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15話 モンスターフロー当日


 前回の授業から数日後。


 朝起きて診療の準備をするという行動が習慣化し、医者としてのアイデンティティが染み付いたなぁと思う今日この頃。


 ルーティンに従って行動するというのは非常に楽だ。脳に掛かる負担も少ない。


 だからこそと言うべきか、何か物足りない。新しい刺激が欲しい。


 そんな事を思いながら朝起きて顔を洗っていると、ゴーンゴーンと頭に響く鐘の音が四方八方から聞こえてきた。


 大きい音で驚かせる刺激はお呼びではない。心臓に悪いから止めてくれ。


(うぇっ!?なんだなんだ!?)


(イヤホンを付けたら急にでっかい音聞こえて心臓が……)


(起きてたか。モンスターフローとか言われてる災害関連の何かだと思うが)


(こんなに大きいって事は緊急事態を知らせるアラート音なんじゃない?)


(そうだな……情報収集の為に外に出るか)


 急いで宿から外に出てみると、町の皆さんは至って冷静だった。


 混乱する事はなく、避難している様子もなく、いつも通りの日常を送っている。


(緊急事態じゃなさそう?)


(なさそうだな。戻って宿の主人に尋ねてみるか)


 カウンターの中でいつも通り事務作業をしているおじさんに話を聞く。


「すみません、今ちょっと良いですか?」


「はいはい。カイトくんか。どうしたんだい?」


「さっきの鐘の音ってどんな意味があるんですか?」


「あぁ……余所の人は驚くかもね」


「あれは人を集める合図だよ。中央広場で冒険者ギルドのギルド長が災害前の説明会をするから行ってみるといい」


「おじさんは行かないんですか?」


「毎回の事だからね。一応全員参加らしいけど、他の人も何度も聞いて飽きているだろうし、普通の仕事をしている人には関係ないから」


「でもカイトくんは医者でしょ?だったら行っといた方がいいよ。医者とかは協力しないとペナルティがあるらしいし」


「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます」


「うん。行ってらっしゃい」


 と、送り出されて宿を出る。


(との事らしい)


(取り敢えず町が滅ぶような緊急事態じゃなくて良かったね)


(そうだな。どんなペナルティなのか知らないが、一応行っておこう)


 診療時間変更のお知らせを診療所の扉に貼って、大通りの中央広場へ。


 行ってみると、そこでは数百人が演説台を囲むように集まっていた。


 見たところ、白衣を着た集団が最も大きく、次いで作業服の集団。スーツや普段着を着た人々は疎だ。


 白衣の集団に目を向けると、医師ギルド内での顔見知りがちらほらと。


 そんな中に特別見知った顔があったので声を掛ける。


「衛兵くん。おひさ」


「いや、僕は医者ですよ……ってテメェも来たのか」


 近くに同僚が居るのに隠す気あるのか?


「良いのか?そんな口調で」


「チッ、面倒くせぇ……移動するぞ」


 医者の集団から離れて人気の無い路地裏へ。


「なんで来た?モンスターフローについてテメェには教えてなかった筈だが」


「ここ最近、冒険者が忙しそうに駆け回っていたからな。色々と話を聞いたよ」


「なるほどな」


「それで、これに参加しないとペナルティがあるって聞いたんだが……」


「教えるわけねェだろバカか。そのくらい自分で調べろや」


「相変わらず敵意剥き出しだな。医者として良い仕事やってんのか?」


「うっせぇな……テメェはどうなんだよ」


「俺はそこそこだな。診療所開いて適当にやってるよ」


「ふん。ここじゃ個人医として町民相手に仕事しても何の意味もねぇんだよ」


「医者の本番は明日だからな。個人医はいざという時に役に立たない事を教えてやるよ」


 そう吐き捨てて衛兵は医師ギルドの集団に帰っていった。


(嫌味な奴だねあいつは)


(俺は嫌いじゃないけどな。あれぐらい単純だと可愛げあるし)


(そうなの?うざいだけじゃん)


(俺の質問に答えないようにしていたが、俺を威嚇するのに夢中になって情報を落としてる)


(あ〜、最後の捨て台詞とかそうだね)


(あいつは医師ギルドの力を見せつけたいのかな?)


