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最凶魔導師のまったりスローライフ  作者: 霧丈來逗
第一章 貴族の兄弟
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8、エルドジークの変化?




 ジークは魔力が枯渇したエトワールを連れて家へ戻ろうとしていた。




 だが、そこに一振りの剣が飛んできた。

 気付いたエトワールはジークに知らせようとする。位置的にこのままだとジークに当たると気づいたからだ。だが、それもギリギリ間に合うかどうかといったところだった。



 間に合わない!

 そう思ったエトワールが剣を防ごうと魔法を発動させようとした。だが、それは必要のないことだった。

 ジークが振り向いたのだ。まるで、わかっていたかのように風魔法を発動させて剣の軌道を変え少し離れた位置に落とした。




「ジークさん!」

「ああ、大丈夫だよ。守ろうとしてくれてありがとう。魔力が枯渇してるんだ。つらいだろうに」

「いえ、それよりジークさんがケガをすることの方が大変ですわ!…もしかして、飛んできていることに気付いていたんですか?」

「う~ん。ついさっきね。何か来てるのに気づいたからとっさに風魔法を使ったんだ。いや~、間に合ってよかった。それにこれは木剣だったようだしね」




 と、ジークは剣を拾いながら答えているが、実際はずっと前から気付いていたのだ。気づいてはいたのだが、あまりに早く気付くと疑われるのでかなり直前まで何もしていなかった。まあ、あれでも余裕をもって対処していたのだが……

 エトワールは気付かなかったようだ。




 しばらくすると剣が飛んできた方向からアルフォンソが出てきた。



「ジーク、エトワール。こっちに剣が飛んでこなかったか?」

「もう、お兄様だったのですね!もう少しで、ジークさんに当たるところでしたのよ!いったいどんなことをしていたんですか!」

「そうだったのか。レイスさんと摸擬戦をしていたんだけど僕の剣が飛ばされてね。でも、無事でよかった。ジーク、すまない」

「いやいや、別に当たらなかったから、大丈夫さ。摸擬戦をしていたのなら仕方がない」



 ハハハ、とジークは笑っているが内心はレイストルに悪態をついていた。



「そう言ってもらえるとありがたい。それにしても、エトワール。ずっと座っているし、顔色がよくないようだけど…何かあったのかい?」

「魔力切れですわ。まだ、軽い方ですけど…。今日一日でいろんなことをしましたもの。疲れましたわ」

「そうか。じゃあ、安静にしていれば回復するな。あまり無理するなよ。」

「お兄様もです。擦り傷などがたくさんあるし、服も汚れているではありませんか。そんなに厳しいものなのですか?」



 心配そうなエトワールにアルフォンソは首を振って答える。


「いいや、これぐらいが普通さ。まあ、森の中だから擦り傷や汚れているのは多少多いかもしれないけどね。さ、僕はレイスさんのところへ戻るよ。もう少し稽古をする」

「わかった。気を付けるんだよ。さっき魔物が出たからね」

「わかりました。エトワール、無理をするなよ」

「ええ、わかっています。お兄様もですよ」



 ジークは微笑んでいた。ここまで仲の良い兄妹で良かったと思っていた。

 実のところ、エルドジークはドラティエラ伯爵の後継者争いが起きるのではないか、そうでなくとも、この兄妹のうちどちらかが後妻の味方となるのではないかという懸念をしていた。


 だが、いらぬ心配だったようだ。ここでふと、エルドジークは自分の変化に気が付く。

 以前のエルドジークならばそのような事など当人の問題だろうと気にかけることもなかった。気にするような相手もいなかったのだ。レイストルがそのような問題を抱えていても関わるようなことはしなかっただろう。

 だが、今はどうだ。二人の問題であるが何とかしてやりたいと思っている。


 どうやら、少しは余裕ができたらしいな。先代皇帝(あ奴)のもとにいたときは、あれでも余裕がなかったのだな。最凶の魔導師たるものが、片腹痛いな。



 エルドジークは小さく苦笑を浮かべる。

 そんなジークを見ていたのだろう。エトワールが声をかける。


「ジークさん?どうかしたのですか?」

「ああ、いや。なんでもないよ。少し考え事をしていたんだ。さあ、帰ろう」



 ジークはエトワールを立たせると一緒に家に向かった。










 少し歩くと家が見えてきた。

 中に入り、エトワールを部屋に連れていく。——―—もちろん、エトワールの許可を経てから中に入った。————そして、ベットに寝かせる。


「夕食をつくってくるからゆっくり休んでていいよ。魔力は休んでいればまた回復するから。明日には元通りになっているはずだ。夕食の時間になったら起こすから」

「わかりましたわ。お手伝いできず申し訳ありません」

「気にしないでいいよ。じゃあ、ゆっくり休んで」



 ジークが部屋を出て行こうとしたとき入れ替わりでヴィリエが中に入って行った。


『我が寝るまでここにいるぞ』



 すれ違いざまにヴィリエから念話が来たので軽く頷く。そしてそのまま扉を閉める。少し気になったので聞き耳を立ててみると案外楽しそうにしていたのでジークは夕食の準備へとりかかった。








___________















 ジークが一人で忙しく夕食の準備をしているとヴィリエが降りてきた。


『主よ。エトワールは寝た。どことなく申し訳なさそうではあったがな』

「そうか、まあ、大丈夫だろう。フィリアはまだ戻らないのか?」

『ああ、なにかてこずっているようだな。まあ、そのうち戻ろう。エトワールの魔法の訓練はどうだったのだ?』


 やはりヴィリエも気になっていたようだった。

 まあ、あれだけ仲が良さそうなのだから当然か。


「素質はある、それに魔力量もそれなりに多いな。属性は風と水だ。」

『二属性か。将来が楽しみだな。それと、そろそろアルフォンソたちが戻ってくるようだぞ。何やら、ケガをしているようだな』

「そうか…まあ、ある程度ならば治してやろう」




 そういうとヴィリエはどこかに行ってしまった。それと入れ替わりにレイストルとアルフォンソが戻ってくる。確かにアルフォンソは無数の傷を負っているようだ。



「おかえり。アルフォンソ、レイス。だいぶけがをしているようだが…」

「いや、それがな。私も加減が分からなくてな、何度か吹き飛ばしてしまった。治してやってくれないか?」

「いや、まあ、いいが」



 ジークはそう言いながらもアルフォンソに回復魔法をかける。

 どうやら、いくつかだいぶ痛そうなあざがついていたようだ。エルドジークはケガをきれいに治す。筋肉痛にならないようにすることもできたがそれは本人のためにならないのでやらない。




「できたぞ。これでいいだろう。まあ、次はこんなことは無いと思うけどな」

「それは、まあ、善処する」

「別に大丈夫ですよ。いい経験になります。これからもお願いします」

「ああ、わかった」



 アルフォンソは満足そうだったので、これ以上は何も言わないことにする。だが、木剣に関しては言わせてもらう。レイストルにだが…



 後で、話をさせてもらうぞ。



 少しの威圧を込めてレイストルに視線を向けると顔をひきつらせていた。







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