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才能無し、才能を憎む~何なら俺以下いない~  作者: 翡翠果実
動乱の種が爆ぜる時、空の導は地に落ち、無尽の石棺は消える。
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現状確認とこれから

 食事中は特に会話も無く、静かに終わった。プロコーピーはその間、フレニアのそばに控えており、何かを食べる様子はなかった。肝心の食事はといえば、穀焼きと言われた、ホットケーキのようなものは、見た目通りホットケーキのような味だった。しかし、バターを乗せたわけでも、シロップをかけたわけでもなかったので、食事中の立ち位置はパンのような感じだった。プロコーピーが作ったという煮込みは、美味しかったが、そこまで圧倒的な美味を誇っているわけでもなかった。なかなか面白かったのは、ポームと呼ばれたフルーツである。このフルーツかなり毛深いのだが、なんと皮についている毛ごと食べるのだそうだ。食感はかなり奇妙だったが、味は悪くなかった。例え辛い味だが、さっぱりしていて食べやすかった。

 そんな朝食にしては量が多かったこの世界最初の食事を終えた後、ローンテイスの乳を飲んでいると、フレニアが喋り始めた。


「さて、シルベスタも食べ終わったな。ではこれから、現状の確認とこれからどうするかを話す」


 いつの間にか机の上を片付け終え、フレニアのそばに戻っていたプロコーピーが話し始める。


「それでは、私から。シルベスタ様には先ほど書庫に入り、時空凌駕(アンチタイム)の適正等々を案内人から測っていただきました。案内人から結果はお聞きしているので、結果をお聞かせしましょう。まず時空凌駕(アンチタイム)の適正はないことはない、といったところです。続いて、召喚の際に付与される権能についてです。シルベスタ様は案内人に、才能と言われたものについてです。『魂』の思念を読み取れる、というものになっております」

「なるほど。これは僥倖じゃな」


 フレニアはそう言うと、さっきまで何か書いていた紙を少し千切り、何かを描いた。


「よし。シルベスタよ。この紙の思念を読み取り、わしがどのような記号を描いたか当ててみよ」

「思念を読むって…。どうやれば良いかわからないのですが」

「ふむ。そうじゃな。心の中で話しかける感じじゃ」

「…やってみます」


 話しかけるって…。とりあえずやってみるか。

(紙切れさん。どうか答えてくださいな)

(はい。呼びましたか?)

 こ、声が聞こえた。本当にそんな能力を手に入れたとは…。

(えっと、そこにいる少女はあなたに何を描きましたか?)

(こんな記号を描きましたよ)

 声がそういうと、十字のイメージが流れ込んできた。なるほどこういう感じなのか。


「フレニアさん」

「わかったか?」

「十字でしょうか?」

「当たりじゃ」


 フレニアが千切った紙を裏返して見せてくる。そこには流れ込んできたイメージ通りの十字が描かれていた。すごいなこれは。

(紙切れさん。ありがとうございました)

(お安い御用ですよ)


「良い能力であろう?しかし、その力には幾つか注意点がある。まず、わしやプロコーピー、つまり他人の心を読むことはできないな。正確に言うと、抵抗されて、読めない、ということじゃ。だから相手に読ませる意思があるのなら読めるじゃろう。…試しにわしの心を読んでみよ」

「わかりました」


 さっきと同じ感じでやればいいんだよな?

(えー、フレニアさん。今、何を考えていますか?)

(シルベスタ、お前、ローンテイスの乳を気に入ったじゃろ)


「なっ!」


 き、気付かれていたか…。フレニアがにやにやしている……。


「わかりやすいんだよ、シルベスタは。まあ、これから直していくんだな」

「はい…」

「さて、そんな間の抜けた話は置いておいて、注意点じゃったな。読み取るものの思念についても気を配った方がよいな。例えば、そこの書庫の物品は基本的にやめておけ。思念の“格”が全く違うのでな。下手すると死ぬな。頭が吹っ飛んだり、脳が焼けたり…。まあ碌なことにはならん。あと穢れが溜まってる物じゃな。穢れが頭に逆流してくる。今のお前ではまず耐えられないな。あ、ちなみに穢れというのは…」

「フレニア様、話が脱線しそうです。穢れについてはまた今度にしましょう」

「む、そうじゃな。あとは、物にだって感情がないわけではないからな。その物の主人が不利になるようなことは教えてくれないだろうな。まあ、注意点はこんな所じゃろうな。わかったか?」


 なかなか便利な能力じゃないか。いくつか制限があるとはいっても、気を付ければ大丈夫そうだし。


「ええ、何となくは」

「…それでは、シルベスタ様の能力等の確認については粗方終わったので、今後の予定をフレニア様から」

「良いだろう。では、これからの予定について話す。よく聞け」


 フレニアがさっきまで何かを書いていた紙を見ながら話し始めた。


「まずプロク。お前は今まで通りこの館の維持及び改良、必需品の調達など、まあ、今までとやることは同じじゃ」

「御意」


 うわあ。こき使うなあ。


「安心せい。お前を小間使いのようにはしない」


 ……また顔に出てたか。


「…それはどうも」

「次に、わしとシルベスタじゃが、シルベスタには色々と直すべきところがあるのでな。訓練や教育をしようと思う。このフレニアが、直々に」

「訓練や教育とは具体的に何を?」

「まず、そのすぐ顔や態度に出るところだな。それはこの世で生きていくとき大抵の場面で不利に働くからな。せめて人並みにするために、羞恥心でもって鍛えてやろう。細かい内容はのちに決める。次に思考速度じゃな。これはいくら速くなっても無駄でないからの。計算や速読を常にやらせることで鍛えようか。あと、判断力じゃな。反応速度も速いほうが良いな。これはわしが魔法で鍛えさせる。あとは言語の習得じゃな。まずこの大陸で主に使われている言語を聞き取り、読み取り、筆記できるようにさせよう。いつでもわしの魔術が働いているわけではないからな。この世界の基礎知識、魔術の知識なんかもじゃな。わしが書庫から良い書籍を見繕おう。あと、戦闘技術じゃな。判断力、反応速度とともに鍛えるか。こんなものじゃなかろうか。」


 なんて量だ…。俺は大丈夫なのだろうか…。


「…了解しました」

「とりあえずひと月でどれほど伸びるか、じゃな。よし。早速今日から、今から始めようではないか」

「え゛」


 本当に俺はどうなってしまうんだ。

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