第1話
僕は知らないうちにこの土地にいた。
そういった奴らはここらでは何人かいるそうで、この辺りでは『流れ人』というらしい。
僕のセカイではあまり良い呼ばれ方ではない。
流れ仏、土左衛門、水死体。
そういった類の呼ばれ方だ。
もしその通りに意味を取るならここは死後のセカイということになるが……。
それなら僕が今胡座をかいて対面に話しかけている、この男は何者だ。
天国なら天使、地獄なら閻魔の使いか?
「お前は何者なんだ」
男はさっきまで、今日亡くなったという父を思い湿っぽく感慨にふけていた。
僕にはそんなのは関係ない。
今はまだ他人なのだから。
「俺は折田ナガノブ、そこら辺の小僧と変わりない奴だ」
「折田、お前はなぜここにいる」
「散歩だ」
「こんな何もない草原にか」
「ああ、俺はあったから来た。少し行けば町がある」
折田ナガノブは陽が沈んだ方角を指差した。
「そこに住んでいる。ここはよく知り合いと来たりしていた」
こんな何もない場所に知り合いと来る意味はなんなのだ、よく分からん。
よく分からない事だらけで頭が痛くなる。
とりあえず今日はこいつを頼るしかなさそうだ。
「折田ナガノブ、出会って間もなくそしてお前自信いろいろとあるだろうが、僕には今お前しか頼れる人がいない。申し訳ないのだけれど、今日だけでも折田の家で厄介にならないだろうか」
折田ナガノブは腕組みをして少し口角を上げ、何か企んでいるような笑みを帯びた。
「厄介になるのはごめんだなぁ。ただ、ここで見放して死なれるのも気分が悪い。……そうだ、ここはひとつ交換条件といかないか?」
わざとらしい。それが目的だろうに。
「なんだ」
「お前の寝るところと食べ物は出す。そのかわり同じ日数分は俺に力を貸せ」
思った以上に要求が少ないのは何か詐欺なのだろうか。
僕なら倍は働かせるだろう。
いや、一日中力を貸せて言われてしまえば辛いか。
まぁ、自立できる資金や収入源を早く確保出来ればそんなに大変ではないのかもしれない。
「分かった。そんな良い条件はない。何より折田ナガノブ、お前も大変なのに食う寝るを用意してくれる温情には感謝しかない」




