表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能無し、才能を憎む~何なら俺以下いない~  作者: 翡翠果実
動乱の種が爆ぜる時、空の導は地に落ち、無尽の石棺は消える。
10/98

遡行者たちの集会

「まず、シルベスタにそれぞれ何をしていたかを知ってもらうために、自分たちがやっていたことをおさらいするのが良いじゃろう。」

「そうだね。私もそれが良いと思うよ」

「さんせーい」

「うむ。ならばわしから…」

「ここは私、プロコーピーがシルベスタ様にお伝えいたします。各々補足したいことなどがございましたら、その場でお願いします」


 さすができる従者、プロコーピー君…。

 主が問題を起こす前に行動させない、主に恥をかかせない、なんて気配りのできるテディベアなんだ…。

 言葉を途中で遮られる形となり、フレニアは少し不服そうだ。が、自分が説明が下手なことをわかってか、あるいはほかの七魔人の前で恥をかかないためか、今日は黙っている。イミアスがフレニアの頭に手を伸ばすが手で払われている。


「異論はないようですね」


 プロコーピーは全員を見回してからそういった。


「それでは…」


~中略~


「…と、いう具合でございます」

「丁寧な説明、ありがとうございます」

「いえいえ」


 六人それぞれの今までの動きをまとめる。

 まずはフレニア。俺を召喚し、七魔人の内の『精神』である少女だ。プロコーピーを従者として従えている。俺の胸くらいまでの身長で、バラのように赤い髪を腰のあたりまで伸ばしている。小学校高学年くらいの印象を感じられる。が、かなり整った顔をしており、目は鋭いが、人を威圧しすぎないほどである。さらにその瞳は、澄んだ綺麗な黒色をしていて、理知的なイメージを与える。藍色を基調としたローブが魔術師を想起させる。()()()()を見ると初対面でとても好感が持てる。

 フレニアは俺の召喚のためにここ数年はこの家に引きこもっていたらしい。この家は、七魔人の拠点でもあるらしく、プロコーピーとともに維持をしてきたそうだ。ちなみにフレニアは、表向きは国で一番の魔術師ということになっているらしく、七魔人であることは世間一般では明かしていないらしい。

 まあ、製造不能の超技術(ロストアーツ)はすごい機能を備えたものも多いから、それを破壊する七魔人ってのは一般的には良く思われないよな。それを明かさないのは、当たり前だ。

 次にイミアスだ。イミアスは溌溂な金髪少女だ。七魔人の内の『身体』である。身長はフレニアより少し高いといったほどである。日の光に当てられたヒマワリのように明るい金髪を短く無造作に切っている。青い目が特徴的だが、顔は平凡と言える。常に笑みを絶やさず、親しみやすい話し方で、相手に与える印象は、とても良いものとなるだろう。

 イミアスはこの国の今代の王様に側室として近づき、情報を集めていたそうだ。正直イミアスが芝居を打っている姿が想像できない。そのうえ、フレニア以外の七魔人のメンバーは顔が割れている。その疑問をぶつけてみたところ、どうやら七魔人のメンバーは、フレニア以外はイミアスの権能で身長や髪の色、性別など、あらゆる容姿を変えて暗躍しているのだそうだ。なかなかすごく便利な権能だな。

 肝心な入手した情報というのは、この国が扱っている情報の大体は当てはまっているらしい。特に気にした方が良いだろうとされたのは、秘密裏に発掘が進められている巨大な製造不能の超技術(ロストアーツ)についてだ。曰く、世界の均衡を揺るがす可能性があるとかないとか。「詳しいことは実際に見てみないとわからないからね」とイミアスは無念そうに言った。

 シガリカとルゴグナは基本的に二人で行動しているらしい。『合成』のシガリカと『分解』のルゴグナ。身長は二人ともフレニアと同じくらい。それぞれ髪の色は橙と青。ともに夜明けを思わせるような色になっている。髪型や長さは二人とも統一され、腰の上あたりまで伸ばされている。目の色は二人とも明るい紫色。服装も色が違うだけで、揃えられている。シガリカのものが黒がメインカラーなのに対して、ルゴグナは白がメインだ。シガリカは紳士的といった感じで、とても接しやすい。一方ルゴグナは、基本的に人と話さない。七魔人ですらシガリカ以外とは基本的に話さないらしい。見た目は少女なのだが、声は中性的で、シガリカのほうはどこか紳士を思わせる話し方なので性別は断定できない。何よりシガリカが姉妹か兄弟かを言いきらなかったことも原因である。性格や振る舞いは二人でだいぶ違うが、ところどころから仲の良さがうかがえる。

 二人は三つある大陸のうち、この国がない二つの情勢を常に調べているらしい。この二人、かなり有能なのだ。

 続いてヘムート。厳粛な雰囲気をまとった男性だ。七魔人の内の『物体』である。新緑を思わせる緑の髪を長めに伸ばした、いわゆるイケメンというやつだ。身長は俺より高く、180㎝後半ほどには届いていると思われる。綺麗な薄めの黄色の目が、整った顔の中でもよく目立ち、一挙一動は品の良さが伝わり、言動も紳士的である。ただ、表情に多少乏しい顔と口調が厳しい印象を持たせている。

 ヘムートは今まで、あらゆるところで民衆や商人などを、七魔人にとって有利になるように()()していたらしい。具体的には、つい最近、少し大きめの王国で反乱がおこったらしいのだが、そこで民衆を動かし、次々と別の主張をもつ人々も反乱させ、今やその王国があった地域は、入り乱れる数々の勢力が起こっては滅亡を繰り返しているとのこと。その甲斐あって、製造不能の超技術(ロストアーツ)をいくつか回収することができたらしい。