(ああ。それに俺の評判を落としたいとも考えている筈だ。貶めるための策があるんだろうな)


(う〜ん。なんであんなに突っかかってくるんだろうね?暇なのかな?)


(劣等感からくる対抗意識と自己肯定感の低さはあるんじゃないか。あと、嫉妬)


(劣等感かぁ〜。そう聞くと少し可哀想な感じ?かも。いや、そんなこともないか?)


 そんな話をしていると、中央広場から拍手が聞こえてきた。


 中央広場に戻ると、知らないおっさんが壇上に上がっていた。


「おはようございます。毎度の事ではありますが、この場をお借りして、冒険者ギルドの方から今回のモンスターフローについて説明をさせて頂きたいと思います」


 彼が冒険者ギルドのギルド長だろうか。筋骨隆々なおっさんがハキハキと低い声で話している。


「早速ですが、本題に入りたいと思います。今回のモンスターフローですが、いつも通り東の山を越えてこの町に来る事が予想されております」


「前回よりも3倍ほど規模が大きくなると斥候の報告がありましたので、警戒心を持って当日は避難できるよう備えてほしいと思っております」


 前回の3倍とは中々に恐ろしい数字を出してきたと思ったのだが、立ち止まって熱心に聞いている人も、通りを歩きながら聞き耳を立てている人も全く反応しない。


 前回がそれだけ小規模だったのか、冒険者を信頼しているのか、正常性バイアスなのかは謎だ。


「冒険者が主体となって対処しますが、医療関係の皆様、鍛治関係の皆様は勿論、全住民が一丸となってこの危機に立ち向かっていきましょう!」


 一瞬の静寂の後、誰かが拍手をすると連鎖的に拍手が広がっていった。


 満足そうに壇上のおっさんが頷いて、


「ここからは明日の防衛戦の関係者にだけ伝達事項があるので、それ以外の皆様は解散してください」


「医療関係の皆様は明日朝7時に冒険者ギルドに集合お願い致します」


 明日朝7時か。それだけ覚えておこう。


 他には補給関係者や鍛治関係者への伝達事項も話していた。


「……以上で終わります」


 そう言っておっさんは壇上から降り、関係者も一斉に散る。


 俺も今日の仕事をこなして明日に備えるか。


 そして日は跨ぎ、モンスタフロー当日。


 朝早く起きて、冒険者ギルドの扉を開けて中へ入る。


 すると、机や椅子が片付けられて、より多くの人が集まれる広間になっていた。


 広いホールの中央に白衣の人間が集まってそれぞれ勝手に話し合い騒がしくしている。


 集合場所はここで良さそうだし、昨日と同じように白衣集団の後ろで待機するか。


 少し待っていると、時間ギリギリの滑り込みで全く顔の知らない医者達が入ってきて、俺の周囲や後ろで疎に位置取った。


 その直後に、昨日話していたおっさんが壇上に立って、


「お前ら静かにしろ!今日は特に時間が無いからさっさと決めるぞ!」


 学校の先生かよ。


「前線基地に行きたい奴は手を挙げろ!」


 ここに来た時点で全員戦場に行かされると思っていたが、そうではないのか。


 静粛にしていた周囲の医者が俄にざわつき始める。


「今回は誰が前線に行くんだ?」


「私はあんなとこ行かないからね……」


「おい、お前行けよ。前回待機組だっただろ」


「嫌だ。今回も絶対逃れてやる」


 やっぱりこの場面で挙手制は悪手では。前線に行きたい人なんていなさそうだが。


 なんとなく様子を見ていると、前方の医師ギルド集団から聞き覚えのある声が上がった。


「ギルド長!発言宜しいでしょうか!」


 この時点で色々と察せられるな。


「おう、いいぞ」


「僕はカイト先生が行くべきだと思います!新人ながら全国免許を持っているそうですし、前線でも活躍してくれるのではないかと!」


「カイト先生か。そうだな……医師ギルドの面々からの推薦が多かった事だし、実力のある医者なのだろう。是非活躍してもらいたい」


