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番犬系女子(他称)、結果発表をする

「けぇっかはっっっぴょぉぉーーーーーー!!!!!」

「声出てんなぁ。音飛び掛けたぞ」

「うぇっ、喉死ぬかと思ったわ」

「開始早々『うぇっ』とか言うんじゃねぇ」

「仕方ないでしょ、一度やってみたかったんだから。コホン、皆様どうもごきげんよう。断食系男子人気投票、結果発表の時間がやってまいりました」

「なんでニュース調?」

「放送は皆様おなじみのわたくしチワワさんと、おにぃでお送りします」

「まだその名前で通すのか……」

「この約2週間での総投票数は、無効票除いてなんと126票。皆様たくさんの投票ありがとうございました」

「ずいぶんたくさん集まったな。プロデューサーの想定の1.5倍近いじゃないか」

「私達の予想の約3倍ね。これは本当に予想外だったわ」

「というか、無効票? あったのか?」

「あったんだよね……これが。まずは、それから紹介しましょうか」


「無効票! それぞれ1票ずつ! 燦々SUN、日野蓮司、霊峰富士、スケルトンコースター!!」


「いや、最後」

「日野蓮司と霊峰富士もかなりのツッコミどころだけどね……」

「投票者にサトラーでも交じってたのか?」

「だったらサトレストに投票しない?」

「それもそうか……なら、登山家か?」

「かもね。それじゃあ無効票も紹介したところで、第12位から順に発表していきましょうか!」

「おお」

「の、前に……改めて、オッズ票を確認しておきましょうか」



①倉瀬聡       1.3倍

②渡井愛佳      1.2倍

③仲澤佐奈      2.1倍

④倉瀬田悟郎     8.4倍

⑤更科奈美枝     10.8倍

⑥T様(サトレスト)  5.6倍

⑦チワワさん     7.2倍

⑧悟り将軍      5.2倍

⑨理性提督      6.9倍

⑩色欲の       21.8倍

⑪大門寺先輩     4.7倍

⑫大山さん(解説の人)38.8倍



「プロデューサーの想定では、②-①-③が本命なんだよな」

「ま、ヒロイン-主人公-サブヒロインと、順当な予想ね」

「さて、実際どうなったのか」

「では行きます! 第12位! 得票数……0票」

「0票か……まっ、明らかに変なの交じってたしな」


「第12位! ⑨理性提督!!」


「なんでやねん」

「いや……たぶん、おふざけで入れるネタ枠としても中途半端だったからじゃないかと」

「マジレスすんな。なんか悲しくなってくるから。っていうか、色欲にすら負けたのかよ……」

「あ、その色欲が次ね」


「第11位、⑩色欲の」


「ぬるっと発表すんな!」

「ちなみに得票数は4票」

「結構入ってんな!」

「理性提督だけなんかぶっちぎりで最下位なんだよね……次とその次とそのまた次が、1票差で競ってるから」

「ってことは、第10位は5票か」

「うん、第10位!」

「誰だ? 今度こそネタ枠か?」


「⑤更科奈美枝!!」


「ばあちゃんかよ……」

「おばあちゃんだったよ……」

「まあ、順位的には順当だが……」

「ネタ枠に負けてるんだよねぇ。続いて2人並んで同率8位、得票数6票」

「ん? 同率?」


「⑪大門寺先輩!! ⑫大山さん!!」


「大門寺先輩、よく分からん解説の人と並んでんのかよ!!」

「まさか解説の人に入れる視聴者がこんなにいるとは……」

「悪ノリに悪ノリをぶつけられた感がすごいな」

「まあ、このくらいで済んでよかったと思うべきじゃない? 続いて第7位、得票数7票」

「ラッキーセブンか」


「④倉瀬田悟郎!!」


「ここで主人公祖父か……ま、順当か」

「だね」

「これで半分終わったけど、あと誰が残ってるんだ?」

「えぇっと……主人公、ヒロイン、サブヒロイン、サトレストに悟り将軍。あと私ね」

「お前残ってんのかよ」

「イェイ」

「イェイじゃねーわ」

「それじゃあ、続いて第6位! 得票数9票!」

「お前だろ?」


「⑧悟り将軍!!」


「……」

「いやぁ、脳内空間の人間にしては頑張ったねぇ」

「いや、お前よ」

「ん?」

「お前、いつまで残るつもりだ?」

「そりゃあ、私③-⑦のワイドだし? 3位以内に入るつもりだけど?」

