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放っておけなくて

異性からは、THE平凡だよねって言われ続けた年数=自分の年齢。

そんな平凡系社会人な私、榊朔羅さかきさくらはこの見た目に不満は持ったことはない。


今の時代、物騒な世の中になった。

見た目が良ければ、良いなりに得するかもしれないが、その分面倒ごとに巻き込まれることもある。

私の親友がまさにそう。……まあ、不幸体質が更に状態を悪くさせているとも言えるが。


私は面倒ごとが嫌いだが、それを覆せるほど彼は大切な友人だ。不幸体質だろうと関係なく、彼の人柄に触れて、自然と惹かれていっただけのこと。

それを、面倒ごとが嫌いだからと言ってその気持ちに抗っていたら後々私は後悔していたことだろう。

彼は去年亡くなった、通り魔による殺傷が死亡原因だった。もし、あのとき抗っていたら今、私は生きた屍となり、私の中には後悔の念しか残らなかったことだろう、……あの時仲良くしていれば良かったと言う後悔の念が。


覚悟はしていた、不幸体質な彼はきっと長生きは出来ないと。

もし、彼が他人を蹴散らしてまでも出世したいと願うような人間であれば、もう少し長生き出来たんだろうかと公園で黄昏ながら考える毎日が続いている今日この頃。

でも、そんな人間だったなら、私はきっとここまで深く関わり合いを持つことはなかっただろう。……私はお人好しで、不憫な彼が友人として好きだったから。


わかっていたのにな、覚悟していたのにな、いざその時が来ると悲しくて、切なくて、一年経った今でもすっぽりと空いた心の穴は埋まることはない。

だからこうして、親友が亡くなった今、毎日同じ公園で缶コーヒーを飲みながら黄昏るのが日課になってしまった。


長生き出来ないと本人もわかっていたのだろう、通り魔の被害だと言うのに遺書が残されていた。家族へ宛てられた手紙と、遺産相続についての書類と、何故か私への手紙が残されていたのだ。

その手紙を、葬式の時に彼の両親から渡されてはいるものの、一年が経った今でも内容が何なのか怖くてその封を開けることが出来ていない。


……随分臆病者になったものだ。


封を開けられずにいる手紙を見るたびに私は、自分に対して臆病者だと呆れて苦笑いをする。……でも、それほど私にとって彼という存在は大切な友人だったんだ、もう少しだけ手紙の封を開ける勇気を貯める時間が欲しい。


「もう少しだけ、生きていてくれても良かったんじゃないか……?」


私は誰もいない公園で、独り言を呟いた。その独り言に返事を返してくる人なんて勿論いる訳もなく、少し虚しく、寂しい気持ちになった。


「帰るか……」


いつもなら、虚しく寂しい気持ちのまま、誰もいない自宅に帰る。そんな日々の繰り返しだったはずなのに、なぜか今日は違った。

ふらふらとおぼつかない足取りで歩く、学ランの男の子が公園へと入って来て、それと同時に彼は力尽きたかのように倒れたのだ。……バタンッと音を立てて。


大丈夫って叫ぶ暇なく、私は地面に倒れこんだ男子に慌てて駆け寄った。

……大丈夫? なんて言える訳がない。

だって、倒れた時点で大丈夫でないことはわかりきっていているのだから。


「意識ある?

聞こえているなら返事して」


我ながら動揺しなさ過ぎて怖いな、そう考えながら不意にその子の頬に触れると熱いと感じるほどの体温に驚き、思わず頬から手を離した。






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