 ギルド長は俺と医師ギルドの面々の確執は知らなそうだな。


「カイト先生!いるか?」


「はい」


 仕方なく手を挙げると周囲の医者からの視線が集まって居心地が悪い。


「おお、そこか。どうだ?カイト先生。この防衛戦に参加するのは初めてだろうが……」


 最初から参加する気はあったが、それにしても死ぬほど断り辛い状況にされたな。


「任せて下さい。前線で頑張ります」


「そうか!良い返事をありがとう」


「ふむ……それなら今回は医師ギルド全員前線に出ろよ。推薦したんだからカイト先生をサポートしろ」


 医師ギルドの面々からは特に嫌そうな声は上がっていない。最初からこうなることは織り込み済みだったのだろうか。


「勿論ですよ!任せてください!」


 衛兵くんは元気な声で返事しているが、俺をカバーする気は毛頭ないのだろうな。


 こういう場面で活躍するのが出世への近道なんだから嫌がらせに励んでいる場合じゃないと思うが。


 それはそれとして、周りの個人医から困惑と憐憫の目で見られる。


 察するに、何も知らない新人が前線で地獄を見る想像をしているのだろう。


「残りの医者は非常事態に備えて町の入口近くで待機するように」


 自分が前線に行かされるのではないかという周囲の緊張感が消え去り、緩んだ空気が流れる。


「30分後に冒険者が前線基地に向かう。前線組はそれに同行しろ」


 と、ここで一度解散になった。


(前線に行って大丈夫なの?危なくない?)


(危なくない)


(本当に?)


 桜ちゃんに妙に心配されている。


 今まで俺が戦闘している所を見せていなかったし、万が一にも俺が死ぬと非常に困るからか。


(大丈夫だ。最低限自分の身は守れる)


(そうなの?)


 そうなの。


(リスクを負う事は悪い事じゃない。大事なのはリスクを考慮した上で行動する事だ)


(リスクを避けてばかりだと何もできないし、何も面白くないだろ?)


(それはわかるけど……)


(戦場を侮らずに考えて、今回リスクは低いと思っている)


(モンスターフローを何度も経験している先輩の様子から死人が出るような深刻さは感じなかったし、最悪死にかけても魔法使えばなんとかなるから。これ経験談ね)


(それに、魔物と冒険者が居る世界で一度もその戦場を体感しないのは勿体無いだろ?)


(そうかな?私には怖くて無理だ……)


(狂人の奇行だと思って見逃してくれ)


(う〜ん、カイトくんが決めたら何も言えないから)


(悪いね)


 その後冒険者に随伴して出発し、彼らと話しながら前線基地に到着。


 天幕が張ってある集会用の大型テントが10個ほど組み立てられ、その内の半分にベッドが十数個置かれている。


 残りのテントは冒険者の休憩用だったり荷物置き場だったりするらしい。


 そして、最初の仕事は荷物の開梱。


 いくら魔法で治療をすると言っても最低限消毒薬、清潔な布、包帯、水は使うので医療用テントに運び込まれているそれらを開梱する必要がある。


 これが割と重労働なのだが、医師ギルド組は協力しながら準備をしている。


 当然俺はぼっちだ。


 なんとか患者を受け入れる準備が整った頃、冒険者達は東に数百m先。


 人が居るのは確認できるが、防衛の最前線で何をしているのかまでは見えない。


 しかし、前線基地内部のピリピリとした緊張感は時間と共に確実に高まっている。


 何分か、何秒か経った後、前線基地に走って戻ってくる4人の冒険者の姿が見えた。


 3人は医師ギルド側に任せて、俺は自分の準備していたテントに走ってきた男を対応する。


「こちらのベッドに座って下さい」


 男は血で赤黒く染まった右腕を左手で支えながら痛みに顔を歪ませていた。


「はぁ……はぁ……くそッ右腕を噛まれた!動かねぇ!」

 

