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最凶魔導師のまったりスローライフ  作者: 霧丈來逗
第一章 貴族の兄弟
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7、エトワールの魔法の練習




「よし、じゃあ最初に属性と魔力量を見ようか」

「はい。楽しみですわ」


 エトワールはとても楽しみなようでニコニコしている。アルフォンソとレイストルはもっと離れた森の中にいる。


「ええと、属性は何があるか知っているかい?」

「ええ、火、水、風、土、光、闇ですわよね」

「ああ、そうだよ。だが、闇と光はだいぶ珍しいからね。それに複数属性の場合もある。うん、ここまでわかれば大丈夫だね」



 ジークはどこからともなく水晶を取り出した。


「これに触って。色と光で属性と魔力量が分かる。まあ、何も考えずに触ってみるといいよ」

「はい、わかりましたわ」


 そういうとエトワールは水晶に触れた。



 エトワールの手が触れて少しすると水晶が光り始める。すると周りを照らすまぶしいくらいの青と緑の光が表れた。




「うん、もう手を放していいよ。」

「二色の光と言うことは二属性ですの?」

「ああ。水と風だ。魔力量も多いね。これは使いこなせれば相当なものだよ」

「まあ、うれしいですわ!」



 エトワールは飛び跳ねて喜んでいる。その様子をエルドジークはじっと見つめていた。

 だが、ただ見ているわけではない。魔力を通して()()いるのだ。すると魔力がどんな状態にあるのかが見える。

 だが、これは高度な技術が必要なので、できる人は限られている。




「エトワール、じゃあ、これから始めるけど…詠唱のことは知っているかい?」

「ええ。魔力を乗せて唱えるのですよね?それで、難しい魔法になるにつれて詠唱が長くなる、であっておりますか?」

「うん、正解だよ。でもね実際に使っている私に言わせると詠唱中は無防備なんだよ。最大の隙になるんだ。そんなことを待ってくれるほど、敵や魔物はやさしくはないからね。」

「そうなのですね。ですが、必要なものではないのですか?」



 エルドジークはうなずきながら答える。


「うん、普通はね。私は無詠唱を教えようと思う。その分、習得は難しいかもしれないけど…どうする?」

「はい。無詠唱でお願いしますわ」


 エトワールは少しの迷いもなく答えた。エルドジークはその姿勢に好感を覚えた。そして、できるだけエトワールの力になろうと決めた。



「わかった。その為にはイメージが大切なんだ。後は魔力を感じることだね。じゃあ、さっそく始めるよ。最初は自分に流れる魔力を感じることからだ。少しやってみようか」



 するとエトワールは目を閉じた。魔力を感じようとしているようだが力が入ってしまっているようだ。


「エトワール、深呼吸をしてみようか。力を抜いて」

「はい」


 言われた通りにしたエトワールだがまだ感覚がつかめないようで首をかしげている。


「エトワール、手をかして。私が魔力を流して感じやすくしてあげるよ。」

「わかりましたわ」



 今度は手をつないでやってみる。ジークが少しずつ魔力を流していく。また、エトワールが流れを感じられるように少し流れを早くする。



「あ、わかりましたわ。何かが回っていますわ」

「そうそう、それだよ。もう目を開けても大丈夫。今の感覚を忘れないうちに次に行ってみようか」

「はい」


 嬉しそうなエトワールから手を放しジークは向き合った。


「いいかい。じゃあ、水からだな…これでどうだろう?」



 ジークが片手を出すとその上に手のひら大の水の球ができた。


「これを見ながら、ゆっくりでいいからやってみて」

「わかりましたわ」


 エトワールも同じように片手を出す。そしていろいろやっているようだった。ここでエルドジークが手伝ってしまえば簡単なのだがそれでは後々エトワールが大変になるだけなのだ。

 エルドジークは何も言わず魔力を通して視ていた。


 すると順調に魔力が集まり手の上に水の球が表れた。


「できましたわ!」

「うん上出来だよ。じゃあ、今度はそれを飛ばしてみよう」


 ジークはそう言うと木に向かって球を飛ばした。木の幹に当たるとべチャッと落ちた。

 エトワールも同じようにやってみた。するとジークよりもはやい速度で球が飛び幹に浅く傷がついた。


「おう、結構威力が出たね。イメージ次第でどうとでもなるよ。じゃあ、今より弱くするイメージで撃ってごらん」



 エトワールはさっきよりもスムーズに作ると言われた通り弱めて飛ばしていた。


「うん、上出来だ。体調が悪くなったりしないかい?」

「はい、今のところ大丈夫ですわ」

「ふらふらしたりしたら言うんだよ。とりあえず...次に行ってみようか。

 今のが初歩中の初歩と言ったところかな?だけど、これでもたくさん作れるようになれば十分役に立つよ」



 そう言ってジークは三個の水の球をつくって自分の周りに漂わせた。そして三つ同時に木にあてた。



「こんな感じにね。まずは二個からやってみよう」



 そしてエトワールは水の球をつくり始めた。案外苦も無く、二つ作れたようだ。そして三つ目、四つ目とつくっていく。だが、浮いているだけだ。


「うごかせるかい?」

「やってみますわ」


 そしてエトワールは頑張ってやっている。するとちゃんと動かせていたのだ。想像力が豊かなのだろうか?自分の周りを自由自在に飛んでいた。

 一度、詠唱を使った魔法の発動を覚えてしまうと、そこから無詠唱に変えるのはかなり困難だ。

 詠唱は自動的に魔力を引き出し、発動させている。そのため、どのくらいの威力を出すのか、どのように動かすのかを術者は考えていない。

 だからこそ、自分で考えてイメージすることが必要な無詠唱に変えることは難しい。



「うん、いいよ。じゃあ、私が作る的に当ててみようか?」


 エルドジークがそういうと水で的のようなものをいくつも出していく。


「よし、どこからでもいいよ。水の球をつくりながらあててみよう」

「はい、行きますわ」



 するとエトワールは順番に的に当てていく。順調だ。何度もやっていくと慣れてきたのか作るのも早くなってきた。

 しばらくやってみると木の間からごそごそと音が聞こえた。ジークがそちらを向くと、角が生えた兎?のような魔物が出てきた。エトワールを見ると牙をむいて襲い掛かった。


「エトワール!」


 ジークはエトワールに気付かせて倒させるつもりだった。なので名前を呼んで気付かせた。エトワールが一瞬こちらを見たので頷く。

 すると、少し緊張した顔だったが水の球をその魔物に当てる。だが、威力が足りなかったようでまだ向かってくる。気を取り直してまた水の球を放つ。

 先ほどよりも威力があったようで魔物に当たると倒れた。うまくいったようだ。



「よくできたね。」

「ああ、本当に、緊張しましたわ。それと、少し体に力が入らなくなってきましたわ」


 それを聞いてジークは改めて魔力を通して視る。すると魔力がだいぶ減っているようだった。



「魔力が枯渇してきたんだ。今のがごく初期の状態だよ。ここからもっとひどくなると倒れちゃったりするから気を付けてね」

「これが、そうなのですね。憶えておきますわ」

「うん。...じゃあ、そろそろ戻ろう。結構長い時間やってたみたいだからね」

「はい、ありがとうございます。またお願いしますわ」



 エトワールは笑顔でお礼を言う。そこから、本当に楽しかったということが伝わり、エルドジークはすこしうれしくなった。






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