「嘘だろ!? マジでやめろよ!!」

「第5位! 得票数12票!!」

「お前だよな? ここは流石にお前だよな?」


「①倉瀬聡!!」


「おい主人公!!!」

「うぇ~い、これでおにぃの三連単はハズレ~」

「いや、それはもうどうでもいいわ! なんで主人公が3位以内に入らないどころか、他作品のサブキャラにすら負けてんだよ!!」

「フッ、あふれ出るこの魅力が怖い……」

「おい、マジで勘弁してくれよ? 本気で3位以内とかマジでやめてくれよ?」

「第4位! 得票数13票!!」

「頼む……っ!!」


「⑦チワワさん……チッ」


「おい、舌打ちすんな」

「なんかさぁ……みんな、ノリ悪くない? 空気読めてないって言うかぁ~」

「やさぐれんな」

「あぁ~あ、惜しかったなぁ。あと1つで③-⑦当たったのに」

「いや、マジでよかった……これで、あと3人か」

「ん~~、ヒロインとサブヒロイン、そんでサトレストね」

「サトレスト……閑話でしか登場してないのに、なんでこんなに強いんだ……」

「それこそサトラーの組織票じゃない?」

「この国はいつから天外魔境になったんだ」

「それじゃあ、いよいよ第3位!! 得票数17票!!」

「一気に票数増えたな……さあ、誰だ?」


「……⑥T様(サトレスト)!!」


「おぉ~まあ、流石にヒロインとサブヒロインが残ったか……」

「だね。さてさて、メインヒロインがその意地を見せるのか。それともサブヒロインの下剋上なるか!」

「自称『人気投票で上位に食い込んで個別ルート解放されるサブヒロイン』か……言うだけあるな」

「断食系男子、最初で最後の人気投票! 栄えある第1位は!!」

「……」

「……の前に、コマーシャル」

「……コケた方がいいか?」



~~~~~~~~~~~~



 美しく整えられた日本庭園。その庭園を臨む縁側に、1人の小さな老人が胡坐をかいて座っていた。

 老人の組み合わされた足の上には1匹の猫がおり、老人は丸まって眠るその猫を見下ろしながら、優しい手つきでその背を撫ぜていた。

 まるで余生をのんびりと過ごすお年寄りのような、思わずあくびが出そうな実にのどかな風景。しかし、その平穏は不意に訪れた来客によって破られた。


「ふむ……侵入者とは珍しいのぉ」


 視線を手元の猫に落としたまま老人がそう呟くと、庭園の向こう、白い霧に包まれた竹林の中から、1人の男が現れた。

 年齢の読めない男だ。雰囲気も茫洋としていて、イマイチ掴みどころがない。

 しかし、白い作務衣(さむえ)に身を包み、うっすらと穏やかな笑みを浮かべるその姿には、道を極めた者に特有の重みと深みがあった。


 その男が音もなく(・・・・)庭園の砂利を踏んだところで、老人はようやく顔を上げた。

 男の顔をじっと見詰め……感心したように吐息を漏らす。


「ほう……わしの多重結界を突破し、この異界に侵入してくる時点で只者ではないとは思うておったが……まさか、わしの鑑定を無効化するとは。サトラーレベルが50を超えておると見える……そうか、おぬしが今代のサトレストか」


 それに応じて、侵入者である男も無言で会釈する。そして静かに口を開くと、自然と心に染み入るような深みのある声で老人に語り掛けた。


「日ノ本の統括者、ぬらりひょん殿ですね。いかにも、私が今代のサトレストを名乗らせていただいております。本名は伏せさせていただきますが、友人達には“等覚”の頭文字を取ってTと呼ばれております」

「ほっほ、これは丁寧に痛み入るのぉ。“等覚”……なるほど、サトラーレベル51、か」


 サトラーとしての1つの到達点に至った存在を前に、老人はスゥッと目を細める。しかし、すぐに笑みを浮かべると、おどけるように肩を竦めた。


「珍しい生きた人間の客人じゃ。本来なら茶の1つでも出してやりたいところじゃが……どうやら、のんびり茶を飲めるような雰囲気でもないのう」

「ええ、サトレストが異界に侵入してまで統括者に会いに来る。となれば、その理由は自ずと知れるというものでしょう?」


 男はそう言いながら、悠々とした足取りで庭を横切る。やはり、音はしない。

 確かに砂利の上を歩いているはずなのに、石同士が擦れる音が全くしない。

 そんな小さな、しかし決して無視できない異状を前に、老人は動じた様子もなく顎に手をやった────