「上を脱がせます」


 手早く服を脱がせて噛み跡のある部分を真水で洗ってから消毒薬で消毒した。魔法での治療を試みる。


 診療所でやっているように魔法を使っているつもりなのだが、場の緊張感に当てられたのか魔法の制御が上手くいかない。過剰に魔素を使ってしまった。


「よし、動く!良い腕してんな、あんちゃん!じゃあ戻るわ!」


「ちょっと待った。まだ完全には骨の修復が終わってない。少し休んだ方がいい」


「あ?何言ってんだあんちゃん。今無理しないでどうすんだよ」


「それに、こんくらいの怪我で休む冒険者はいねぇよ。身体壊れたらまた頼むわ!」


 走って戦場に戻ってしまった。冒険者のタフさを思い知らされる。


 と、そんなどうでも良い事を考えている間に次の患者が来る。


 今度は他の冒険者に担がれてきた女だ。脚から流血している。


 場の張り詰めた空気に慣れてきたのか、魔法の制御を取り戻し、彼女の怪我を歩ける程度に治した。


「まだ歩けるだけだ。走ると折れるぞ」


「あ!?走らずに魔物をぶっ殺せるかよ!アタシはやるしかないんだよ!」


 興奮状態の冒険者には何を言っても無駄だな。助言しても互いに時間を損するだけか。


 そして、息を吐く暇もなく、どんどんと新しい患者が押し寄せてくる。


 医師ギルド組は互いに協力しながら分業で効率よく患者を捌いているみたいだが、それでも患者の数に追いついていない。


「急患なんだ!こっちを優先してやってくれ!」


「おい!しっかりしろ!意識を飛ばすな!」


「血が止まらないんだ、止血だけでも頼む!」


 絶え間なく医者を呼ぶ声と絶叫が響いて、それが医者を焦らせる。


 俺は両手で2人までなら同時に治せるが、それでも手が足りない。


 冒険者の血と汗の入り混じった臭いに加えて獣臭が充満し、鼻の奥を刺激する。


 くそっ……集中が削がれる。布をマスク代わりに巻けば多少はマシになるか?


 今更だが、こんな環境に慣れているここの人間は異常だな。


 昨日今日のお気楽なやり取りでこんな地獄行きが決定するとは思わなかった。


(心配だから見てたけど、私無理かも……見てるだけでちょっと吐き気が……)


(こっち見んな。帰りな)


