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巨神機兵の契約者 ―破滅のオーメン―  作者: Super Soldier
プロローグ
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0話 独裁者

この物語は一人の独裁者が誕生し、世界へと戦いを挑むダークファンタジー。

貴方はどこまで彼の《悪》を許せますか。

地球でも、異世界でも、人のやることは何も変わらない。


 差別に、偏見に、迫害に、そして戦争だ。


 地球では人種、主義、宗教で差別された。

 でも、僕が転生したこの世界では《種族》で差別される。

 

 《半神族》、人と神の血を受け継いだ混血種であり、雑種強勢によって極めて優れた能力を持つ種族。

 故に差別され、抑圧され、孤立した。


 だが4000年前、一人のカリスマが現れ、半神族の帝国を築き上げた。

そして自らの生き残りをかけ、世界に戦いを挑んだのだ。

 後に《レイヴァン・リベリオン》と呼ばれることになる史上最大規模の戦争だ。


 《半神族》は猛々しく戦い、敗北した。


 帝国は滅び、半神族の優越種としての誇りは打ち砕かれた。

 そして敗戦後に待っていたのは半神族に対する熾烈なまでの報復だった。


 《生きるに値しない命》とされ、長きに渡り虐げられ続けた。

 半神族の人々は新たなる指導者の登場を願い続けた。


 それから4000年後、半神族の願いは叶った。

 僕は彼らの指導者として君臨し、分裂した国家を統一し、軍隊を再建し、彼らの誇りを取り戻した。


 そして僕たちは再び全世界に戦いを挑む。


 


「総統閣下、すでに準備は整っております」


 僕の前を歩いている一人の美少女が抑揚のない声で言った。

 クリーム色の髪のショートヘアに澄み切った青い瞳をした、無表情な美少女。

 

「第一から第三軍集団は国境付近に集結済みです」


 そう言ったのは僕の前を歩いているもう一人の美少女。

クリーム色の髪を三つ編みにして垂らし、気怠そうな半目の奥に青い瞳を覗かせている。

 先ほどの少女と容姿がよく似ている。


 二人とも露出の多い、お揃いの闇魔術師伝統の軍装を纏っている。

 つまりは双子だ。

 まあ、そんなこと今はどうでもいいのだが。


 僕が気に留めなければいけないことはこれからのこと。

 新たなる戦いの始まりを世界に宣言する。


 壮大な宮殿の廊下を歩く僕たち3人。

 巨大な石柱が並ぶ廊下の両脇には、漆黒の軍装に赤く煌く眼を持った兵士たちが廊下の突き当りに聳える巨大な金属の扉まで整列している。


 扉の上には国章である《七頭のドラゴン》のエンブレムが輝きを放っていた。


「お待ちしていました。総統閣下」


 と、僕達の行く手を遮るように扉の前に一人の美少女が立つ。

 

 燃え上がるような真っ赤な髪のロングに、対照的なまでに澄み切ったコバルトブルーの瞳、愛嬌の漂う童顔。

 その服装は漆黒の軍装をアレンジして露出を増やした特注品。

 肩から羽織っている大きな襟が特徴的なコートには、僕が彼女に授けた勲章の数々がその輝かしい軍歴を誇示するかのように付けられていた。


「邪魔」

「ウザ」


 クリーム色の髪の双子がいきなり赤髪の美少女に毒を吐く。

 しゃしゃり出てくるなと言わんばかりに鋭い眼光を浴びせかける。


「ふん」


 赤髪の美少女は双子からの威圧をもろともせず、鼻で二人を笑うと素直に道を開けた。

 本当に、こいつらはいつまで経っても下らないことでいがみ合う。


 赤髪の美少女がどくと扉が開かれ、その先の部屋へと進む。

 部屋には屈強な顔つきをした将軍たちが控えており、数多くの勲章が煌く軍装を纏い、僕の顔をみると同時に頭を垂れる。

 だが、僕は特に何も声をかけることなくその前を通り過ぎた。


「総統閣下」


 しかしまたしても僕の前に美少女が現れ、歩みと止めさせてくる。


 艶やかな黒髪のロングに丸々とした青い瞳、東洋風の愛くるしい顔立ち。

 彼女もまた露出の多い特注の軍装に身を包むが赤髪の少女のように勲章を胸元で輝かせてはいない。

 

