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第2章 協奏 (2)

 「なあ、遠藤さんに連絡先を聞きたいんだけど、どうしたらいいかな。」


 「え?まだ聞いてなかったの?だって、もう二人で河原デート何度もこなしてるんでしょ?」


 僕は、いざ連絡先を聞くとなると急に恥ずかしくなってしまい、裕二に助言を頼んだ。


 「・・・デートじゃないよ、多分。」


 いや、実際デートだと思われてたらどれだけ嬉しいだろうか。


 「正直な、アドバイスも何も必要ないと思うぜ。ただ、これからも会いたいから、連絡先教えてーっていうだけじゃん。」


 イケメン裕二が言うと様になるから、腹がたつ。


 「それナンパっぽくて、何というか、遊んでる様に思われるんじゃないかな・・・?」


 「おい、その外見で何を言うんだよ、ありえないだろ。」


 まあ、確かに?それはないな。どこからどう見たっていたって真面目な男子高校生のはずだ。


 「とにかく、連絡先を聞け、な?彰はあれだろ、タイムリミットがないといつまでもできないタイプの人間だろ。だから、俺が与えてやる。今日中な。」


 ・・・相談するつもりがまずい展開になった。



 結局、何の対策も取れないまま下校時刻になってしまった。

 裕二と守も、頑張れよと一言僕にかけ、早々に帰ってしまった。


 重い足取りで、川辺に向かうといつもの場所に彼女はいた。今日は僕がアコギを持っているため、彼女は手持ち無沙汰に斜面になっている川辺に体育座りのような格好で座っていた。


 「こんにちは、遠藤さん」


 と言って、肩を軽く叩くと、彼女は少しビクッとして僕を見上げ、そして微笑んだ。


 僕は少しだけ距離を開けるようにして、横に座った。こういうとき、どのくらいの距離で座ればいいのか、未だによくわからなかった。


 ふうっと息を吐き出すと、僕は決心した。

 今日こそ、連絡先をもらうぞ。もらわなければ、裕二にどれだけ馬鹿にされるか、という恐怖心もあったが、僕自身としても、喉から手が出るほど欲しい。そして、今もらえなければ、一生もらえない気もする。




 (遠藤さん、連絡先を教えてくれませんか?)


 言えねーーーーーーーー!!!

 思わず心の中で言ってしまった。口が動かなかった。

 どうしよう、緊張で口が思い通りに動いてくれない。


 四苦八苦していると、その雰囲気が伝わったのか、彼女は僕の顔を覗き込んで不思議そうな顔で僕を見つめる。


 そんな綺麗な目で見つめられると、余計口が動かなくなる。



 こういうときはどうすればいいんだっけ?


 そうだ。僕らにはあれがあるじゃないか。

 僕は慌ててルーズリーフとサインペンを鞄から取り出し、書き始めた。



 『遠藤さんの連絡先を教えてください。』



 そのルーズリーフを見せると、彼女は一瞬顔をほころばせた後、一転して眉をひそめ不機嫌な顔になった。


 しまった、失敗したか!僕はその場で頭を抱えたくなった。


 すると彼女は、僕のルーズリーフを手に取り、


 「ペンを貸してください。」


 と言った。


 僕がサインペンを手渡すと、彼女はそのルーズリーフに何かを書き始めた。そして、書き終わると、サインペンとルーズリーフを僕に差し出した。


 それを受け取ると、そこには僕が書いた「遠藤さん」の文字の上に二重線が引かれ、その真下にかわいい字で『ハル』と書かれていた。


 ・・・彼女のことをハルと下の名前で呼べってことか?


 彼女の方を見やると、彼女は恥ずかしそうに顔を赤くして俯いてしまった。

 彼女のことを下の名前で・・・、ハードル高い!


 そして、また手元のルーズリーフの方に目を落とすと、下の方に電話番号とメールアドレスが小さな字で書かれていた。



 もう、なんか生きててよかった。


 僕はその下に、また文字を書いた。


 『ハル、僕のことはあきらって呼んでね』


 ハルは、いたずらする子供のように無邪気に微笑んだ。


 「はい、あきらさん!」


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