器は剣。顔がカッコよくて優しい。

 副リーダーのアレス武器は槍、なんかテンションが高くて馬鹿っぽい。

 3番目の人カイル武器は大きい盾、体も大きくて分厚い。

 4番目の人アレックス武器は弓矢、腕と胸以外が痩せてる。服装がロックと同じ。

 自己紹介の内容を纏めるとこんな感じだった。


「それで、移動手段はどうする?」


 ロックが尋ねてくる。村までの距離は約45km山迄の2倍の距離らしい。つまり余裕だ。


「走りまーす!!」

「よし、移動はどうする?」


 残念ながら僕の意見は通らなかった。意味がわからない。歩いたら1日以上かかってしまう。


「うーん馬車でいいんじゃね?」

「そうだな」

「ですね」


 副リーダーのアレスが提案し、カイルとアレックスが了承した。馬車なら見た事がある。たぶん、ジョギングくらいのペースで走る馬の筈だ。確かに一度乗ってみたかったし、此処は空気を読んで頷いておいた。

 




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