S:7F
『じぇっとこおすたあ』に思いを傾けつつ、つい数十分前から延びっぱなしの顔に視線を向ける。二人しか車に乗っていないとは言え、狭い車の中で目の前で寝られて気分の良いものではない。
プロクから受け取った荷物はこの馬車の分がなくなったとはいえ、まだかさばり、大量の物が入っていると考えると、やはり別の所に置きたいが、さすがに今こやつを起こすのは気が引けると思い、我慢をすることとした。
「で?どうして今になってこんなことしたの?まさか未練があったとか言うんじゃないだろうね」
「放っておけ、別にわしは血も涙もないわけではないし、人手が足りなかったのは事実だろう」
「………」
「どうしてこの今、大きな障害になるかもしれない特異点を作ったの?」
「そうなったのは偶々じゃ」
「せめて、相談くらいはしてほしかったわ」
「ちょっと………」
「………」
「………」
わしの中でくらい静かにしていてくれぬか?
(……良かったぁ。………思いはしたくないなあ。…………なんだ?…るか。……。)
目を開けるとこやつは起きていて、目が開いていた。
そして目が合い、その瞬間向こうは目を閉じた。
自然と口角が上がった。