 僕は無言のまま黒髪の美少女の頬を指で一度だけ撫でると、少女は満足したように一歩、後ろへと退いた。

 

 そして何事もなく歩みを再開する。

 彼女に双子が噛みつくことはない。

 誰だって気に入らない奴にしか突っかからないものだ。

 

 部屋の奥まで進むとさらに扉がある。

 既に扉は開かれており、その向こうには眩い光が見える。

 

 外に通じているのだ。


 扉を抜けると臓腑を震撼させるほどの歓声が僕を包み込んできた。

 扉の先にあったのはベランダだ。

 帝都を一望でき、コンクリートで築き上げられた重厚な街並みをこの目に収めることができる殿上人のための特等席。


 外は今、闇が世界を覆う夜。

 しかし、本来は敵影を照らし出すためのサーチライトが今夜ばかりは僕を照らし出すためにベランダへと光を注ぎ込んでいた。


 だが、ここにもまた僕を待ち受けていた者がいた。


「総統閣下、お待ちしておりました」


 黄金と見間違えるほど魅惑的な輝きを放つ金色のストレートに、同色の瞳をした美少女。凛々しい顔立ちに垣間見えるあどけなさがその身に纏う漆黒の軍装との間に違和感を覚えさせる。


 しかし、彼女も立派な軍人の一人。

 彼女もまた例にもれず、露出の多い特注品の軍服に身を包み、肩と襟の部分に元帥の階級章を付けていた。


 金髪の少女は頭を垂れ、すぐに退く。

 双子は文句を言わない。

 なぜなら、彼女のほうが上官だからだ。


 そして僕の前を歩いていた双子も金髪の少女の隣へと移動し、僕の前から消える。


 そう、ここから先は僕、一人で歩む。

 僕に比類する者以外が進むことのない道なのだ。


 宮殿のベランダ、そこに設けられた演台に上り、僕は歓声の正体を見渡した。


 宮殿の前の広場を覆いつくす漆黒の大軍団。

 無数に煌く、赤い眼。

 兵士たちは漆黒の軍装を纏い、装甲で身を堅め、顔を覆う鉄仮面の目元から赤く煌く眼を覗かせていた。

 

 不気味とも思えるこの軍隊こそ僕が作り上げたもの。

 僕のために、僕の命令のもとに、勝利のために戦う最強の軍隊だ。

 

 僕は今から彼らに戦いの始まりを告げる。

 そして彼らに命令を下す。

 世界を焼き尽くせと。

 奪われたものを取り戻せと。


 半神族の苦悩の日々は今日で終わるのだと。


 息を吸い込み、眼下から僕を見上げる兵士たちに命令を発しようとする。

 しかし


「シーザー」


 ここにきてもう一人いたことを思い出さされる。

 忘れていたわけではなく、いなかったから仕方がないと思って放置していただけ。

 

 演台に上がり、僕の真横に誰かが並んでくるのを感じた。

 でも、こいつはいい。

 こいつだけは僕と比類するただ一人の存在。


 横を向くと、そこには赤みがかった金髪に、真紅の瞳をした美少女が立っていた。

 血のような赤色の軍装に身を包み、勝気な瞳で僕を見上げている。

 ただ、彼女の瞳孔は獣のように縦長だった。


 僕たちは演台の影で静かに手を握り合う。

 温かくやわらかな手。

 この手と共に歩み続けた。


 僕は彼女と共に戦いの始まりを告げる。


 

 でもその前に、僕がここにまで至る経緯を話しておきたいと思う。


次回 鬼子

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