 治療しつつ最前線の様子を見ていたが、現状かなり魔物の群勢に押されている。


 冒険者も必死に抵抗しているが、少しずつ前線が後退し最前線の空気感が伝わるほど近い。


 僅か200mほど前方で行われている生死を賭けたやり取りにピリピリと肌が刺激される。


 見えるのは立ち昇る土煙。聞こえるのは魔物の断末魔。


 剣や盾を持っている冒険者が前方で魔物を足止めして、後衛の魔法師が魔法で致命傷を与える。


 魔法師の使う魔法は様々だ。岩を飛ばしたり火球を放ったり。


 そんな光景を見ているだけなら楽しいが、これ以上前線が後退すると参加せざるを得なくなるのでドキドキだ。


 見ている暇は無い。全力で冒険者を治療してなんとか耐えてもらう他ない。


 ……何分経ったのだろうか。


「おい!ここで止めねぇとやべえぞ!!!」


 前線の冒険者の声だ。


「大丈夫だ!もうすぐ終わる!」


 後衛の魔法師が前線基地内に一歩踏み込んだところでギリギリ耐え切ったようだ。


「よっしゃあ!終わったー!」


「今回はめっちゃキツかったぁ!よくやったね!私たち!」


 冒険者の歓喜の声がそこかしこから聞こえる。


 モンスターフローを耐え切ったという事でこの場は終業ムードだ。


 しかし、冒険者は終わりだとしても医者はまだ終わりではない。


「あの〜、向こうの医者から”こっちは手一杯だからあっちで治療を受けな”って言われたんだけど」


 医師ギルド側を見ると、冒険者とダラダラ喋っている奴がちらほらと。ここでも嫌がらせか。


 仕方ない。最後に頑張るか。


「はいよ。このベッドに横になりな」


 軽い切り傷だったので、すぐに治療は終わった。


 ちょっと休憩しようかと考えていたら、不意に声を掛けられた。


「次、治療頼めるか?」


 聞いたことのある声だと思ったら、以前俺が図書館への行き方を尋ねた時に丁寧に教えてくれた人だ。


 相変わらず目を惹くオーラがあって顔が良い。


 20代前半だろうか。まだ若いのに堂々とした話し方から包容力を感じる。

 

「ああ、どうぞ」


「君は……前に噴水広場で話したことがある。お医者様だったの」


「随分前なのによく覚えていたな。君こそまさか冒険者だったとは」


 以前会った時は本当に冒険者とは思えない正装を着ていた。


 なので、てっきり白い襟の服を着て仕事をする人だと思っていたのだが。


「今回のモンスターフローでは基地に顔を出さず、ずっと前線にいた」


「1時間以上戦っていたのか?凄まじいな」


「僕……じゃなくて、俺のチームが抑えていないと前線が危なかったからな」


「お疲れ様。見たところ怪我は無いが、体の隅々まで疲弊している。マッサージで良いか?」


「ああ。それを頼もうと思っていた」


「よし。治療するからベッドに寝てくれ」


 5分ほどかけて身体の緊張を解して、疲れを取る為に治癒魔法を使った。


 もう少しで治療が終わりそうなタイミングで、休憩を取っていた周囲の冒険者の集団から声が聞こえた。


「おい……あれ、ドラゴンじゃねえか?」


「マジかよ!?タイミング悪すぎだろ!」


「魔法師はもう燃料切れだ!俺達じゃ足止めもできねぇ!」


「俺はギルド長に報告してくる!緊急事態だ!」


 本当に最悪のタイミングだな。冒険者の大半が先の戦闘で疲弊している。


 ドラゴンに興味はあるが、そんなことを言っている場合ではないのだろう。


「この場合って医者はどうすれば良いんだ?」


 口から漏れた俺の疑問にうつ伏せで寝ているイケメンくんが答えた。


「ドラゴンは町を狙って攻撃することが多いから、討伐されるまでは前線基地に留まっていた方が安全だ」


「っと、よし。治療ありがとう。身体が楽になった」


「連続の治療で疲れているだろうに本当に腕が良いんだな。驚いたよ」


 イケメンくんは早々にベッドから立ち上がって、腕を回したりなど準備運動を行う。


 まるでこれからもう一仕事するかのような仕草だ。


「最後に名前だけ聞いても良いか?」


「カイト」


「良い名前だ。覚えておく」


 「君の名前は?」と尋ねようとしたら、こちらに向かって呼びかける女性の声が響いた。


「お〜い、ハインく〜ん!ドラゴン倒しに行くよ〜!」


「仲間が呼んでいる」


「僕……じゃなくて俺は町の人を守らないといけないんだ。それでは、またな」


「ああ、また」


 前線基地の上を悠々と通過するドラゴンを追って、ハインは町に走って行ってしまった。


 あんな巨体で空を飛ぶ生き物を討伐できるのだろうか。


 不安は残るが、俺が行っても足手纏いになるだろうしなぁ。


 他の冒険者も医者も、大半の人間は蛮勇を持ち合わせていなさそうだ。防衛戦で魔素を使い過ぎた魔法師を中心にベッドで寝ている者が多い。

 

 向こうのテントを見てみると、衛兵くんもベッドに臥っている。


 俺も町が滅びていないことを祈りながら寝るか。流石に魔法を使い過ぎた。


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