未来の目
爪先の色が
溶け落ちていく夜に
日常を食べ尽くすだけの
顎が動いている
葉が落ちる木々の間に
ぶら下がる首吊り死体
ガソリンの匂いがする
燃やされて炭になる
単純な現象を
見ている蛙の目
小さな絵本は
小さくなった絵本だった
何かに負けてそうなった
負ケズに読んで
負けてしまうから
部屋の髪の毛みたいに
踏み付けられる
ガソリンの匂いがする
燃やされて炭になる
単純な現象を
見ている子供の目
灰皿の中にある
一昔前の社会人の不満は
誰かが掃除して納めていた
今は違っていた
溜め込むだけ溜めて
吐き出した時には
人間性が変わっていて
病院に縛られる
ガソリンの匂いがする
燃やされて炭になる
単純な現象を
見ている他人の目
目覚し時計を振り回す
よくわからない政治家は
ポケットに入っていた
芥みたいに
声を出していた
社会が良くなる事と
自らの人生が良くなる事は
イコールでは無いから
ただの騒音に変えた
ガソリンの匂いがする
燃やされて炭になる
単純な現象を
見ている自分の目
棚の上にある石ころを
どれだけ取ろうとも
石ころである事は変わらない
あの時 見なかった
あの時 聞かなかった
あの変化を元にして
無謀の橋を渡ろう
達観した格好悪さを捨てて
ガソリンの匂いがする
燃やされて炭になる
単純な現象を
見ている未来の目
見ている未来の目