~~~~~~~~~~~~



「……おい、なんだ今の」

「えっと……なんだろう今の」

「そこは把握しとけ?」

「あ、っと……なんか、プロデューサーが間違って廃校の原稿流しちゃったみたい」

「なにしてくれてんだ! 結果発表の内容とかもう飛んだわ!!」

「えぇっと、まあその……気分切り替えてこ? それでは! 栄えある第1位の発表です!!」

「このまま行くのかよ!!」

「第1位……得票数、圧巻の27票!!」

「おぉ」

「ドォルドォルドォルドォル…………あ、ごめんツバ飛んだ」

「汚ったね!」

「美少女のツバは汚くない!!」

「汚いわ! なんだその謎理論!」

「謎じゃない! 美少女の体液はそれだけで──」

「やめろぉ! ああもう! さっさと発表しろよ!」

「チッ……それじゃあ、第1位!!」

「……」


「…………我らがヒロイン!! ②渡井愛佳!!!」


「あたしの時代がぁ、キタァァァァーーーー…………あれ? 来てない?」

「来てないから帰れ」

「げぼぁっ」

「いやぁ、流石はメインヒロイン。第2位の③仲澤佐奈に7票差をつけての堂々の第1位です」

「いや、お前第2位入賞者になんつーえげつない技を……」

「大丈夫、彼女頑丈だから」

「いや、ラーメン出てたぞ?」

「さて、それは置いておいて、最終結果は以下のようになりました」



1位 ②渡井愛佳      27票

2位 ③仲澤佐奈      20票

3位 ⑥T様(サトレスト)  17票

4位 ⑦チワワさん     13票

5位 ①倉瀬聡       12票

6位 ⑧悟り将軍      9票

7位 ④倉瀬田悟郎     7票

8位 ⑪大門寺先輩     6票

8位 ⑫大山さん(解説の人)6票

10位 ⑤更科奈美枝     5票

11位 ⑩色欲の       4票

12位 ⑨理性提督      0票



「まあ、なんだかんだメインヒロインがきっちり1位を獲ってくれてよかったよ」

「それね。最初、私とヨゴレ系女子が走った時はマジでどうしようかと」

「あとからヒロインがきっちりまくったからよかったものを……」

「実際、開票するまでプロデューサー、割と真剣に仲澤佐奈が1位だと思ってたらしいよ」

「それだけ勢い凄かったからな」

「そうそう、あとなんか知らないけど、遺影で出てたお姉ちゃんがやたらいじられてたらしいよ」

「マジで投票対象絞っといてよかったな。他作品の主人公が上位ランクインとか流石に笑えんぞ?」

「呼んだ?」

「呼んでねぇから帰れ!! なにサラッと世界線と時間軸超えて来てんだ!!」

「おねえちゃんだああああぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」

「オイ黙れそこのシスコン!!」

「え? なんで? なんで男装? しかも執事!! フゥオオォォォーーー!!!」

「放送忘れてんじゃねぇ! ああもう、さっさと帰れよお前!!」

「ほら、ご迷惑なようですし。帰りますわよ、お姉様」

「なっ、ここで会ったが100年目ぇ!! 今こそどっちがお姉ちゃんの妹として相応しいか決着を──」

「だから! 視聴者の9割方が付いていけないやり取りをするんじゃねぇ! 頼むからもう帰れよ!!」

「はいはい、帰りますよ……そうそう最後に。お兄ちゃん」

「なんだよ!?」

「……これで私も本文中に登場したから、次回からは私も投票対象ね」

「……」

「……(グッ)」

「いや、グッ、じゃねーわ。そもそも名前が……って名乗るなよ!? 絶対に名乗るなよ!?」

「更科梨──」

「わーーあぁーーー!! というか、次回もなにも人気投票はこれっきりだからな? 第2回なんて絶対やらないからな!?」

「待てぇ! 逃がすかぁ!!」

「ああもう、収拾つかん!! おい、一旦放送止めろ!!」




~~ 大変見苦しい争いが続いております。少々お待ちください ~~




「あぁ~失礼。妹……チワワがちょっと再起不能になったので、俺から最後の案内をさせてもらいます」

「まだ生きてるよ~」

「うるせぇ死んどけ」

「し~ん」

「……えっと、前回も話した通り、1位となった渡井愛佳視点で後日談が書かれます。とりあえず聡と愛佳の夏祭りデートを書くこと。それに、健闘賞として第2位になった仲澤佐奈視点でも1話後日談を書くことが予定されていますが、それ以外にも何かご要望があれば、感想欄の方にお寄せください」

「ど~せ水着回とか書くんだろ~? このスケベ」

「ちょっとお前はマジで黙れ。えぇ~もし何かプロデューサーの想像を掻き立てるものがあれば、採用させていただきます。それでは今回は以上となります。改めまして、たくさんの投票ありがとうございました」

「……」

「いや、最後はしゃべれよ!!」

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― 新着の感想 ―
[一言] 見返したり他の人の作品とか見てたりしましたけど、後日談で年末年始とか、クリスマス回とかも良くないですかね?(名案)
[一言] 梨沙さんだっ!
[良い点] ヒロインは強い…! 後日談楽しみに待ってます! [一言] やっぱりおばあちゃんはダメだったか…
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