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才能無し、才能を憎む~何なら俺以下いない~  作者: 翡翠果実
動乱の種が爆ぜる時、空の導は地に落ち、無尽の石棺は消える。
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殺生を嫌うのは人間くらいであろう

わたくし、初めて戦闘シーンを書きました。これは新しい一歩ですよ!

 考えなしに飛び出してしまったが、すでについた勢いは止められない。どのようにしてあの男を助けるか。まずオオカミをどかすところからだ。

 オオカミはガジガジとそのまま噛みつき、周りからの助力を待っているのか、少し頭を上げている。

 先手必勝という言葉がある通り、オオカミがこちらに対応する前に先手を取るべきなのであろう。ならばと、腰に提げていた名無しの刀の柄をしっかりと掴み、走りながら抜刀。そのまま腕を伸ばすようにして斬る!

 肩に噛みついていたやつに狙い定め、見事に斬撃が命中する。斬撃はそれほど強い抵抗はなくオオカミの皮膚の下に潜り込み、そのまま突き抜け、傷を残していく。


「うっそだろ。切れ味良すぎじゃないか」


 さすがに真っ二つまでとはいっていないが、腹部から背にかけて大き目の傷ができてしまったオオカミは力なく倒れ伏す。

 …殺してしまったのだろうか。さすがに命はまだ潰えていないが、もう長くないだろう。自らの手で動物を殺すのはこんなにも苦しいことなのだろうか。罪悪感というか恐怖というか、得体のしれない感情に襲われる。

 そんな隙を、仲間を襲われたオオカミが見逃すはずもない。噛みつくのをやめたオオカミがとびかかる。とっさに腰に当てていた左腕が防ぐために出る。その手首辺りをオオカミは容赦なく噛みつく。


「くっ!」


 腕が、腕が噛みつかれ痛みが湧いてくる。痛い!が、ここで怯んでいてはこっちが負ける!まだ少し残っていた冷静さを燃料にオオカミを殴る。この距離で満足に振ることができない刀を置いて、ひたすら殴る。オオカミはまだ離れない。中腰のような姿勢になっていたが、だんだんと脚をついてしまうが、殴り続ける。

 腕から血が出始めたときに、ようやくオオカミの噛む力がほんの少し弱まった。今だ!と左腕を振り回す。左腕が抉れるが、オオカミが離れる。急いで刀を片手で持ち上げる。オオカミはこちらに向きなおり、警戒をしている。

 左腕は不思議と痛まない。熱を少し帯びている気がするが少し動かす分には平気そうである。左手も柄を握り、右肩の上らへんに刃が来るようにし、いつでも切りつけられるようにする。

 残った冷静さを失わないように、好機を待つ。オオカミがこちらにかかってくるその時が勝負の時だ。

 オオカミと俺はお互いに見合う。ジリジリと時間が過ぎ、ついに向こうがしびれを切らす。オオカミが走り寄ってくる。俺はちょうど切りつけられるところまでオオカミが来るのを待つ。オオカミはどんどん近づいてくる。


 今!!


 ブンと刀が風を切る音が聞こえ、先ほどよりもわずかに強い抵抗を手に感じ、オオカミに刀の軌道が重なる。しかし、刀はまた、容易くオオカミの毛皮を肉を、そして骨を切り裂く。オオカミからか細い声が聞こえ、そして重力に従い倒れる。

 次第に自分が息が上がっていたことや、心臓の鼓動が高鳴っていたことに気が付く。左腕からは血が滴り続けており、痛みが段々と強くなっていっている。

 つい、脚から力が抜け、その場に座り込んでしまう。


「やあ、お疲れ様。良い戦いぶりだったよ」


 と、声を作ったフレニアが後ろから話しかけてくる。周りを見ると、残りの三匹のオオカミは損害なく討伐されたようだ。肝心のでかい個体はと言えば、綺麗に首から上がなくなって、地面に倒れ伏している。

 …この世界、これからやっていけるだろうか。

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