 最後にクロイシュルトだ。静かな雰囲気を纏った女性だ。七魔人の内の『時間』を司っている。背はイミアスより高く、女性の平均身長より少し高めといった感じだ。まるで光を受けた宝石かのような鮮やかな紫の髪を肩のあたりまで伸ばしている。真朱の瞳が注目を集める。整った顔には微笑が常に()()()()()()()といった感じだ。自分の考えていることを悟らせないためにあえてそうしているというような印象を受ける。口数も非常に少なく、つかみどころがない。

 ところで余談だが、クロイシュルトの権能であるという『時間』だが、おそらく誰もが最初に思い浮かべるであろう、いわゆる『時間停止』ではないのだという。どこかの吸血鬼やメイド長とは違うのだ。ではどういうものか、それは、物体に経過する時間を止めるものと軽い未来視らしい。前者は経年劣化や腐敗、加齢などを防ぐ能力となっている。つまり不老ということだ。後者は訳あって今は使えないのだという。

 クロイシュルトのしていたことは、『封鎖魔術』の管理、維持および守護だという。『封鎖魔術』の詳細は教えてもらえなかった。まだ知るには早いだとか、時が来たら教えるだとかいまいち納得ができない。唯一教えてもらったのは、クロイシュルトの未来視が使えないことと密接にかかわっているということだ。教えてもらえないことはしょうがないので、聞くことはあきらめた。

 ちなみにこの六人の中で最も知名度があるのはクロイシュルトだ。ちょくちょく歴史の表舞台に出ては、活動をしていたらしい。

 と、軽く頭の中でまとめただけでもかなりの情報量だ。


「では、シルベスタ様。もう質問などもございませんね?」

「ええ、大丈夫です」

「ならば、次はこれからの各々の動きを決めようか」


 再びフレニアが仕切り始める。


「まず決めるべきはシルベスタじゃろう」

「まあ、妥当だろう」

「何か案がある者はおるか?」


 フレニアが聞くと、クロイシュルトが手を挙げた。


「ほう…。では聞こうか」

「クロちゃんが自分から喋るなんて、随分久しぶりだね」

「他人が発言する直前に喋るんじゃない」


 クロイシュルトが発言の意思を見せると、クロイシュルトを除いた七魔人のメンバー全員が珍しそうにした。それを代表するようにイミアスが声をあげたのをヘムートが咎めた。

 その様子を見届けたクロイシュルトは、咳払いをして喋り始めた。


「シルベスタ君のことだけど、見聞広めたほうが良いと思うの。いずれ製造不能の超技術(ロストアーツ)の回収もさせるつもりでしょ?なら、違和感なく溶け込めるように、実際にこの世界を歩いて、体感してもらうのが一番だと思って」

「しかし、破壊の方も優先させた方がいい気がするがのう」

「これに関しては俺はクロイシュルトに賛成だ。製造不能の超技術(ロストアーツ)の破壊なら、すべて集めたときにでもすれば良い。我々は今深刻な人手不足だからな、少しでも価値のある人材がが必要だ」

「私達もクロイシュルトに賛成だよ」

「わたしもー」

「ふむ。ではこれは決定じゃの。次に、誰のどの活動に伴をさせるかじゃが…」

「私とフレニアと行動するのが良いんじゃないかしら」

「今日はよく喋るね、クロちゃん」

「ここが大きな分岐点だからよ」

「どゆこと?」

「未来視の経験からの勘よ」


 話に全く付いていけてないが、口をはさむところではないので何も言わないでおこう。

 それに、会話を聞くだけでも情報を集められそうなので、聞くのに徹しよう。


「話が逸れてきた。戻すぞ」


 ヘムートが続ける。 


「一応、理由を聞かせてもらおうか」

「イミアスとヘムートの活動は、諜報だから除外。シガリカ達の活動は、見聞を広めるにはいいかもしれないけど、情報収集に支障が生じてしまっては本末転倒でしょ?消去法で私とフレニア」

「どっちかだけって訳にはいかないの?」


 イミアスが真っ直ぐクロイシュルトを見つめながら聞く。イミアスが話してる相手の方を真面目に見て会話をするのを見るのは初めてだ。


「それは単純に、私もフレニアも戦闘が得意なわけじゃないからよ。場合によっては死にかねないから、人数で補うのよ」

「確かに、それもそうだね」


 イミアスは再び普段の調子で言った。


「次は他の者じゃが…」

「まあ、今まで通りに活動、で良さそうだね」

「…それでは予定は概ね決定でよろしいでしょうか?」


 プロコーピーはそう言うと、全員を見回す。


「それでは出立の日と、再び会う日を決めましょう」

「わしらは明後日ここを出ていくこととするかの。王殿のほうに色々伝えておくべきことがあるから、一日猶予をもらうぞ」

「構わないわ」

「じゃー、私も明後日戻ろうかな」

「イミアス、念の為にクロイシュルトとシルベスタの髪色を目立たないように取り繕ってくれ」

「喜んで」


 とんとん拍子で予定が決まっていく。


「僕たちは明日の朝には出ていかせてもらうよ。すごく、寂しいけどね」

「俺は明日の昼に発とうと思う」

「では、次に集まるのは、一年後ということで、今回は解散じゃ」

「…皆様、お疲れさまでした」


 発言者がいなくなったのを見計らって、プロコーピーが最後に締めた。

 それにしても随分今後の方針を立てるのが速かった。…こんな超有能集団の中でうまくやっていけるだろうか。これからがかなり不安になってきた…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