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魔王の立つ日  作者: 上総海椰
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エピローグ 囚われの男

薄暗い牢獄にヴァロはいた。

上半身の服は無いが不思議と寒くはなかった。

腕は鎖でしばられ、腕には何本も針を刺されている。

不思議と空腹は感じない。

どれほどの時間が経ったのか見当もつかない。

魔剣に呼びかけるも遠くにいるのか、ヴァロの呼びかけに反応が返ってこない。

時間の感覚のない暗い闇の中に沈んでいった。


「うぐあっ」

朦朧とする意識の中、胸に焼けつくような痛みとともにヴァロは目覚める。

見れば焼き印のようなものが左の胸におされていた。

「気が付いたようだな」

その少年はヴァロを凝視していた。

背後には数人の取り巻き達がいる。

その中にはヴァロの見知った女の姿も見られた。

「お前は…カランティ」

ヴァロはその女性を睨む。

カランティはヴァロを一瞥するとすぐさま少年に視線を戻した。

「見事だったシレよ。あとで褒美を取らそう」

「はっ」

シレ…ヴァロの知っている男ならばその男は『狩人』が血眼で探している大罪人だ。

「お前は…」

その少年の目が赤く光る。

何らかの魔力が行使されたのがわかった。

だがヴァロはそれを全く受け付けない。

「ほう、我の魔力ですら通じないとは…。魔法抵抗力も想像以上に高いな。

その上、ずいぶんと若くいい体つきをしている。これほど恵まれた素体はおるまいよ」

まるでヴァロを品定めをしているようにその少年はヴァロを見ていた。

居心地の悪さにヴァロは顔をしかめる。

「貴様は一体…」

ヴァロはその少年に問う。

その少年を囲む人間たちが不快感をあらわにするが、その少年はそれを制する。

「我の名はポルファノア。かつて第五魔王と呼ばれた男だ」

その声に電撃を受けたような衝撃を覚える。

「第五魔王?…そんな」

「ほう、わしの名を知っておるか」

どこか楽しげにその少年は語る。

「『魔王の卵』よ。貴様には我が憑代になってもらう」

憑代と言う言葉にヴァロは背筋が凍った。

どうして自分がここに連れてこられたのか、そしてこれから自身がどうなるのか一瞬で悟る。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

少年は狂ったような笑いが牢獄に響き渡る。

その笑い声を最後にヴァロは再び意識は闇に沈んでいった。


ようやく次から本編です。

ちなみに厳密にはこの話は魔王戦争ではないのです。

それも話を読んでいただければわかると思います。

魔王戦争とは別に一つの題があるのですが、

それを書いてしまうとネタバレになりますのでここではひかえさせていただきます。

現状、ココルはヒルデとともにカロン城に向かい、

フィアたちはフゲンガルデンでクファトスと出会ってます。

かつての第三次魔王戦争の地ゴラン平原に集結する英雄たち。

ついに表舞台に現れた第五魔王ポルファノア。

それを待ち構えるカランティ。

沈黙する幻獣王ツアーレン。

暗躍する道化の男。

彼らはゴラン平原でまみえることになります。


では次の運命の日にて。

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