30話 鷲馬騎士団
(後は僕達が仕上げるだけだ)
作戦は全て計画通りに進んだ。
ヘクトリア王国軍は崩壊し、それを見たガリウス、ハルメル両軍も撤退を始めている。
僕とレギオンはその背後を急襲し、敵に損害を与える。
一人でも多くの敵兵をこの地に屠り、再起不能なまでに追い詰める。
でなければ敵は再びレイヴァン地方に攻め寄せてくるかもしれない。
(行くぞ、レギオン)
『おう、任せとけッ!』
レイヴァンシュタイン城の門がヴィシュヴァカルマンによって開かれる。
その先に見えるのは無数の篝火。
三面六臂の騎士がそれに向かって駆けだそうとした、その時だった。
頭上に眩い光を見た気がした。
それが一つに纏まり、鋭くなり、僕達に突き刺さった。
(え……)
巨大な光の槍。
それがレギオンの身体を貫き、次の瞬間には爆発した。
◇◇
「ブリキ風情が調子に乗りおって」
レイヴァンシュタイン城の上空。
漆黒の闇を背にヒッポグリフに跨る30騎の騎士達。
その隊長たるマクベスは光魔術でも最強クラスの威力を誇る《光槍》を手のひらに展開した黄金色の魔法陣から放っていた。
それは一直線に駆けだそうとした三面六臂の騎士を貫き、大きな爆発を生じさせた。
今は巻き上がる土煙に視界を遮られて騎士がどうなったかはわからない。
だが、マクベスには二つの確信があった。
一つは、自分の攻撃が確実に巨神機兵、レギオンにダメージを与えたこと。
一つは、自分の攻撃では一撃で巨神機兵を仕留めきることはできないということ。
つまりは、巨神機兵レギオンはまだ戦える。
―ギャアアアアアアアアアアッ!!―
巨大な奇声が土煙の中から沸き起こる。
その瞬間、マクベスらヒッポグリフに跨る騎士達は騎馬の姿勢を空転させる。
滑らかに、しかし素早い挙動。
そして彼らが移動し終わった直後に赤黒い帯が土煙を突き破って飛び出してきた。
レギオンの鬣。
それが悉く騎士達を捕らえ損ねた。
「なるほど。それでカターリナたちを捕らえたわけか」
マクベスはペガサスを駆る天馬騎空団がどのようにしてレギオンに敗れたかを理解した。
「だが、ヒッポグリフの速度には及ばん」
レギオンの鬣がマクベスを捕らえようと伸びてくるが彼はそれを難なく避け、逆にレギオンへと突撃していく。
それに続くように30騎の騎士達が続いた。
「一撃で仕留めようなどと思うなッ!
波状攻撃ッ!」
その僅かな命令で精鋭の騎士達はレギオンを取り囲むように展開し、手のひらに金色の魔法陣を展開する。
《光の矢》、ハンマーベルで天馬騎空団が多用したのと同様の魔術だ。
次々と光の矢が射出され、レギオンに命中し、爆炎を上げる。
それに反撃するように鬣が騎士達を捕らえようと伸びてくるが、その時にはヒッポグリフが逞しい翼を羽ばたかせ鬣を引き離す。
ヒッポグリフの速度はペガサスを遥かに凌駕していた。
風を切り裂きながら飛行するヒッポグリフとそれを操る騎士達。
レギオンから伸びてくる鬣を巧みにかわしながら、しかし一直線に巨大な機械の身体に肉薄すると、至近距離から光の矢を叩き込む。
その度にレギオンの機械の身体が少しずつ傷ついていった。
「喰らえ、このアンティークめ」
その傷に、無数の帯を難なく避けてきたマクベスが《光の槍》を叩き込んだ。
正確に傷を狙った一撃がより大きな傷を生み、そこを騎士達が立て続けに攻撃してくる。
―ギャアアアアアアアッッ……!―
と、レギオンの悲鳴ともとれる声が聞こえてきたのはその時だった。
マクベスたちの攻撃が確かに効いている。
その証だった。
時間的な都合で文章の読み直しができなかったため、短いですが一旦、ここで投稿させていただきました。
終わり次第、この話に編集という形で追加していきます。